フィッシングエスケープ1
ジェイはイザベラの軟禁部屋に入った。
「あんたの大好物だ。」
「あら美味しそうね。」
彼女はアップルパイを食べた。
「あんたちょっとプレイヤーにヒントを与えたのね。あんたの他の同期達と変わらない悪趣味な部下だと思ったけど、人間味がある一面もあるのね。」
「俺はただの悪趣味な10期生ではない。俺達の目標はどんな救いようがないクズどもでも更生するように導くことだ。極限の状態で管理して変わらない奴を変えてみるのが俺達の組織のあり方だろ。」
「その言葉、社長が聞いたら喜びそうね。」
ジェイも一緒にご飯を食べる。
「こうやってご飯を食べるのも初めてじゃないかしら?あんた私とご飯食べるの拒否してたから。」
「あんたを軟禁してるからちゃんと面倒見ないといけないだろ。」
「あんたもそろそろ気がついてるでしょ。会社の社員達が私と中々連絡がつかないことに。例えあんたが書類をたくさん提出しても調査に来るはずよ。どうするつもりかしら?」
「いずれこうなるのは分かってた。潜伏してる社員は俺が何とかする。」
「何かあっても上司としてあんたをフォローするのは限界があるわ。クビにならないようにあんたを弁護するけどその覚悟は出来るでしょ?」
「当たり前だ。今回クリスティーナとケイジより高得点出すには大きなパフォーマンスが必要だと思ったんだ。」
「軟禁がパフォーマンスね。まあ美味しいものたくさん食べれてるから良いけど。」
「全て俺のやったことだ。自分やったことは最後は自分で何とかする。」
ジェイは操作室に入った。すると電話がかかってきた。彼は電話に出た。
「サミュエル、こんな時になんのようだ?」
「俺今回もミスしまくってそろそろクビになりそうでヤバいんだよ。」
サミュエルがいつものように電話をかけた。
「何だ。急用だと思ったらそんなくだらないことで電話して来たのか。それは俺の管轄ではない。お前の上司に何とかしてもらえ。それとまだ俺もお前も1年目、クビになる可能性が高いのは2年目からだろ。」
「社内の事情に詳しいな。上司のイザベラに教えてもらったのか?」
「それはない。雇用に関する情報は絶対に話さない。情報部と人事は知ってるだろうけど。採用担当が社員の情報も面接の記録も関係者以外には提示することは基本的にない。」
「それなら何でお前は知ってるんだ?」
「この会社には2つの種類の社員がいる。」
「俺の質問に答えろ。」
彼は硬いケーキを片手で切ろうとした。
「1つは強硬な鉄壁のごとく採用担当の面接記録や社員の情報や社長やゲーム推進部長との対談内容を守り抜く採用担当や情報部のような者たちがいる。」
彼はチョコレートでおわれたケーキを切りにくそうにしていた。
「もう一つはその集団にも悟られないように自分に有利になるような情報を得るごく少数の人材。」
彼はケーキを完全に切った。中にはたくさんのフルーツなどが入っていた。
「それがお前ってことか。入社時に知り合った時よりずいぶん変わってしまったな。」
ジェイはケーキを口にした。
「サミュエル、せいぜい他部署に飛ばされないように気をつけろ。情報部とかなら可愛いもんだけどな。」
「そっちのゲームの方はどうなんだ?」
「俺の上司から聞いたが、お前の上司と連絡が取れないと最近言ってるんだ。」
「今、イザベラはヴァカンスに言ってる。俺はその口止めをされている。だがそのほうが俺にとって都合が良い。自分の思うようにゲームを運営できるからな。」
彼はとっさに思いついた嘘を話した。
「ヴァカンスってどこに行ってるんだ?」
「口止めされてるからこれ以上は言えない。用件はイザベラのことだったんだな。これからプレイヤー達の相手をする。しばらくお前の相手はしてられない。」
ジェイは電話を切った。
「あの2人喧嘩してるのか?」
「どうやらそのようだな。」
リックとディーンはさっきのゲームのことをまだ引きずっていた。
「俺からしたらどっちも変わらないけどな。」
ザックとサーマンは2人を見て言った。
「ロバート、これお前にやる。」
ウィルがロバートに食べ物を分けた。
「ゲームマスターや他のプレイヤーには言うなよ。」
ウィルは「石盤パズル」の時にたまたま缶詰を見つけた。
「何でこれを俺に?」
