蛇口推測2
プレイヤー達は最初の時よりお互い対立するようになった。
「そこのクソ野郎があんなこと言わなければこんなことにならなかったのにな。」
ザックはリックを責め続けた。
「あいつどうするんだ?ずっとあの調子だとゲームに支障出るぞ。」
「放っておけ。俺はあいつのことなんてどうでも良い。突然あのゲームマスターが俺達をランダムで集めたんだから。」
「ランダムか?あいつの感じだと意図的に計画的に選んで俺達を集めた。気がするけどな。」
「それよりもう一度作戦を練り直す。」
「ザック、作戦会議だってよ。聞かなくて良いのか?またふてくされてんのか?」
ジャクソンが彼に言った。
「あんな奴と話す理由なんてねー。」
「お前、俺のことは嫌いなのは十分分かった。俺もお前のことが嫌いだ。だけど今から言ったことは頭の片隅に入れとけ。」
「この会場から抜け出したいなら作戦は聞いたほうが良い。」
「まず蛇口に何が入ってるかはセットごとに変わってくる。俺達が覚えた所で何も意味がない。それと俺の記録係も意味はなかった。だから俺も蛇口を開けることに専念する。」
「時間は30分。グズグズしてたらあっという間に時間は過ぎてしまう。まずは800個の蛇口を制覇することに専念すべきだ。」
ディーンが言った。
「そうだな。そうと決まればゲーム再開だな。」
それから2時間が経った。
「まだか?おいゲームマスター!」
「ゲームマスター出てこい!もうとっくに2時間経ってるんだぞ!」
プレイヤー達はこの状況を打破したいが為にひたすらジェイのことを呼び続けた。
「いつまで持たせるんだ!」
「早くしろ。」
そして3時間経ってようやくジェイがモニターから出て来た。
「これからゲームを再開する。」
「おい、1時間遅れだ!」
「だからなんだ?」
「俺たちは1秒でもこの地獄のような環境を抜け出したいだよ!」
「そうだ!そうだ!」
「だからなんだ?君達の為に時間を守る必要はない。それに値しない人間だ。この事実はお前らが変わらない限り一生変わらない。」
「俺達が変わる?」
「ゲームを再開する。否定する飲み物はテキーラ、デーツシロップ、野菜ジュース、レモネード、コーラだ。」
「ゲームマスター、デーツシロップって何だ?知らないもの出されても答えられないだろ。」
ジャクソンはインスタント食品ばかり摂取してる環境だった為知らない食品が多い。
「それくらい自分で考えろ。俺が君達に答えるのはゲームに関することだけ。ここは食品の雑学を教える学校ではない。」
ジェイが言った。
「デーツはナツメヤシのことだ。その果汁を濃縮したものだ。お前は蛇口をひねることだけに専念しろ。」
ウィルが言った。
「ゲームスタートだ。」
第三セットが開始した。どんどんプレイヤー達は蛇口をひねって出しっぱなしにする。
「何だこれ!ドロドロしてる!ハチミツか?にしては甘すぎる。おい、これ何か分かるか?」
ザックがジョージに聞いた。
「俺は忙しい。自分で考えろ!」
「しょっぱい!また醤油かよ。何で俺ばかり。」
「熱い!」
ザックはすぐにアイシングした。
「おい何やってんだよ!はやく動け!」
ジョージが遠くから急かした。
「熱いビーフシチューが顔についたから冷やしてるんだよ!」
「そんなことどうでも良いだろ!はやくゲーム終わらせることに専念しろ!」
「よし、コーラだ。番号は388番だな。」
「これはぶどうジュースか。俺が探してるのはレモネードだ。」
「この梨ジュース上手いな。」
ディーンの大好物だ。
「おい、味わってないではやく動け!」
スティーブンが怒鳴った。
「こんな美味しいジュース飲まなかったら損だろ!」
「これは時間を消耗する罠に決まってるだろ!味わってたら奴らの思うつぼだ。」
「お前考えて見ろよ。これから配給されるのは美味しくない水と美味しくないパン。それなら一生梨ジュース飲んでた方がマシだ。」
「あのな。お前がそれが良くても俺は無理だ。睡眠環境も最悪で理不尽な命令を課されるか分からない。それならはやくこんな所を俺は抜けたい。俺は刑務所の過酷な環境を乗り越えたから言える。」
「お前がお前の女を殺したから因果応報だろ。そうなるのは当然だ。俺も刑務所にいたけど、あんなところよりずっとマシだ。」
