ギャルゲ主人公、勉強会をする。
ゴールデンウィーク明け。我々生徒一同は深刻な問題に直面していた。そう、中間テストである。5教科を2日に分けて行われる中間テストは、来週に迫ってきていた。
「橘、助けてくれ!」
終わらぬ課題に嘆く者がここにも1人。
「まぁ…頑張れ根岸!」
「見捨てないでくれぇ!!」
そんな事言われましてもね。
俺の課題はこのまま行けば余裕で終わる。実はちゃんとコツコツ進めていた。真面目くんなので。
「琉依さん、もうすぐ中間テストですわね!勉強はしてますの?」
「…シテマスヨ」
課題はな。
「やっぱり1位を狙うの?」
「まぁ、取れたら良いな〜とは思ってますけど」
いつものように俺達は放課後に集まっていた。世間話をする内に、話題はテストへと移っていった。
「…甘い、甘いですわ!その心がけ、このグミくらい甘いですわよ!」
「は、はぁ…」
そりゃ甘いでしょうよ。紫乃チョイスの宇治金時味なんだから。
「その程度の熱意で1位なんて獲れませんわよ!!狙うならもっと、完膚無きまでの1位を目指さなければ!!」
何故か椿は燃え上がっていた。俺を差し置いて。
「そう言う貴女は1位獲ったこと無いじゃない。」
「紫乃がいつも1位の座を譲らないからじゃありませんの!そのせいで私はいつも2位ですわ!!」
この2人は成績面ではライバルらしい。紫乃はゲームでも成績トップとは言われていたが、椿も次席だったとは。椿の成績は良いとしか言われて無かったから、新たな発見だ。
「いやでも俺は別に1位じゃなくても…」
「いいえ!目指して下さいまし!!1位というのは、そんな適当な態度じゃなくて努力と苦労の末に掴むものですわ〜!!!」
何だこの人。
「こうなったら、勉強会を開きますわよ!!適当なんて許せませんわ!!真面目に努力した上で1位を獲る姿を、私に見せて下さいまし〜!!!」
只の八つ当たりじゃねぇか!!!
土曜日。俺は自宅で紫乃と椿を待っていた。理由は単純、勉強会の場所決めじゃんけんで負けたからである。
ピンポーン
来た!
「はーい」
玄関のドアを開けると、紫乃と椿が立っていた。紫乃は清楚系の服を着ていて、椿はまぁ、うん。何と言うか、お嬢様って感じの服だ。
「お邪魔します」
「お邪魔しますわ!」
「どーぞー」
すると階段から千百合が駆け下りてきた。何やら怖い顔をしている。
「お兄ちゃんその人達誰?」
「学校の先輩。勉強会するんだよ」
「女の人しかいないじゃん!そんなのダメ!!」
「ダメってなんだよ。ほら退いた退いた」
千百合はぐっと言葉を詰まらせ、部屋に駆け戻った。
「今の方はどなたですの?」
「妹です」
「随分元気な子ね」
「すみません…生意気な奴で…」
俺は2人を部屋に案内し、課題を広げた。
「課題はどの位残っているの?」
「あと国語だけですね、先輩達は?」
「私達はもう終わってるわ」
えっ早。
「だったら今日終わらせますわよ!!分からない所があれば先輩である私に遠慮なく聞いて下さいまし!」
そう言って勉強を始めようとすると、千百合が部屋に入って来た。手には勉強道具が握られている。
「私も勉強する!」
「えぇ…そんな急に…。先輩に迷惑だろ」
「あら、良いじゃない。私は別に構わないわよ」
「私も構いませんわ!琉依さんのついでに教えて差し上げます!」
千百合は返事も待たずに空いている場所に座り、課題を広げた。
「自己紹介した方がいいわね。私は葉華高校2年、藤堂紫乃。よろしく。」
「同じく2年、冬園椿!よろしくお願いしますわ!」
「…橘千百合です。よろしく」
なんて愛想の無い自己紹介。
「じゃあ始めますか」
「お兄ちゃ〜ん、これどうやるの?」
「これは…」
「これはこの公式を使うんですわ!」
と割り込んで答える椿。
「お兄ちゃんに聞いたんだけど…」
「別に良いだろ。ほら、進めるぞ」
「琉依さんは分からない所はありまして?」
「今の所無いですね」
「じゃあ、苦手教科とかは?お2人ともありまして?私が教えて差し上げますわよ?」
「私は数学ですけど…」
「俺は特に…」
さっきから椿が執拗に教えようとしてくる。只の教えたがりなのか、理由が有るのか。
「椿、さっきからやけに教えようとするけど、どうして?」
「他人に教えた方が身に付くからですわ」
「それなら私にまで教える必要あるんですか?中学生の勉強なのに」
千百合が冷静にツッコむ。
「あ…。」
確かに今更中学生の勉強まで定着させる必要無いよな。
「まぁ良いですわ!ついでですもの!」
「だから頼んでないって…」
数十分後。
「ふぅ~…集中が切れて来ましたわね…」
「そうね…」
さっきから全体的に手の進みが遅くなってきた。手が止まっていないのは紫乃くらいだ。
「こういう時は…糖分補給ですわ!!」
そう言って椿が取り出したのは、コンビニの袋。
…もしかして。
「途中で紫乃と買って来ましたの!」
やっぱりかあああああ!!!
「え…何これ…」
千百合が手にしたのはラムネだ。…緑茶味の。
「糖分は必要でしょう?」
紫乃は平然と答えるが、千百合はかつて無い程引いている。
「糖分とかじゃなくない?これ…」
「こういうのもありますわよ!」
椿が取り出したのはお汁粉風味のポテトチップス。最早糖分とか関係ねぇじゃねぇか。
「お兄ちゃん…この人達…」
「何も言うな…」
ピンポーン
「お兄ちゃん出て来て」
「はいはい」
玄関のドアを開けると、勉強道具を持った瑞季が立っていた。
「どうせ課題残してるでしょ?見に来てやったわ!」
「いや…遠慮しとく…」
あのメンツに瑞季が加わると絶対に面倒な事になる。
「…誰か来てるの?」
玄関先に置いてあった紫乃と椿の靴を見つけ、瑞季が勘ぐる。
「あー…」
「誰が来てるの?女とかじゃないでしょうね」
「先輩だよ」
「先輩?仲良い先輩なんていたの?私知らないんだけど」
「今勉強会してんだよ。だから瑞季はもう帰…」
いや、これはチャンスか?あのゲテモノ菓子を消費するなら犠牲者…もとい人手は多い方が良い。少しでも俺の食べる分を減らしたい。
「やっぱり上がってけ」
「え…何よ急に」
「いいから。どうしてもお前が必要なんだ」
「ま、まぁそこまで言うなら上がってやらなくもないけど?」
道連れゲット。
「何よこの味…」
瑞季が具合悪そうに呟く。原因は言わずもがな。
「琉依…アンタ、騙したわね…」
「悪いな、お前が必要だったんだよ…道連れとして。」
ギッと睨まれるが、ゲテモノ菓子よりかは怖くない。
「…嫌なら帰ったらどうですか〜?私達は楽しく勉強会するので…」
千百合が瑞季を煽るが、その声に元気はない。瑞季が視線を紫乃と椿に移す。2人は平気な顔で食べ続けている。
「…食べればいいんでしょ!!」
既に勉強会は関係なくなってしまっている。
ギャアギャア騒ぎながら、嵐の様な勉強会は過ぎ去っていった…。
しかし俺の嵐はこれからである。
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