「理由なんて何でも良いだろ。」
「俺を貶める為に毒を入れたのか?」
「そんなくだらないことしたら俺が死んでお前まで死ぬだろ。馬鹿だな。良いから受け取れ。」
ロバートはオイルサーディンを食べた。そして捨ててトイレで手を洗った。
プレイヤー達の間には少しばかりの絆と根深い対立が同時に存在した。
「プレイヤー諸君、待たせたな。」
「いつも待たせてばかりだろ。」
スティーブンが言った。
「次のゲームはこの会場で行う。」
「床が抜けた!」
床が無くなりフィールド中が海に変わった。
「あれ、お前魚になってるぞ!」
「そっちこそ。」
何といつの間にかプレイヤーは魚になった。プレイヤーを人間以外にするのはもちろんイザベラは知ってても教えてない。
「これから第7ゲームをはじめる。」
魚になったプレイヤーは全員ジェイが映る水中のモニターを見た。
「第7ゲームはフィッシングエスケープだ。」
「俺達を鮫か何かのエサにでもするつもりなのか?」
ジョージがジェイに言った。
「相変わらず君達は人の話を聞かないお馬鹿さんだな。これからそんなお馬鹿な君達の為に分かりやすくルールを説明する。まず海以外の場所には魚を釣ったり網で捕ろうとするロボット漁師がいる。彼らの持ってる釣り道具はかなり高性能な物だ。仮にぶつかったら彼等の餌食だ。」
「まさか俺達食べられるのか?」
リックが言った。
「確かにお前らが食われて死ねば良いと思う被害者もいるだろうな。だけどここはゲームをする会場。ここで食わせないように俺がロボットに命令してある。これは優しさではない。第8ゲームと第9ゲームの地獄を体験してもらう為だ。話が脱線したが、1時間の間一人でもロボット漁師に捕まってしまえば第7ゲーム最初からやり直しとする。」
「待て、質問がある!」
ザックがジェイに言った。
「ご飯はどうするんだ?」
「そんなくだらないこと聞いてどうするんだよ。」
スティーブンが彼に言った。
「ご飯いつも通り味のないパンだ。魚になったお前達でも食べれるパンだ。」
「それなら魚のエサの方がましだろ。」
「他に質問がないようだからゲームをはじめる。」
ゲームがはじまった。ウィルはポーギー、リックはイワシ、ジョージはメカジキ、スティーブンはマグロ、ザックはヒラメ、ロバートは鮭、ディーンはブラックシーバス、ジャクソンはタラ、サーマンはナマズだ。
「お前、イワシかよ。弱そうだな。」
数人のプレイヤーはリックの姿を見て笑った。
「俺なんてメカジキだ。そう言えばザックは?」
「ここだ!」
彼はヒラメになってるので海底にいた。
「ザックはヒラメか。」
数人のプレイヤーがザックのことを笑った。
「何でナマズが海にいるんだ?淡水魚だろ。」
ジャクソンがサーマンに言った。
「とにかく捕まらないことに集中するんだな。」
「お前あぶねーよ!その角何とかならないのか?」
スティーブンがジョージに言った。
「お前こそずっと泳ぎすぎなんだよ。隠れたりとかしないのか?」
「マグロは止まったら海底に沈んで死ぬ生き物なんだ。スティーブン、避けられるならちゃんと避けろ。」
ポーギーになったウィルが言った。
「皆、気をつけろ!網だ!」
プレイヤー達は全速力で泳いだ。
「このゲーム、ヒラメになったお前が有利だな。」
リックは海底にいるザックに言った。
「今のところ海底まで届く釣り糸はないからな。」
「釣り糸が来るぞ。」
「ジョージ!」
「スティーブン!」
ジョージとスティーブンが釣り糸で捕まった。
「ジョージ・クレモンズとスティーブン・ハンソンが捕まった為ゲームをやり直しとする。再開は2時間後とする。」
プレイヤー達は作戦を立て始めた。
「スティーブンのやつ止まらないな。」
「マグロだからしょうがないだろ。」
「それでどうするんだ?」
ディーンが聞いた。
「まず大き目な魚は確実に捕まる確率が高くなる。」
「確かにマグロの俺には不利だな。」
「この中で目が良い魚はいるか?」
サーマンが聞いた。
「視界が広いなら俺だな。」
ヒラメになったザックが言った。
「確かヒラメは海底に潜んでるのは他の捕食する為だ。身体は横になり広範囲が見れるようになってるから捕食に有利な条件はある。」
「それならザックを全体の指示役にした方が良い。」
