楽器運送3
コンサートチャイムとウィンドチャイムを運ぶディーンのチームは何事もなく進んで行った。3チームの中では楽器が重いだけでモンスターは1体もいなくてトラップも少ない方だった。
「こっちのルートを行けば石がない。」
「少し風が強くないか?」
ジョージが言った。
「言われてみればそうだな。」
風が吹いても気にせず3人は運んでいた。
「何かどんどん強くなってる気がするぞ。」
「ヤバい、倒れそう。ディーン、チャイムをおさえろ!」
ロバートが持ってるチャイムは風で傾きそうになっていた。そしてディーンがタブレットを置いておさえた。
「風が全然おさまらない。」
安全だと思っていたステージには強風が吹く。予期せぬ強風が3人を襲う。
「ウィンドチャイムが壊れそうだ!」
ジョージは必死になってウィンドチャイムの部品が外れないようにおさえていた。
「引き返すか?」
「いや無理だ。この風は草原一体で吹いてるものに違いない。」
「じゃあどうすんだ!」
ジョージが問い詰めた。
「あー、うるさい!うるさい!とにかく風がおさまるまで楽器を守るしか手はないだろ!」
ディーン達は楽器を守り続けた。そして数分して風はおさまった。
「やっとおさまった。」
「酷い風だったな。」
「ない。」
「楽器ならここにあるだろ!ウィンドチャイム、1つも備品壊れてないからな。」
「そうじゃない。タブレットがない!しまった。あの時だ。」
コンサートチャイムをおさえていた時にタブレットを置いていた。その時に風でタブレットが飛ばされてしまった。
「あれがなければゴール地点が分からない。お前どうするんだ。」
ロバートとジョージはディーンを責めた。
「しょうがないだろ。そもそもお前がコンサートチャイム傾かないようにおさえろって言ったじゃないか!それがなければタブレットは飛ぶことはなかった。」
「何だとやるか!」
3人は取っ組み合いの喧嘩になった。
「歩いても歩いても進まなくないか?」
「しかも暑い。」
ザック達は歩いても全然コンパスが進まないような状況だった。
「待て、この草原おかしい。」
リックが言った。
「俺達が暑くておかしくなったんだろ。」
「確かにこの暑さは尋常じゃない。それに湿度もある。これはゲームマスターが気温を操作したんだ。それにこの草原全部がいつの間にかムービングウォークになっている。」
「と言うことは休憩でもしたら俺達流されてゲームオーバーということか。」
「そうだ。」
リックの言う通りこれもジェイがしかけたトラップの一つだった。
「まだマシだ。俺達が届けるのはアイリッシュフルート。他の楽器よりそうそう壊れる楽器じゃない。ハンマーのような打撃を受けなければ話だが。」
「またボールかよ。」
空からボールが降ってきた。
「気をつけろ。近くにハンマーゴーレムと盗人キツネが出て来た。キツネは盗む役割で、ゴーレムは壊す役割だ。」
リックはタブレットにある情報をもとに言った。
「こいつら逆走してるのに流されてない。」
「見ろ、靴を履いてる!」
ジャクソンが靴の方を指さした。
「痛い何するんだ!」
ジャクソンはたくさんのキツネに噛まれる。
「ジャクソン!」
「どうだ?動物愛護家?いやアニマルホーダーが動物に囲まれてどうだ?狂犬病やエキノコックスはないから生き残れることでも俺とキツネ達に感謝するんだな。」
もちろんこのキツネ達も当社の特別な技術で開発したAIだ。
「ジャクソンをおいて行くぞ。」
「因果応報だな。」
ザックとリックは走って行った。
「やめろ!」
「仲間の2人にも見捨てられたようだな。どうだ動物達に愛される気分は?」
ジャクソンはキツネの尿と糞まみれになった。
「おっと、これは激臭なようだ。なんせ多頭飼育によって放置された時を想定した糞と尿だからな。」
「俺は…何も…悪くない…」
「自己正当化するのは自由だ。だけどこのままだと君死ぬよ。」
ジェイの悪魔の声が響く。
「分かった。悪かった!」
「もっと思いがないと。それじゃあ足りないな。そんなんじゃ動物達は納得いかないぞ。」
「許してくれ!」
ジャクソンはキツネに謝り続ける。
「あいつがキツネのおとりになったから助かった。」
「油断するな。まだキツネが2匹いる。」
ザックとリックは走り続ける。
「また鷹の大群だ。」
「もう鳥の餌はないのに。」
スティーブンを置いてから時間が経った。
「よし鷹達をまいたぞ。」
さらにライオンが彼らを追う。
