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乙女ゲーヒロイン、問題を抱える。

やっと更新出来た…!

大学生活って大変ですね…!

長らくお待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした!!

 嫌がらせをされている。


 そう気付き始めたのは最近だった。初めは些細な事で、文房具が無くなったり周りにゴミが落ちていたり。偶然かと思って特に気にしてもいなかったけど、これは流石に偶然では済まされない。


 目の前には、ゴミが大量に入った下足ロッカー。昨日は上履きに画鋲が入っていた。誰がどんな目的でこんな事をするのか分からないけど、私だって傷付く時は傷付くのだ。入学してから流れている噂もまだ消えていない。早く解決しないと、精神衛生上非常に良くない。


 ゴミを片付けてから教室に向かう。私が片付ける必要は無いけど、悪臭の原因になるから放置も出来ない。教室に着くと、机の上に何かが置かれていた。


小さくて平たい。袋に入っているみたいだけど、これは…




コンドーム。





 気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いっ!!!!

私に流れている、男好きだという噂。それを踏まえてのコレなんだろう。いっそ漫画とかで見る、落書きとか花瓶とかの方がマシ。こんな生々しい悪意を向けられるのは、流石に私でも耐えられない。


「咲良、どうした?そんなとこに突っ立って」

「鳳くん…おはよう」

 もう紅牙が登校する時間か。片付けしてたら意外に時間が経っていたらしい。

私の視線を辿った紅牙が目を見開いた。

「!おい、これ…」

「あ~、はは。誰だろうね?こんな悪ふざけ…」

「悪ふざけとかじゃ済まねぇだろこんなの!!」

教室に紅牙の怒鳴り声が響く。そうだよね、自分で言ってみて何だけど、私も悪ふざけとは思ってない。

 

 紅牙は不良だけど真っ直ぐな性格で、嫌がらせとかは卑怯だと言って許さない。『恋狂』でも、ハーレムルートで嫌がらせに合うヒロインを真っ先に庇ったのは紅牙だった。


「莉愛、どうしたんだ?」

「あ…葵…」

「…何だよこれ」

 続けて葵もこちらにやって来た。視界に机を捉えた葵の目は、いつもの明るさの代わりに静かな怒りを宿している。

「誰がこんな…!」

「葵、私は大丈夫だから落ち着いて」

葵がされたわけじゃないんだから、そんな辛そうな顔しなくても良いのに。



「やっぱ噂って本当なんじゃな〜い?」

教室の何処かからクスクスと笑う声が聞こえてくる。2人は怒っていて気付かなかったみたいだけど、女は地獄耳。聞きたくはなかったけどね。


ふと、秋葉と目が合った。が、気まずそうに逸らされる。中間テストが終わってから秋葉とは中々良い関係を築けていると思っていたけど、最近何だかぎこちないような。こっちの問題も解決しないと。



乙女ゲーヒロインって忙しくてやんなっちゃう!


 と、強がってみるけどあんまり余裕は無い感じ。数少ない友達と上手くいってない上に、嫌がらせのダブルパンチ。ヒロインだって人間なんです。悪い事が積み重なると、ずっと元気でもいられない。




 結局コンドームは紅牙が捨ててくれた。関係ないのに、と少し申し訳無く思うけど、正直助かった。誰が置いたかも分からない物なんて気持ち悪過ぎて触りたくなかったし。

「莉愛ちゃ~ん、日向くんから聞いたよ?最近ヤな事多いんだって?」

「…まぁ、否定はしませんけど」

昼休み。図書室に向かおうとしていた私は、廊下でエンカウントした仙李に絡まれていた。

「かわいそぉ~。俺が慰めてあげよっか?」

「結構です」

隙あらばそういう事ばっか。こっちは本気で悩んでるのに。

「私、図書室行くので」

脇をすり抜けようとした私の前を仙李が塞いだ。

「何しに行くの?」

「そりゃ、勉強しに…」

「お目当てのあの子はいないのに?」

 うぐ、痛い所を突かれた。

 

 中間テスト以来、秋葉と図書室で一緒に勉強する日々が続いた。向こうも段々心を許してきて、自惚れとかではなく、端から見れば私達は友達同士に映った事だろう。

 それなのに、最近ではそれも無くなった。秋葉は突然、図書室に来なくなった。昼休みになると何処かに行って、終わる頃に帰って来る。付いて行こうとした事もあったけど、

「付いて来ないで」

って冷たく言われてからは、私は図書室で1人寂しく過ごしている。

 あの時の秋葉の目。どこか焦ったような、だけど強い意志を感じさせる目。足が竦んだ。あんなにはっきりと拒絶された事は無かった。それ以上追及する事も出来ないまま、秋葉は去って行った。



「いいんです。ぼっちに戻っただけなので」

「寂しいねぇ。1人なら俺と食べようよ」

「結構です」

周りを見てみなさい。すれ違う女の子が恐ろしい目で私を睨んできてるでしょうが。

「と言うか何で知ってるんですか」

「いつも莉愛ちゃんの事見てるし♡」

最近は遊びに来なくなったと思っていたけど、来ない代わりに見られてた?ストーカーやないかい。


「水谷くん、また咲良さんに絡んでるんですか」

「違いま〜す!ただのお誘いで〜す!」

背後から聞こえた声は紫陽のものだった。どうやら生徒会室の前で話し込んでしまったらしく、助け舟を出しに来てくれたようだった。

「助かりました。ありがとうございます」

「ちょっとぉ莉愛ちゃん!?」

「あまり迷惑をかけるのはやめなさい」

「かいちょ〜ひどい!」

よよよ、と泣き真似をする仙李を他所に、紫陽はこちらに視線を向けた。

「咲良さん、生徒会の件は考えて頂けましたか?」

「まだ諦めてなかったんですか…」

紫陽は5月の選挙で無事、会長に就任出来た。あれから2ヶ月程経つというのに、未だ顔を合わせる度に勧誘してくる。

「学業に専念したいので。折角ですけど、すみません」

「…仕方ありませんね。一先ず諦めるとしましょう」


紫陽と別れ、図書室に向かって歩き出す。その後を何故か仙李が付いて来た。

「な~んか、莉愛ちゃんって俺にだけ冷たくない?俺だけ特別ってこと?」

「先輩って悩み無さそうで良いですよね」

そのポジティブシンキングが今だけは本当に羨ましい。もし私がこんなだったら、落ち込む事もなかったのに。

「悩みあるの?やっぱり嫌がらせとか?」

「……」

沈黙is肯定。だけど現状、最優先事項は秋葉との仲直りだ。嫌がらせに関しては何とも言えなくて、黙りこくってしまった。

「…オトモダチとの事もあるんでしょ」

「…そうですよ」

「そんなの放っとけばいいじゃん。他にいくらでも作れるよ?友達なんて」

若干冷ややかに仙李が吐き捨てる。去る者追わずな仙李は、きっと今までずっとそうして来たんだろう。


 確かにそうかもしれない。高校生活を楽しむだけだったら、友達に拘る必要なんてない。だけど…


「私は、秋葉がいい。」


強く、はっきりと。断言する。


「負けず嫌いで努力家で、嫌いって言いながら私を突き放さない」


真っ直ぐ仙李を見据える。


同情したからじゃない。悪役だからじゃない。


「秋葉だからいいんです。」


それは、譲れない。



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