「お前は未成年の息子をナイフで殺したんだろ!俺が因果応報ならお前は死刑だ。」
「何でそうなんだよ!」
「そうだろ!まだ未来がある未成年を殺してよく人のこと言えるな。クソが。」
「あれは事故だ。殺すつもりなんてなかった。」
「おい、2人とも喧嘩するな!ゲームを終わらせたくないのか?」
ウィルが言った。
「だってディーンがサボるからだ!」
「は?俺は何もしてない。」
「とぼけるな。」
「証拠がないなら2人とも悪い。」
喧嘩してる間にゲームは終わった。
「レモネード意外は正解だ。レモネードは580番。それとデーツシロップは1番だ。」
「お前らのせいだ!」
ザックはディーンとスティーブンを責めた。
「そうだ。」
「お前には関係ないだろ!」
スティーブンはザックにビンタした。
「お前らやめろ!」
ウィルが止めに入る。
「プレイヤー諸君に重大な報告がある。プレイヤーの中に1分以上梨ジュースを飲んだものがいる。俺は楽しんで飲むことは許可していない。俺が許してるのは試飲のみと言った。連帯責任として全プレイヤーに罰を与える。大洪水の刑だ。」
「そんなディーンがやったことだろ!俺達は何も関係ない!」
「連帯責任とはそう言うものだ。」
プレイヤー達は15分間大洪水の刑を受けた。
「何で俺達がこんな目に…」
プレイヤー達は過酷な罰に疲れた。
「梨ジュース飲んだのは誰だ?」
ザックは問い詰めた。
「コイツだ。」
スティーブンはディーンを引っ張った。
「コイツを殴れ!」
一部のプレイヤーはディーンを殴りはじめた。
「ジョージ!1番デーツシロップだったじゃないか。お前があの時に確認してたら第1ゲーム終わってただろ!」
「どちらにせよ、レモネードが間違ってたからどちらにしても第1ゲームは通過出来なかった。」
「うるさい!レモネードのことも全てお前のせいだ。全てお前のせいだ!」
ザックはジョージを責めた。
「レモネードを間違えたのはサーマンだ!」
「は?何で俺が!」
「悪いのはサーマンだ。」
「ザック、ジョージやめろ!」
プレイヤー達は責任のなすりつけ合いをした。
「静かにしろ!」
ウィルは大声で止めに入った。
「お前ら殴り合いで一人でも死者が出たらどうするんだ?1人死んだら全員が死ぬ仕組みだ。よく頭を使え。あとザックとジョージちょっと話がある。」
2人は渋々とウィルについて行く。
「話ってトイレで?」
「ここだから意味がある。お前ら2人は問題を起こしすぎだ。お前らがゲーム進行で遅れをとってる。無駄な争いはやめろ。」
「リーダーぶってウザいんだよ。ゲームマスターでもないくせに。」
「後向け。」
ウィルは後から2人の頭をつかみ瞬時に彼らの顔を男性用の便器に入れた。
「は…な…せー…」
2人は抵抗してもウィルの力には敵わなかった。
「お前ら、これから無駄なことで喧嘩しないと約束するか?答えるまでお前らの顔を便器に入れたままにする。」
「分かった。約束する。」
「よろしい。」
ウィルは昔から喧嘩に負けたことはない。誰よりも力の強い持ち主だ。自分の信念と相反するものは見えない所で力で制圧する。ジェイは一部始終を監視カメラで確認しながら、ウィル・ムーアのデータを確認した。
「プレイヤーの中の支配者か。これは面白いな。」
ジェイは作業に戻った。
「2人とも何で濡れてんだ?」
ディーンがザックとジョージに聞く。
「何でもない。顔洗ってたんだ。」
「にしては臭くないか?」
「お前には関係ないだろ。」
「何かおかしい。」
スティーブンは二人の様子を見ながら小声で言った。
それから何セットも続いたが簡単には第1ゲームを通過することは出来なかった。そして2日が過ぎて第13セットになった。
「ゲームの度にあのゲームマスターはトラップを入れて来る。」
「例えば?」
「蛇口をかなり硬く閉めたり、黄色の飲み物と見せかけてイチゴジュースだったり。」
「このゲームはどうやらそう言うゲームのようだな。」
リックが言った。
「今まで俺達が考えていた常識を覆すことばかりだ。今までの飲み物と言う概念にとらわれてはいけない。ゲームに勝つためによく頭を回転させるんだ。」
「そうだ。良い案がある。」