「何でライオンがここにいるんだよ!」
サーマンが言った。
「俺に聞くな!あのゲームマスターに聞け!」
ウィルとサーマンはライオンから必死になって逃げる。
「こいつしつこい。どっか隠れる場所はないか?」
「今探してる。」
ウィルはタブレットをいじりながら走る。しばらく走るとライオンから逃げ切れた。
「今度はワニとカバだ。しかも火を吹いてる。」
また必死に逃げる。
「さっきのゲームのワニとカバだ。このステージにもいるなんてな。」
「こう言う時にウォーターガンだ。」
ウォーターガンでワニとカバに挑む。
「これでもくらえ。」
ウィルは着実に命中させる。
「まだいるぞ。」
「危ない。」
火がウィルにあたりそうになった。
「くらえ!」
「よしやったぞ。」
「くらえ!」
ワニとカバはウォーターガンにより気絶した。
「またライオンかよ!」
「助けてくれ!」
サーマンはライオンに捕まった。オーボエがかみくだれないようにしてる為変な姿勢になった。
「世話がわけるやつだ。」
ライオンにウォーターガンを打つ。
「行くぞ。」
2人は走って行く。
「うわ!」
「どうした!」
ウィルは一瞬にして落とし穴に落ちた。
「サーマン、俺はここから抜けるのは無理だ。あとは頼んだ。」
ウィルがサーマンに向かってタブレットを投げた。そして彼は受け取る。
「ゴールまであとすこしか。」
一人で走り続ける。
「こっちだな。」
「いや俺の記憶だとこっちだ。」
ジョージとディーンが言い争っていた。
「タブレット持ってたのはディーンだろ。それならこいつに任せたほうが良いだろ。」
「いや、俺だって地図は何度か見た。間違ってない。」
「今回はさっきのゲームみたいに分かれることはできない。楽器がゴール地点にそろってないと意味はない。とにかく俺の言うことを聞け。」
2人はディーンの後をついて行く。
「何でこっちなんだ?」
「この草原のトラップリストを裏設定で確認した。ゴール地点のすぐ近くには落とし穴がたくさんある。だから面倒くさくても迂回した方が良い。」
ディーンはタブレットを使いこなしていた。
「この草原での大きなトラップはそこだけだ。」
全員重いコンサートチャイムを運んで行く。
「このキツネ達しつこいな。」
「あのゲームマスターの仲間だからそう一筋縄では行かせないだろ。」
「危ない。」
リックはロックゴーレムの攻撃を受けるところだった。
「こっちに来るな!」
リックはパンチでキツネを飛ばした。それでも攻撃がやむことはなかった。
「来るな!」
「逃げてないでこっちを援護してくれ!楽器持ってるんだぞ。」
「だけど戦いながらムービングウォークの草原を走るなんて簡単じゃないだろ。」
「裏技がある。」
「何やってるだ。」
リックはタブレットをザック渡し、自ら盗人キツネに近づいた。
「俺達が盗人キツネになれば良いんだ。」
「どういう事だ?」
ザックが聞き返した。
「分からないか?あいつらが履いてる靴を奪うんだよ。」
「キツネサイズの靴なんてとっても意味ないだろ。」
「もしかしたら靴はサイズが変えられるかもしれない。数々の巧妙なトラップを見たか?これくらいテクノロジーを持ってるならあの靴もかなりの機能はある。」
リックはキツネから靴を取ろうとした。キツネはリックの攻撃を避けていく。
「くらえ!ん?」
リックの目線の先に何かが流れて来る。
「あれは麻酔銃だ。」
「即効性はあるのか?」
「やってみないと分からない。」
銃をどんどん撃っていく。
「危ない!」
ザックは向かって行く。キツネを避ける。
「今だ!」
キツネに麻酔銃を向けた。そして靴を奪い取った。キツネはどんどん流れて行く。すると靴のサイズは変わった。そしてそれを履いた。
「手を出せ。」
ザックとリックは手をつないだ。
「男同士で手をつなぐとか気持ち悪いだろ。」
「そんなこと言ってる場合か?手をつなげばお前にも効果は出る。」
「クソ!このホモ野郎が!」
渋々とザックは手を繋いだ。
「ゴーレムが追いかけて来る。」
「あいつからも靴を盗むか?」
「無茶言うな!とにかく逃げるぞ!」
ゴーレムの腕があたりそうになった。
「こいつもしつこい。」
「とにかく楽器を守り抜け!」
「うわー!」
ゴーレムはどんどん地面を割って行く。
「どんだけ怪力なんだよ。この石野郎。」
砕けた勢いで土煙が出て視界が不自由になった。
「よく前が見えない。」
「こっちだ。」
