乙女ゲーヒロイン、ライバルキャラと仲良くしたい。
「楓さん、おはよう!」
千里の道も一歩から。秋葉の親友になるには、まず挨拶から始めよう。そういう小さな積み重ねで段々と友情が芽生え…
「……」
芽生え…
あ、あれ〜?この間まで挨拶返してくれてたのに何で?急に無視するなんて事ある?塩対応通り越して水対応だよ。
「莉愛、おはよ!って…何でそんな落ち込んでるんだ?」
「あ、葵…おはよう。別に何でも…」
「?あ、そうだ、廊下に中間テストの結果貼り出されてるけど見たか?」
あれ、もう出てるのか。思ってたより早かったな~。
「ちょっと見てくる」
廊下に向かうと、結果の前に人だかりが出来ていた。私の結果は…
「1位…」
ここはゲーム通りか。まぁ勉強は頑張ったし、獲ってもおかしくない。問題はその下。
「秋葉は2位…」
成る程、朝のあの態度はこのせいか。惜しくも1位獲得ならず、イライラが出てしまった訳だ。努力した分、悔しさもひとしおだろうな。
このまま1位を獲り続けても、秋葉の神経を逆撫でするだけだ。それでも手を抜くつもりは無い。それ以外のアプローチをする。
「楓さん、ペア組も!」
「楓さん、移動教室行こ!」
「楓さん、あの動画見た?」
「楓さん、お昼一緒に…」
「あーしつこい!!何なのさっきから!!」
昼休み。秋葉とお昼を一緒にしようと声をかけたら、何か怒られた。
「今日随分と話し掛けて来るけど、何のつもり?2位の私を馬鹿にしに来たの?」
「そんな事しないよ。楓さんと仲良くなりたいなって」
2位だから馬鹿にするなんて有り得ない。だってその2位は、秋葉が努力した結果なんだから。
「私は仲良くするつもりなんて無い。じゃ、もう行くから。」
「待って!今日も図書室でしょ?」
「だったら何?」
「私も行く!」
「…は?」
図書室には私達の他に人はいなかった。席はいくらでもあったが、あえて秋葉の隣に座る。秋葉は思いっきり顔を顰めたが、移動する訳でもなくそのまま座っている。
「何で着いて来るの」
「私も勉強したいし」
中間テストが終わったからと気を抜くべからず。6月末には期末テストが私達を待っている。今は5月下旬、時間はあるように見えて一瞬で過ぎて行く。悠長にはしていられない。
一緒に弁当を食べる形になる。こっちから話し掛けるけど、秋葉は殆どスルー、偶に素っ気ない返事をするだけ。
「そう言えば、もうすぐ生徒会長選挙だね〜」
「……」
「生徒会は1年生でも入れるらしいよ」
「……」
「楓さん、生徒会似合いそうだな〜」
「何勝手に話進めてんの」
「え?いや、生徒会の楓さんもいいな~って」
「それはもう聞いたし」
食べ終わった秋葉が箸を置き、弁当を片付け始める。
「生徒会なら貴女が入れば良いじゃない」
「でも生徒会のバッジは楓さんの方が似合うと思うよ?」
生徒会役員には専用のバッジが配られる。赤い花に金の葉のバッジ。その色合いは私より秋葉によく似合うと思う。
「生徒会自体には貴女が相応しいんじゃない?勧誘されてるんだし」
「あれ?何で知って…」
「とにかく、生徒会なんて入ってる時間無いし、入る気も無いから」
「そっか…」
テキストを並べて、2人で勉強する。苦手教科は数学なので、今日はそこを重点的に。静かな図書室にペンと紙の音が響く。この空間はよく集中出来て好きだ。
チラッと秋葉の手元に視線を移す。秋葉の字はとても綺麗だ。女性らしさは残しつつ、達筆って感じがする。私の字も汚くはないけど、ちょっと丸っこい。
暫く手を動かしていると、5限の開始時刻が近くなっていた。
「楓さん、そろそろ時間だよ?教室戻ろ!」
「あぁ、もうそんな時間か…」
教室まで戻る最中、秋葉が口を開いた。
「咲良さんって…」
「うん?」
「意外と真面目なんだ」
「い、意外とって何!?そんな不真面目に見えるの!?」
ショック。
「いや、勉強とかしてないイメージだったから」
「えぇ…私、これでも1位獲る為に頑張ってるんだから!楓さんと一緒だよ!」
「え…」
中間テストでは確かに1位だったけど、秋葉との点差は僅かだった。あんまり気を抜けないのが現状だ。
「だから、次の期末も負けないよ!」
そう言って笑うと、秋葉はむっとして言い返してきた。
「次は負けないから」
放課後。帰宅途中の私は、猫ちゃんが路地裏に入って行くのを見かけた。私も後を追って路地裏に入る。
「あっお~い猫ちゃん、何処行くのかにゃ〜」
「あ?何してんだお前」
おっとぉ…。
そこにいたのは紅牙だった。猫ちゃんが奥にいるが、衝撃過ぎて追いかける事も出来ない。
「えっと…」
「どうせ猫追い回して来たんだろ。さっさと帰れ」
「ご、ご尤もで…」
紅牙の言う事は正しい。高校生にもなって猫を追い掛けて寄り道なんて、あんまり褒められた事じゃない。ここは帰った方が良い。だけど…
「だ、大丈夫…?」
喧嘩帰りなのか、紅牙はボロボロになって座り込んでいる。顔には殴られた跡があるし、シャツには誰の物かも分からない血が付いている。
「こん位大した事ねぇよ、失せろ」
「えっ、でも…」
「うぜぇな、とっとと…」
「猫ちゃん…」
「てめ、そこは俺の心配を…ってぇ」
殴られた頬が痛むのか、紅牙は顔を顰める。
「あ、やっぱ痛いんじゃん」
「うっせぇな…」
丁度良くそこにあった水道でハンカチを濡らし、紅牙に差し出す。
「冷やしとけば?」
「いらねぇ」
「おりゃ」
ビチャっとハンカチを顔に押し付け、猫ちゃんに意識を移す。この子この間の三毛ちゃんだ。可愛い〜。
「てめっ」
「見てて痛々しいからちゃんと手当てしてね。じゃ!」
よ~し、イベント回避成功〜!
実はこれ、紅牙ルートのイベントだったりする。ゲームでは保健委員の私が学校まで引っ張って行き、手当てするという内容だ。まさかこんなに早かったとは思って無かったけど。そのまま放置するのも何だったからハンカチは犠牲にしたけど、イベント回避できたからまぁ良し!
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