サーマンが手を挙げた。
「言ってみろ。」
「俺、さっき客席の方に仕掛けがないか探してたんだ。そしたら銃が2個出て来たんだ。これを使って蛇口を壊すのはどうだ?」
「却下だ。誰か一人でも死人を出したら全員死亡だ。」
リックは却下した。
「いや、死人を出さないやり方はある。」
全員作戦を練った。
「プレイヤー諸君、14セットをはじめる。今回指定する飲み物はケルン水、グアバジュース、ミントティー、ウーロン茶、メロンソーダだ。」
「ケルン水って何だ?」
ロバートが聞く。
「そんなのも知らないのか?香水のことだ。」
サーマンが言った。
「それもはや飲み物じゃないな。」
ゲームとともにプレイヤーは走るがサーマン以外のプレイヤーは全員戦闘場にいた。ザックとリック以外は蛇口をひねっていた。
「ここか。」
一方サーマンは客席と出口側に銃を2つ持って行った。
「行くぞ。」
銃声が響き渡る。サーマン以外は戦闘場にしかいない為何も影響はない。サーマンは銃でどんどん蛇口を壊してく。
「これは楽だ。強力なうえ球切れもない。」
この銃は備品開発部が作ったものだ。わずかな炭素を瞬時に銃弾に変える画期的な銃だ。当社自慢の製品だ。
「お前ら、客席まで来い。」
サーマンは銃を使うのが上手い。優れた動体視力で対象物を正確に狙う。
「行くぞ。」
「こっちだ。」
リックが予め指定したルートに沿ってプレイヤー達は飲み物を飲んだ。
「これかケルン水は。」
ロバートに香水の匂いが残る。
「よしこれで形勢逆転だな。」
特にロバートとジャクソンは自慢の足の速さでどんどん速いスピードで飲んで行く。
「あと5分だ。」
「まだ分からない飲み物はあるか?」
「メロンソーダだ。」
プレイヤー達は残りのメロンソーダを探す。
「これはただのメロン果汁だ。」
「急げ。」
「残り1分だ。」
プレイヤー達は必死になってメロンソーダを探す。
「メロンソーダ!」
「メロンソーダはどこだ!」
「これだ!」
「14セット終了だ。それでは答えて貰う。」
「ウーロン茶は364番。」
「ミントティーは622番。」
「グアバジュースは848番。」
「ケルン水は239番。」
ロバートが答えた。
「残りのメロンソーダは?」
「メロンソーダは27番だ。」
ジャクソンが答えた。
「あってるか?」
ジェイがしばらく無言だった。
「正解なのか?」
「正解だ。お見事だ。」
「よし!」
「やったぞ!」
安心するプレイヤーもいれば、喜んで舞い上がるプレイヤーもいた。
「14セットでクリア。よって第1ゲームを通過とする。」
「よし、やっと第1ゲーム突破したぞ。」
「やっと終わった。」
「第二ゲームは2日後に行う。くれぐれも不正行為を行わないように過ごし給え。それとパンを食べるように。」
モニターからジェイが消えた。プレイヤー達は味のないパンを食べる。
「いつまでこれ食わないといけないんだ?」
「泣いて文句言った所であのゲームマスターが俺達を可哀想だと思ってもっと良い食事にすると思うか?」
「それはないな。」
プレイヤー達の生活環境は第1ゲームをクリアしても変わることはなかった。
「良い寝場所がある。」
ディーンがザックに言った。
「どこだ?」
「客席の方だ。ゴツゴツした床よりかはマシだろ。」
「お前頭良いな。」
客席で寝て5分が経過した。するとモニターが起動してジェイが出て来た。そして会場中に大量の光が放たれる。
「まぶしい。何だ?」
「プレイヤー諸君、この中に無断で客席で寝たプレイヤーが二人いた。よって全員にペナルティを課す。」
「何でだよ。」
「また連帯責任かよ。」
「罰として会場中に地震を起こす。」
ジェイがボタンを押すと会場中が震度4くらいの地震が発生する。
「全員良い夢を見ろよ。」
そう言ってジェイはモニターから消えた。
「この揺れじゃ落ち着いて寝れやしない。」
「揺れまくって寝れない。」
地震がプレイヤーにストレスを与える。
「この揺れいつおさまんだよ。」
「さっきゲームマスターが一晩中揺れるって言ってたぞ。」
プレイヤーは地震の中夜を過ごした。
「おさまった…」
ほとんどのプレイヤーは寝れずにいた。プレイヤー達の苦悩はまだまだ続く。