ザックはリックに手を引っ張られながらどんどん進んで行った。
「このルート距離が長い。」
ディーン達は迂回したルートを選びトラップにまったくあわなかったがかなり長いルートで楽器を運送していた。
「ゴール地点まであと少しだ。」
「本当か?」
「記憶は確かだ。」
3人は休みを入れつつ進んでゴール地点の近くまでたどり着く。
「念の為トラップがないか確認する。」
ジョージが確認するとトラップは特になかった。
「やっと着いた。」
ディーンのチームはようやくゴールに到達した。
「楽器を点検します。コンサートチャイムとウィンドチャイムですね。」
楽器点検ロボットが楽器の状態をチェックした。
「コンサートチャイムもウィンドチャイムも問題なしです。チームCの皆様合格です。」
「長い戦いだったな。」
「もうあんなチャイム運びたくないな。」
ロバートは疲れ切っていた。
「それで他のチームはどうなってるのか?もうたどり着いてるのか?」
ジョージが聞いた。
「たどり着いてたらとっくにゲームは終わってる。このゲームは他のチームの様子は確認できないから今は休むしかないだろ。」
ロバートが言った。
「おやおや、チームCのプレイヤー諸君、暇してるようだな。」
「もしかしてさらに雑用でもやらせる気か?冗談じゃない。」
ジョージが言った。
「君達は想像力が豊かだな。だけどマゾな君達の期待には今は答えられない。他のチームの様子をタブレットで見せる。」
1体のロボットが大画面のタブレットをプレイヤーに渡した。
「チームAの様子を見てみるか。」
「ジャクソンのやつ何やってるんだ?」
「キツネに襲われてるみたいだな。」
「安心したまえ。キツネ攻撃で死ぬことはない。」
ザックとリックはゴーレムから逃げていた。ゴーレムが砕いた地面と視界を遮る土煙が2人を襲う。頼れるのはタブレットにある地図とコンパスだけだ。
「こっちだ。ゴールまで近い。」
2人は土煙から抜け出した。
「あそこがゴールだ。」
「めちゃくちゃ暑い。」
何とゴール直前は50度に設定してある。ずっと走る。
「何だかゴールにつかなくないか。」
「しまった逆方向に行ってる。」
「あれは何だったんだ?偽ゴールか?」
「トラップでもない。蜃気楼だ。」
「蜃気楼?幻覚を見てたと言うことか?」
「そうだ。ゴールは遠のいてしまった。」
「どうしてくれるんだよ。」
「文句を言うならお前を置いていく。」
リックがザックに言った。
「もう無理だ!俺はリアイヤだ!」
「勝手にしろ。」
リックが一人で運ぶ。
「ゴールは少しだ。」
リックは暑い中全速力で走る。どんどん速くなっていく。
「暑い…」
どんどん暑さが彼の体力を奪って行く。
「暑い…暑い!」
そしてついにゴールに到着した。
「チームAのプレイヤーの皆さん、楽器を点検します。こちらはアイリッシュフルートですね。」
「そうだ。」
ロボットが楽器の状態を確認した。
「楽器の状態は何も問題ありません。それではここで。」
ロボットは去って行った。リックはたくさんの水を飲む。
「あとはチームB、サーマンのチームか。」
サーマンはウィルと離れて一人になった。
「ゴールまであと少しか。危ない!」
落とし穴に落ちるところだった。
「またあいつか。」
ライオンがまた登場した。
「しまった。」
ライオンはタブレットを盗んで落とし穴に入れた。
「クソ!」
彼は逃げて行く。覚えてる情報を頼りにゴールに向かって行く。
「やっぱりあそこか。」
目の前にはゴールが広がっていた。
「あと少しだな。楽勝だ。」
ライオンがゴール手前で飛びかかって来た。
「しまった。」
ライオンはオーボエを盗んだ。
「そう言えば鳥の餌の中に変なものがあったな。」
ポケットから変なものを取り出した。それをライオンに投げる。
「どうだ。」
ライオンの鼻に当たった。
「しめた。」
ライオンはうっとりしながら倒れた。
「今だ。」
その隙にオーボエを取り返した。
「よしあと少しだ。」
彼はゴール地点に到達した。
「チームBのプレイヤーの皆さん、楽器を点検します。オーボエですね。」
ロボットが点検した。
「楽器に問題はありません。」
「全プレイヤー問題なく楽器を運送できた。よって第3ゲーム楽器運送を終了とする。同時に第4ゲーム通過だ。第4ゲームは3日後に行う。それまでプレイヤー諸君はお互い楽しく過ごすように。」
「やっと終わった。」
プレイヤー達は第3ゲームでかなり疲れ果てた。