表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/33

乙女ゲーヒロイン、逃げ帰る。

 仙李が来て少し経った後、私は席を外した。外に出て自販機に向かい、琉依に電話を掛ける。事情を説明し、しっかり怒られてから電話を切った。

「お、いたいた莉愛ちゃ〜ん」

突如背後から聞こえた声に驚く。

「水谷先輩…びっくりさせないでください」

「はは、ごめんって」

 私はこの人がどうも苦手だ。ゲームをプレイしていた時は格好良いと思ってたけど、初対面がアレだったし、今では良い印象が無い。毎日来られるのは良い迷惑だ。

「…莉愛ちゃんってさぁ」

「はい」

「やっぱり男好きなの?」

「…は?」

何故そうなる。

「今日もそうだけど、いつも男子に囲まれてるよね~」

「今日は只の偶然ですよ。いつものは…私だって不本意なんです」

「でも…会長とか、日向くんだっけ?あの子とも仲良いよね」

「花野先輩は生徒会に勧誘してくるだけだし、葵とは幼馴染みなので」

まぁ疎遠気味だったけど。

「ほんとに…狙ってないのかなぁ?」

「狙ってないです。彼氏いるのに何で他の男狙わなきゃなんないんですか」

「ふ~ん…」

いい加減しつこい。違うって言ってるし、もし私が男好きだったとしても仙李には関係ない。

「あの2人と普通に仲良くしてるならさ、俺とも仲良くしてよ」

「嫌です」

「え~何で?あの時の事まだ怒ってる?ごめんって〜」

「毎日来るのやめたら考えます。女子の目が怖いんですよ」

「ん~、やだ♡」

「はぁ、もう戻りますよ。…あ、そうだ先輩」

「ん?なになに?」

「私が男好きって噂、誰から聞いたんですか?」

噂の出所について何か知れたら良いんだけど。

「俺は1年女子から聞いたよ~。その子達も他の子から聞いたらしいけど」

「そうですか…ありがとうございます」

結局大した情報は無しか。何とかしないと、友達出来ないんだよな~。

 仙李と館内に戻る。そこからは普通の勉強会だった。仙李は勉強道具なんて持ってきていなかったので、図書館の本を読んでいた。読書なんてしなさそうなのに、本に向き合う横顔はしっかりイケメン。意外に様になっているのは、流石攻略対象と言った所か。

 


 

 丁度良い時間になり、何となく解散となった。紫陽はバスで、仙李は何処かに乗り捨てて来た自転車を回収してから帰るらしい。私と葵は自転車で来ていたので、途中まで一緒に帰る。葵と2人きりになるのは随分と久し振りな気がする。

 2人で海沿いを走る。夕陽が海を朱に染めていて、何だかロマンチックだ。

葵が自転車を停める。

「莉愛、何か最近仲良い男子多いよな」

「そう?」

「だって、紫陽先輩とか水谷先輩とかよく話しかけて来てるし」

「水谷先輩とは仲良くないけど…」

「そうか?仲良いと思うけど」

「良くない」

葵は食い気味に否定する私に若干引く。

「お、おお…そうか。あ、それにさ、鳳ともよく話してるよな」

「まぁ隣の席だし、お互い友達少ないからさ〜」

嘘、ちょっと見栄張った。同学年には葵と紅牙以外に仲良い人いない。少ないと言うよりいないの方が正しいかも。

「そうなのか?鳳は兎も角、莉愛ならできそうだけど」

「う~ん、なかなかねぇ…はは…」

誰のせいだと。

「…莉愛、あのさ」

「なぁに?」

 葵の方を振り向くと、その後ろにオレンジの影が見えた。自転車に乗ってこちらに向かって来ている。

一応ペダルに掛けた足に力を入れる。

「俺達…昔は仲良かったよな。家だって近かったし、よく遊んでた」

「そうだね」

あの影、何やら見覚えがあるような。というかさっきまで一緒にいたような。

「でもいつの間にか疎遠になって、高校入ってからまた話すようになって…」

「うん…」

いや、気の所為。こっちに手を振っているけど気の所為。髪がオレンジに見えるのも夕陽のせい。

「でも莉愛は、他の男子とも同じように話してる。俺さ…何かそれが嫌で…」

「そっか〜」

あれが仙李のはずがない。他人の空似とかだ。そうに違いない。そうであってくれ。

「俺、それが何なのか考えて…気付いたんだ」

「うんうん」

「俺…莉愛の事、ずっと好…」

「…愛ちゃ~ん!!」

 葵が何か言っていたが、最後まで聞き終える前にペダルをぐっと踏む。そしてそのまま全力で漕ぎ出す。まるで競輪のように曲がり角をドリフトして逃げる。


「え、莉愛!?」

「あ~、莉愛ちゃん行ってっちゃった」

「水谷先輩!!」

「一緒に帰りたかったのに…残念」


 


 全力で逃げ帰ると、家の前に琉依がいた。綺麗なお顔が怒りに歪んでいるけれども、今はそれすら安心できる。途轍もなく息切れしてる私の様子に、琉依の顔が怒りから困惑に変わっていく。

「…何、どしたの?」

「はぁ、はぁ…。いや、ちょっと…ゲホッ」

咳き込む私の背中を擦ってくれる。私の彼氏、優しい。



 取り敢えず私の部屋に入り、事情を説明する。全てを聞き終わった琉依は、何とも言えない顔をしている。

「あー、何と言うか…お疲れ」

「ほんとに…疲れた…」

まさか仙李が来るなんて。偶然にしろ追いかけて来たにしろ、一緒に帰るなんて御免だ。

「あれ、琉依は何で此処に?」

「説教」

ですよね~。




「男3女1はマズいって。何かあったらどうすんの。特に仙李とか」

「はい…ごめんなさい…」

ちゃんと正座してありがたーいお説教を聞く。

「偶然なのは分かるけどさ…もうちょっと気ぃつけよ、狙われてるかもしれないし。特に仙李とか、前科あるじゃん」

また仙李だ。琉依は仙李が嫌いらしい。

「でも周りに人いたし…。仙李とも、2人きりでも大丈夫だったよ?」

「は?……大丈夫、ねぇ」

 突然、視界に天井と琉依の顔が映る。背中には床の感触。

…私は琉依に押し倒されていた。

「こんな事されても大丈夫だって言えるか?」

 琉依が冷たい目で見下ろしてくる。腕は押さえ付けられていて、振り解こうとしてもびくともしない。

 うわ、男の子ってやっぱり力強いな。こうなったら抵抗すら出来ない。…成る程、琉依の言いたい事が分かった気がする。確かに迂闊だったかも。

「琉依…分かった、今度から気をつけるから離して」

 無駄に綺麗な顔が近くて心臓が保たない。ギャルゲーの主人公って皆こうなの?

「…分かったなら」

ガチャ

「莉愛〜今日のよ、る…」

突然ドアが開き、お母さんが顔を出した。全員固まり、暫く沈黙が続く。

「…あらやだ、お邪魔しちゃった~」

「ちちち違うんです、これは」

「ごめんなさいねぇ、どうぞ続けて?」

そう言ってお母さんはドアを閉め、私と琉依が取り残された。

「…あ~、俺も…帰るわ…」

「そ、そっか…じゃあね…」


その日はそのまま琉依を見送った。

「あら、琉依くんとはもう良いの?お母さん気にしないのに」

「そういうんじゃないから!そこまで行ってないから!!」

…今はまだ。



感想、ブクマ、評価大変励みになりますのでお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