第2話 黒の騎士共
みかんを食べ終わった後、また見回りを再開するハジメら二人。
今のところ特にこれといった騒ぎは起きておらず、むしろ暇なくらい「キャぁぁぁぁぁ!!!」「「!?」」
事件発生である
先程の悲鳴を頼りに事の発生源を探す。
右、真っすぐと走った先にあった光景は、涙を流す一人の女性に対し、黒を基調とした鎧を着た騎士複数人が鞘から抜いた剣を振り上げている瞬間だった。
剣が女性に向かって振り下ろされるその瞬間――
カキィン!!
と二つの鋼がぶつかる音がした。
「なっ…!」 「誰だ貴様!!」
そう叫ぶ黒の騎士共。
「あぁ、どうも。フリーで騎士をやっているものです。」「でーす。」
それに対し、この場に似つかわしくない気の抜けた声でそう答えるフリー騎士共。
「はぁ?フリィー騎士ぃ?…フザケてんのか。」
「別にフザケてねぇよっと。」
ガンッと受け止めていた剣を弾き返す。その衝撃で相手がよろめいた隙にみぞおちを一発ぶん殴る。
ドガァァァン!!!という音が辺りに鳴り響く。衝撃で地面は削れ空気が切り裂く。
「ガㇵッッ…!!」
白眼を向き、バタンッと気絶する黒の騎士。この騎士は彼らの中でも最も強い者だった。
その彼が一撃でやられた瞬間を見た他の黒の騎士共は思わずたじろぐ。
「俺、本気でフザケてないよ。……だって、君と正々堂々と剣を交えたいからね。」
(ソイツもう気絶してるっつーの。)
目を輝かせながら気絶した相手にそう言うハジメに、ちょっと引き気味に笑いながら心の中でツッコムもう一人のフリー騎士――クリア。
「―――さぁ。君達も騎士ならば正々堂々、俺と剣を交えよう。」
「ッ……クソっ!!恐れるな!相手はたったのガキ"一人"だ!さっさと片付けちまえ!!!」
それを合図に他の団員が一斉に動き出す。
向かう先にはハジメただ一人。
(あっちの数は一人に対し、こっちの数は15人!!流石にこの数には対応出来んだろう。)
この状況、普通の人間ならば絶対絶命である。
……だが、彼は違う。
何故なら彼――――ハジメは"最強"だから。
「「うおおおおお!!!!」」
視線を正面に向ける。
辺りが一瞬でスローモーションになる。
そして、剣を鞘から抜き……仕舞う。
――その時間およそ0.2秒。
到底人間の目には追えないため彼等は何が起こったのか全く理解出来ていない。ただ一人を除いて。
(うわ、でたー。ハジメの真剣モード。ああなると僕でも目で追うのが精一杯だっつーの。)
次々にバタバタと倒れていく団員共。
「な……なにがおこった。」
「何って…俺が、君達を、斬った?」
「そ…んな事は知っている。……どうやったのか、聞いているのだ。」
あの大人数相手に、たったの数秒でどうやって………
「んなの、俺の努力の賜物に決まってんじゃん。」
と両手でピースしながらそう言うハジメ。
(はっ、化け物かよコイツ。)
最後に見たのは、気絶した仲間達と憎いほどに綺麗な青空だった。