暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌
田舎のとある中学校。そこで竹並美秋は周囲から孤立し、上級生からいじめを受けていた。ある日、いじめという名の暴力から逃げた先にある神社で、美秋は一人の少女と出会う。明らかに同級生と思われる少女は、日曜朝にやっている女児向けアニメのお面をした状態で、自身をこの神社の狛犬であると言うのだった。
10月2日(水)
(1)――「――やあ人間。ワタシの神社で、一体なにをしているのだ?」
2024/07/07 13:00
(2)――「人間と会うのは久しぶりだ。ふふ、興味深い。なあ人間、ワタシと少し話をしないか」
2024/07/07 13:30
(3)――「う、ううう敬え人間!」
2024/07/07 14:00
(4)――「ワタシの帰るべき場所は、この神社なのだ」
2024/07/07 14:30
10月3日(木)
(1)――貸してもらったハンカチを返したい。
2024/07/07 15:00
(2)――全く、本当に都合の良い夢だ。
2024/07/07 15:30
(3)――それは可哀想なやつに声をかけた自分に酔い痴れたい人間が吐く言葉だ。
2024/07/07 16:00
(4)――それならもう、狐だろうが犬だろうが人間だろうが、なんでも良いか。
2024/07/07 16:30
(5)――歌がこれほど力のあるものだなんて、思いもしなかった。
2024/07/07 17:00
(6)――溺れてしまうくらいに苦しくて。 けれど、心地の良いものだった。
2024/07/07 17:30
10月4日(金)
(1)――都合の良い親友も、異世界も、異能力も存在しない。
2024/07/08 15:30
(2)――その偽善的な配慮に、どれだけ僕が吐き気を催していると思っている。
2024/07/08 16:00
(3)――「歌は良いぞ。聴くのも歌うのも、全部楽しい」
2024/07/08 16:30
(4)――「狛犬豆知識なのだ」
2024/07/08 17:00
(5)――今日会えた人と明日も必ず会えるなんて保障は、どこにもないんだ。
2024/07/08 17:30
10月5日(土)
(1)――なんとなく、あの少女のことは伏せておいたほうが良い気がしていた。
2024/07/09 16:00
(2)――点在していただけの事実が、繋がろうとする。
2024/07/09 16:30
(3)――「僕も、コマと過ごす時間が増えて、すごく嬉しいよ」
2024/07/09 17:00
(4)――「つまり、狛犬であるワタシに狐面が似合うのも道理のうちなのだ」
2024/07/09 17:30
(5)――その透き通るような歌声は、美しく秋の神社に響き渡る。
2024/07/09 18:00
(6)――「アキに聞いてほしいことがあるのだ」
2024/07/10 15:00
(7)――「ワタシは、アキに嘘をついていた」
2024/07/10 15:30
(8)――「ワタシがこの神社に居着くことになった理由を、聞いてくれるか?」
2024/07/10 16:00
(9)――「ワタシは、学校から逃げたのだ」
2024/07/10 16:30
(10)――「コマ一人ぐらいなら、こっそり家に入れても、ばあちゃんにもバレないと思うけど」
2024/07/10 17:00
10月6日(土)
(1)――悪夢の正体は、間違いなくこの猫だった。
2024/07/11 17:00
(2)――「いたいけな少年の夢を壊してしまって、本当にすまない……」
2024/07/11 17:30
(3)――「中学生の女の子が行方不明になってるって、村で噂になってきてる」
2024/07/11 18:00
10月7日(日)
(1)――僕の声は、明らかに動揺して震えていた。
2024/07/12 15:00
(2)――不安が、恐怖が、一気に僕の身体を支配する。
2024/07/12 15:30
(3)――「僕、急いで友達を助けに行かなきゃいけないんです」
2024/07/12 16:00
(4)――大切な友達のために、足を止める気はなかった。
2024/07/12 16:30
(5)――急げ、急げ、急げ。
2024/07/12 17:00
(6)――「……でたらめを言うな」
2024/07/12 17:30
(7)――僕の所為で、また、大切な人が死んでしまう。
2024/07/12 18:00
(8)――「だから行こう、アキ」
2024/07/12 18:30
閑話
「またね、アキ」
2024/07/13 17:00
10月26日(土)
(1)――この曲において、僕のお手本はいつだって神社で聴いた、あの歌声だった。
2024/07/13 17:30
(2)【完】――「アキと出会えて、本当に良かった」
2024/07/13 18:00