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悪役令嬢はハーレム脱却を目指す  作者: 貧血みかん


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15 その後

 アークとマリアが屋敷を去ってから一年の時が過ぎ、私とグレイは滞りなく結婚する事ができた。

 あっという間だったけど、色んな事があったわね。



「クラウディア様! クラウディア様! 雲島の新情報が噂になってるんですけど、ご存知ですか?」


「ちょっとノエルってば、またその話なの?」


「うるさいわよ、シエル! 今、クラウディア様とお話ししてるんだから邪魔しないで!」


「別に邪魔してないわよ! そんな事を言うノエルの方が余程うるさいわよ?」


「なんですって? 私はうるさくなんてないわ!」


 ピンク色の髪の双子は、今日も元気がいい。

 エメラルドみたいな瞳をキラキラさせて、毎日何かを言い合いながら、クラウディアの部屋に飾る花を届けてくれるのだ。


「ほらもう、ノエルもシエルもケンカしないの! 美味しいマカロンがあるから、一緒に食べましょう?」


「わぁ〜美味しそう! これグレイ様の手作りですか?」


「はしゃいじゃってみっともないの。シエルってば本当に食いしん坊なんだから」


「なんですって? じゃあノエルは食べないのね?」


「は? 食べるわよ! 食べるに決まってるでしょ?」


「はいはい、 ケンカする子にはあげないわよ?」


「「ご、ごめんなさい、クラウディア様!」」


 この元気で可愛い双子は、本来ならばアークが助けるはずだった奴隷の娘達だ。

 クラウディアは、ストーリーを捻じ曲げてしまった罪悪感から、金と権力を駆使してノエルとシエルが捕えられていた奴隷商を潰した。


 本来ならばアークがするはずだった人助けを、せめてもの償いとして代わりに行ったのだ。

 そしてその後、何故か異様に懐かれてしまい、2人はクラウディアの屋敷で働いている。


 彼女達は妖精と人間のハーフで、見た目は13、4歳くらいに見えるが、実はクラウディアよりもずっと年上だったりする。


 植物を育てる能力に長けていて、奴隷商人に捕まってからは、毒草や麻薬の栽培をさせられていたそうだ。

 2人の背中には妖精の証である美しい羽があり、近々、変態貴族に高値で売られる予定だったらしい。



「雲島の王様って、どうやら竜人族の末裔らしいんですよ! ほら、あの、神様に最も近いって言われている希少種族です。しかも、竜人族って同性同士でも子孫を残せるから、同性カップルがとても多いんですって! 王様もご多分に洩れず男色らしいんですけどね、実はなんと、王様ってデブせ……ふくよかな方がお好きだそうです」


「まぁ! それは本当の話なの?」


「はい。 今、お城で働く人を募集しているんですけど、審査がとっても厳しいみたいで、 体重100kg以上の成人男性しか採用されないそうですよ。しかも、筋肉で体を重くするのはダメ、色白で柔らかな体の男性を望まれているそうです。ちなみに、王様はとんでもなく美形ですが節操がないらしく『妾は何百人いても困らない。全員まとめて可愛がるから安心しろ』…なんて事を公言しているんですって!」


 ノエルは一気にそこまで話すと、やり切ったという顔をしてマカロンを食べ始めた。

 ここ最近は、どこに行っても雲島の話で持ちきりだ。

 雲島を発見して王になったのが、竜人族という珍しい種族であり、とんでもない美形で男色でデブ専ならば、それはもう噂にならない方がおかしいだろう。

 

 アークを王にさせないように奮闘していたら、ぽっちゃりBL王国が爆誕してしまった。

 少し良心の呵責のようなものを感じるけれど、これならもう私がハーレム要員になる未来は訪れないだろう。

 ストーリー補正も特にされていないように思う。

 

 最もアークに接触させてはいけないと考えていた転移魔法使いのリリルは、その後、憧れの魔道具師のもとに弟子入りして、大好きな魔道具に囲まれながら、朝から晩まで魔道具製作に励んでいるらしい。

 

 本来ならば、アークが助けるはずだった獣人とエルフもクラウディアが代わりに助けた。

 森でお腹を空かせて行き倒れていた虎の獣人ドーラを手厚く保護し、戦争に発展するはずだったエルフとダークエルフの揉め事に無理やり介入して争いを収めた。


 獣人ドーラは当然のようにクラウディアの屋敷に住み付き、エルフの里の族長の娘であるシルヴィーヌまでもが屋敷に押しかけてきて、現在は執事長見習いとして住み込みで働いている。

 

 どうやらシルヴィーヌは、揉め事介入の手助けをしてくれたセバスに惚れ込んでしまったらしい。

 確かにセバスは、紳士的でスタイリッシュで行動力も包容力もある素敵な男性ですものね。


「シ、シルヴィーヌさんのような若くて美しいお嬢さんが、私のような老いぼれとお付き合いするなど、あ、あってはならない事でございますっ!」


「セバスよ、何を言っている? 私はそなたよりも3倍は年上だぞ? 大丈夫、恐れる事は何もない。年齢など愛の前では瑣末な事だ」


 動揺するセバスを見る機会は滅多にないので、2人のやり取りを見るのは結構楽しい。

 押して押して押しまくるシルヴィーヌに対し、何とか一線を引こうとするセバスだが、陥落されるのは時間の問題のような気がする。


 しかもシルヴィーヌは、胸ポケットを膨らませずに物を収納する技をマスターしているのだ。

 グレイが最後まで修得する事ができなかった、セバスのあの技をいとも簡単にモノにした。

 ニワトリ一羽程度なら、ほとんど胸ポケットを膨らませずに収納する事が可能らしい。

 とんでもないスキルではあるが、果たしてそれが執事として必要な能力かどうかは分からない。


 結局、アークの側室になるはずだった女性達のほとんどがクラウディアの側にいる。

 彼女達の未来を勝手に変えてしまった事を申し訳なく思うけれど、みんな幸せそうだし良しとしよう。


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四次元ポケット的な物の出し入れといい、明らか不自然な急激成長を普通に受け入れた件といい、やはりこの世界は「マンガ・アニメのお約束」が根本の物理法則として適用されているんだろうか? もしそうなら、勇者…
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