サーマンが言った。
「いやザックだけじゃなくもう1人海底に指示役がいた方が良い。」
「それなら俺もその指示役を引き受ける。」
「それなら決まりだな。」
ゲームの時間になる。
「プレイヤー諸君、それではゲームを再開する。」
魚になったプレイヤー達はまず適当に泳いだ。 「スティーブン、お前の近くに釣り糸がある。くれぐれも当たらないように。」
「リック、網が来る。海底に駆け込め。」
リックはイワシ。イワシは捕食者がいる環境ではすぐ食べられてしまう弱い魚。さらに群れを作って行動するので網とかに引っかかる確率も高い魚だ。しかしこのステージではイワシの天敵は釣り糸と網くらいだし一匹しかいないから群れをなすこともできない。本来捕食者であろう魚になったプレイヤーも食べない。食べてしまったらイワシになったザックは死ぬ。つまりプレイヤー全員の死を意味する。よって彼らも天敵じゃなく、全長もかなり小さくこのステージにおいては中身が人間のイワシなので逃げるのには有利な環境になっていた。
「イワシがこんなに楽しく泳げる海ってここくらいだろうな。」
「ディーン、スティーブン!釣り糸が近づいてる。」
「よし避けたぞ。」
「しまった!」
ディーンは釣り糸に引っかかり釣られてしまった。
「ゲームやり直しだ。」
「ディーン、お前何やってんだよ!俺なんて全長3m以上あって避けるのも一苦労なのに。全長が50cmもないブラックシーバスのお前が何で釣り糸にぶつかるんだよ。」
「知らないよ。そんなのゲームマスターに聞いてくれ。」
「君達に分かりやすく今起きた状況を説明しよう。」
ジェイがプレイヤー達に言った。
「ディーンがなったブラックシーバスに仕掛けを入れたんだ。速度を遅めるように調節したんだ。だから捕まりやすくなる。」
「そんなやり過ぎだろ。」
「ハンデがあるからこそ見てるこっちは楽しいんだよ。単調なゲームを見せられても観客は楽しめないだろ?だからそれに刺激的なスパイスを加えたんだ。」
ジェイはかなり研究して操作室を使いこなすようになった。プレイヤーのことは知識だけではなく体力や持続するための根気も必要な作業だ。上司の手助けがない状態でここまでの規模のことが出来る10期生の社員は一握りだ。
「とにかくディーンをどうするか考えた方が良い。」
「他のハンデある奴もいるんじゃないのか?」
「今のところ奴しかいない。ディーン、とにかくマグロのスティーブンかメカジキのジョージと行動しろ。護衛はあったほうが良い。海底まで逃げ込めないだろ。」
そしてゲームは再開する。
「ロバート、網が来るからすぐに避けろ!」
「危なかった。」
ザックとサーマンは的確に指示をしていた。
「待ってくれ。お前どんだけ遅いんだよ。」
「俺だって遅くなりたくそうしたわけじゃない。」
「こんなことしたら護衛してる俺まで捕まってしまうだろ!」
ジョージが言った。
「ジョージ、釣り糸がすごいスピードで近づいてくる。ディーンをよく守っておけ。」
「守れって言われても無茶言うな!」
「とにかくディーンを守り抜くんだ。」
ザックからは何も解決策がなくジョージは困惑していた。
「こうなったらこうするか。」
ジョージはディーンに体当りして、ディーンはどこか遠くに吹き飛ばされる。
「スティーブン、ディーンが危険だ。奴に体当たりをするんだ。」
「は?」
「理由は良いからはやく!」
ザックが言った。
「何だか分からないが受け止めろ!」
ディーンは吹き飛ばされて海底の方まで言った。
「ザックもちょっとは人を誘導できるようになったようだな。ただの文句ばかりの野郎が少しはマシになったようだな。」
「どうやらそうだな。」
「ザック、何かあるぞ!」
サーマンが言った。そこには魚型のロボットがあった。ヒラメのザックは砂に潜り、ロボットの動きを良く見た。そしてタイミングを見計らってロボットを仕留めた。
「お、ザックやったぞ。」
「大したことはない。それにこのロボットは敵かもしれないからな。」
するとロボットはアイテムらしきものを出して消えた。
「何だこれ?」
「使ってみるか。」
ザックはアイテムを適当に使った。
「これは!」
「イカの墨だ!」
海はイカの墨で全て覆われてしまった。




