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乙女ゲーヒロイン、攻略対象と仲良くなる。

 あれから少し経った頃。私は友達作りに難航していた。話かけてくるのは男子ばかり。クラスの女子とは何度か話したけれど、とても友達とは言えない関係に留まっている。


 紅牙には話しかけているけど、時間があんまり無い。紅牙は朝遅くに登校し、昼は何処かに行き、放課後はさっさと帰ってしまう。話す時間が授業中くらいしかない。

 紅牙は不良の割には授業にしっかり出ている。理由は分からないけど、感心な事だ。

 

 秋葉には1番話しかけている。いつも冷たい反応しか返してこないけど、秋葉の孤独が紛れるならそれでも良い。できれば仲良くなりたいけど。

 

 秋葉は人生を孤独に過ごしてきた子だ。両親は仕事人間で、秋葉に興味を持たなかった。元々少しきつい性格をしていた事もあって、友達もできなかった。そんな秋葉は、得意な勉強しか自分に価値は無いと思うようになっていった。

  それなのに、ヒロインに成績で負けた。自信があった新入生代表の座だって奪われた。周りから愛される女の子に。自分のたった1つの居場所を奪われたと、秋葉はヒロインを憎むようになる。

 

 ここまではゲームと同じだろう。問題はここからだ。秋葉は様々な嫌がらせを繰り返し、退学となる。現実でそうならない為に、何が出来るかという事だ。

 退学を免れる方法ならいくらでもある。要は、嫌がらせが露見しなければ良い。隠蔽してしまえば退学にはならない。しかし、それでは秋葉が抱える苦しみの根本的な解決にはならない。嫌がらせされるのも嫌だし。

 

 前世の私と秋葉は境遇が似ている。独りぼっちの寂しさだって、それでどんなに心が弱くなるかだって、よく知ってる。だからこそ、秋葉には秋葉としての人生で幸せになって欲しい。一度死ななければ幸せにならなかった私と違って。


 秋葉を1人にしない為に、幸せになる手助けをする為に、友達になりたいのだ。




 などと大層な事を言ってみるけど、友達の1人もできていないのが現状。男好きなんて噂が広まったせいもあってか、女子には避けられがち。この噂は早い内に解決したい。けれども、もっと先に解決しないといけない課題がある。それは…

「莉愛ちゃ~ん、遊びに来ちゃった〜」

 この男である。

「水谷先輩、次移動教室なのでもう行きますね」

 あれからというもの、仙李は事ある毎に教室に来るようになった。昼は女子に大人気だから来ないけど、朝早くに来たり放課後に来たり、今のように休み時間に来たりしては1人で勝手に話していく。男好きの噂を助長するばかりだった。






 午前の授業が終わり、昼休みになった。秋葉を誘おうと近付くと、丁度何処かへ向かおうとしていた。

「楓さん、一緒に食べよ?」

「ごめんなさい、図書室で勉強するから。…あぁ、咲良さんには縁のない話だったね」

 そう吐き捨てて秋葉は教室を出ていく。

 随分嫌われてるなぁ。仕方無いのかもしれないけど。しかしめげない。乙女ゲーヒロインは諦めが悪いのだ。


 そうは言ってもハッキリ断られてしまったので今日は諦めることにする。席に戻るとまた男子に囲まれそうなので教室を出る。向かう先は中庭。眺めは良いのに人がいない。落ち着いて食べられるスポットなので、最近は大体ここで食べていた。

 ベンチに座り、弁当を広げる。弁当はいつも自分の手作り。

 自分の事は自分でするようにしてる。お父さんもお母さんも忙しくしてるし。前世と比べて寂しくないのは、ちゃんと大事にされてるから。

 それに、料理は回数をこなせば上手くなる。将来の事を考えると、上手ければ上手いほど良いと思う。琉依は料理あんまりしないって言ってたし。


 食べ終わって片付けていると、目の前を何かが横切った。視線を向けるとそこには、伸びをしている三毛猫が。猫派大歓喜である。

「猫ちゃん、可愛いでちゅね〜!どっから来たのかにゃ~?」

思わず近寄ってしゃがみ込む。人慣れしているのか、三毛ちゃんは逃げずに座った。

 その辺に生えていた猫じゃらしを千切り、遊び始める。猫じゃらしを目の前でぴょこぴょこさせると、三毛ちゃんも顔をぴょこぴょこさせる。猫じゃらしに飛びつき、仰向けに寝っ転がる。猫だけに。

「んはぁ~可愛いにゃあ〜」

ガサッ

 バッと勢いよく後ろを振り向く。そこから出て来たのは…

「おいお前が動くからバレたじゃねぇか!」

「動いたのはそちらでは?」

紅牙と紫陽。

「…どっから見てました?」

「「猫ちゃん、可愛いでちゅね〜」」

「いやああああ!」






 消えたい。猛烈に消えたい。

あの猫撫で声を他人に聞かれていたのは軽く生き恥だ。

「いやほら、猫可愛いですよね。私も好きですよ…」

「…まぁ、気にすんなって」

何とか慰めようとしてくる2人の態度に余計心が抉られる。何も分からないという顔をしている三毛ちゃんも今は憎たらしい。


「…2人は何でここにいたんですか?」

 取り敢えず冷静さを取り戻そうと話を変える。決して冷静ではないけど。

「彼が余りにも制服を着崩し過ぎていたもので。殴り合いの喧嘩をしていたという話も聞いていましたし、注意をしていました。」

「うっぜぇ…ほっとけよ」

 確かに着崩し過ぎではあると思う。ブレザーどころかカッターシャツも前全部開けてるし。黒Tシャツ見えてる。きっちり制服着てる紫陽は許容できないだろうなぁ。

「咲良さんは何故ここに?」

「お昼ここで食べてました」

「1人でか?」

「うん」

そんな悲しい目で見ないで。


「そう言えば咲良さん、生徒会入りは考えて頂けましたか?もうすぐ5月ですが」

「あ?ンなもん誘われてんのかお前」

そう言えばそうだった。すっかり忘れてたわ。どう断ろう。

「やめとけ。隣の奴までうるせぇのは勘弁だぞ。ただでさえ五月蝿ぇのに」

「おや?隣の席なんですか。それなら尚更入って貰いたいですね。」

正反対の事言ってる。ちょっと面白い。

「ちょっと待って、ただでさえ五月蝿い?それは酷くない?こっちは仲良くなろうと思って話しかけてるのに」

「それが五月蝿ぇってんだよアホ。隙あらば話しかけてきやがって」

「だって鳳くん友達いないし」

「余計なお世話だっつの」

「私も友達いないし」

「…まぁ、あれだ。元気出せよ」

「友達なら私がなりますよ。ですのでどうぞ生徒会に!」

可哀想な物を見る目をする紅牙に、生徒会勧誘botと化した紫陽。何だかカオスな空間の中、三毛ちゃんだけはのんびりと毛づくろいしていた。




 翌日から紅牙は話してくれるようになったし、紫陽は会う度に声をかけてくれるようになった。

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