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14 悪だくみ

 アニメの中のアークは、クラウディアに媚薬を飲まされて、なんとか抗おうとするけれど、結局ベッドインしてしまう。


 で、やる事はしっかりとやるのだが、その媚薬は違法品だったために貴族の間で問題となり、クラウディアは怒り狂った父親に糾弾されて、ハゲデブの好色爺と無理やり結婚させられてしまうのだ。


 そして、晴れて自由の身になったアークは、マリアと手を取り合って冒険に旅立つ。

 それはもう楽しそうに背景に花とか飛ばしながらね。


 その後、屋敷を出た2人は、旅支度を揃えるために近くの街へ向かい、そこで2人目のヒロインに出会う。

 ミルクティー色のフワフワした髪をゆるく2つに結んだ、そばかす丸メガネの魔法使いリリルだ。

 黒い大きなローブを羽織った素朴で可愛い女の子。


 彼女は優等生っぽい雰囲気を醸し出しているが、実は重度の方向オンチで、お目当ての魔道具店にたどり着けずに街をさまよっていた。

 

 アークとマリアは一緒に魔道具店探しを手伝い、そのお礼にリリルは魔法を披露する。

 なんと彼女の使う魔法は、超レアな転移魔法。

 リリルは、アーク達の目的地である『始まりの村』に転移してみせるつもりだったが、方角を間違えてとんでもない場所に転移してしまうのだ。


 その後もアーク達は、方向オンチ転移魔法のせいで、何度も酷い目に合う。

 まともそうに見えるが、かなりの危険人物なリリル。

 でも、よくよく考えるてみると、他の仲間達に出会えたのも、雲島を見つける事ができたのも、全部リリルが転移魔法を失敗したおかげなのだ。


 マリアが聖女として覚醒できたのだって、元をたどればこの転移魔法のおかげだ。

 確か、精霊の湖に転移するつもりが、移動距離を間違えて凶暴な魔物の群れに転移してしまうのよね。

 その時、仲間を守るためにアークは大怪我をする。

 そしてマリアは、どうしてもアークを助けたいと心の底から願って、聖女として目覚めるのだ。


 ん? んん?

 それって要するに、リリルに出会わなければマリアは聖女にならないって事?

 転移魔法がなければ、他の仲間達にも出会わないし、雲島だって発見できないって事よね?

 もしかすると……リリルに出会わなければ、アークは王様になれないのではないかしら?


 そう…よね……ストーリーを進めるにあたって、最も重要なキャラはリリルだわ!

 彼女の転移魔法がなければ、アーク達の冒険はもっと普通でありきたりなものになっていたはずだもの。

 

 確か……リリルは魔道具が大好きで、有名な魔道具師の店に行くために田舎から出てきたのよね。

 それなら街に案内人を手配して、リリルが迷子にならないようにサポートするのはどうかしら?


 魔道具店にも手を回して、リリルを従業員に勧誘してもらうのもいいかもしれない。

 憧れの魔道具店で働けるのなら、わざわざ危険な冒険をしようだなんて考えないはずだもの。

 

 うーん……でも、まだ何か足りない気がするわ。

 どう転んでも絶対にストーリー補正をできなくするにはどうしたらいいのかしら?


 やはり、出会う可能性を完全に潰す必要があるわね。

 アークが自発的に街に行かない選択をしてくれたらいいんだけど、必要な物を揃えるなら近場の大きな街に行こうって考えるのが自然だものね。


 あ! それなら、前もって旅支度をこちらで準備してしまうのはどうかしら?

 そうよ!そうだわ! 馬車を用意して道順も全部こちらで決めてしまえば、街に行くのを防げるわ。

 まずは、領地を出るまでの交通手段と宿泊場所を確保して、リリルの方にも事前に対策をしておけば、確実に出会いを潰せるんじゃないかしら?

 

 アークとマリアに対しては、色々と思うところはあるけれど、別に不幸になってほしいわけじゃない。

 もちろん幸せを願ったりもしないけどね。

 私と関わりのない場所で、勝手にそれなりに生きてくれるならそれでいい。


 だから…そうね。2人にはこれ以上ないくらい素敵な旅をプレゼントしましょう。

 甘くとろけるような婚前旅行を。

 あわよくばだけど、旅行中に赤ちゃんができてしまったら……冒険なんてしてる場合ではなくなるわよね?


 アニメでは、冒険中に2人は一線を越えない。

 スライムまみれになった体を洗うために一緒にお風呂に入ったり、呪いの指輪でお互いの体が入れ替わってしまったりと、なかなか際どいハプニングは起こるのだけれど、男女の関係にはならないのだ。


 2人が結ばれるのは、アークが雲島の王様になって、マリアが王妃様になってからだ。

 ちなみに、他の仲間達は全員側室になる。

 そして夜のお相手は曜日で入れ替わる。

 

 アニメでは、クラウディアが「私、あの夜から貴方の事が忘れられなくなってしまったの。 責任を取って下さる? 」とか言って雲島に押しかけ、曜日を無視して毎晩アークと過ごそうとして、怒った側室達とバトルが勃発していた。


 でも、その後すぐにサキュバス事件が起きて、クラウディアはあっけなく退場する事になるのだけれど。


 とにかく私は、ハーレム要員になるつもりはないわ。

 最愛のグレイと共に人生を歩む予定なんですもの。

 申し訳ないけど、アークを王様にはさせない。

 代わりにマリアとの甘いひと時をプレゼントするわ。

 だから、どうか私の知らない遠いどこかで、そのまま2人で暮らして欲しい。


 きっと、こんな物語はつまらないでしょうね。

 モブなろのファンなら、怒って途中で読むのを辞めてしまうかもしれないわ。

 でもそれでいいの。

 これは漫画やアニメの話じゃなくて、今を生きている私達のリアルな人生なのだから。


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― 新着の感想 ―
勇者の凋落にオタク女性の策略有り。 良かった、長かったアーク編の裏にも主人公の活躍がきちんと存在した。 やはり、ザマァと言うかおバカ達の因果応報に被害者が無関係ってのは、悲しみとか消化不良感が生まれ…
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