乙女ゲーヒロイン、生徒会長に会う。
しばらく莉愛視点続くかもです
話は入学式まで遡る…
「え~っと、講堂は…この先を右?」
私は五色花高校をさまよっていた。現在時刻は8時ちょっと前。新入生の登校時間には大分早い時間に何故校内にいるのかと言うと…
「代表挨拶とか…ヤバい、緊張してきた…」
という訳である。式の流れ確認の為、早い時間に講堂に向かう必要があった。
「あ!ここかな?」
歩いていると大きく荘厳な建物を発見した。地図を見ると場所は合っているし、扉にも式場と書かれた紙が貼ってある。
少し重たい扉を開けると、沢山の椅子が並べられており、奥のステージ付近には何人かが集まっている。その内の1人がこちらに気付いた。
「あ、彼女かな?お~い、こっちこっち」
呼ばれた方に向かうと、簡単な挨拶から流れ確認が始まった。
「君が新入生代表の子?」
「はい、咲良莉愛です。宜しくお願いします。」
「うん、宜しく。じゃあ流れの説明始めるけど…」
説明を受けていると、ステージ裏から1人の男子生徒が出て来た。
「それで、生徒会長と握手を…おや?花野君、丁度良かった。」
「先生、この子が新入生代表ですか?」
あぁ、この声…ゲームで何度も聞いた。冷たい印象を与える、よく通る声。それでもヒロインにだけは、甘く優しく囁いていたっけ。
ぱっと顔を上げる。深い緑の髪。かっちりと着た制服。眼鏡のレンズ越しに向けられる、冷たいアメジストの瞳。
…花野紫陽が、そこに立っていた。
「僕は花野紫陽。生徒会長です。よろしく。」
「咲良莉愛です。よろしくお願いします」
ひゃああぁ〜!生紫陽だ!ゲームと一緒!すご〜!やっぱりテンション上がる〜!
「2人共、一回式の流れ通してみていい?」
先生の指示に従い、一通り動いてみる。広い講堂に靴の音が響いて、歩くだけでも緊張する。
「よし、じゃあ解散!一旦教室戻って、あとは練習通りに」
「はい!」
教室まで戻ろうとする。が、道に自信がない。地図を取り出して眺めるが、少し入り組んでいるので分かり辛い。
ゲームじゃ移動は選択肢から選ぶシステムだったからな〜。マップとかあれば絶対覚えてたけど、無かったし。
地図片手に歩き出そうとすると、紫陽に声をかけられた。
「教室まで送りましょうか?」
「はい!ありがとうございます!」
こういうことサラッとするんだから。流石は乙女ゲームの攻略対象様だ。
教室まで2人並んで歩く。まだ校内に人は少なく、2人分の足音だけが廊下に響いている。
ヤバい、また緊張してきた。練習なんて読み上げてすら無かったのに緊張したんだから、本番なんてもっとするに決まってるじゃん。隣に紫陽が歩いてるのも、なんか変な感じ。
「…あの」
「はいっ!」
ちょっと声裏返っちゃった。恥ずかしい。
「…ふっ、随分緊張しているようですね」
「は、はい…それはもう」
「大丈夫ですよ。新入生なんて、多少の失敗は愛嬌の内です」
励まそうとしてくれてる…。
「そ…そうでしょうかね…?」
ここの会話はゲームで描写されてない。『世間話に花を咲かせた』としか説明されていなかった。よってここは完全なアドリブ。未だに緊張が解れていない私は、何とも気の利かない返事をしてしまった。
「そうです。失敗というものは、成長の機会です。許される内にしておかなければ。」
「そ、それは…失敗しろって事ですか?」
「いえ、そんなつもりでは…失礼しました」
あぁ、早速失敗した。優しさが空回りしたみたいな空気にしてしまった。緊張で変な事ばっかり言ってしまう。
「あの、こっちこそごめんなさい!折角励ましてもらったのに…失礼な事を…」
「いえ、構いませんよ。これも失敗の内です」
「…じゃあ、成長できたって事ですね?」
「ふふ…そうなりますね」
あれ、意外に話しやすい。紫陽は初めは近寄り難いって設定だったのに…。私が原作よりも緊張してたからかな?リラックスさせようと優しめなのかも。
「そういえば、咲良さんは何組の何番ですか?」
「3組14番です!」
「そうですか、それなら丁度講堂の真ん中を通るので注目されますね」
前言撤回。やっぱり優しくなかったかも。
「じゃあ、生徒会長選挙は5月にあるんですね」
「えぇ。選挙は年に2回。5月と11月です。私は去年の11月から会長を務めています」
「次も出るんですか?」
「出ますよ。できれば丸1年務めてみたいと思いまして」
あれから生徒会についての話を聞いていた。ゲームでも出て来たので知ってはいるが、世間話の一環だ。
「すごいですね!学校の為にそんなに頑張れるなんて」
「では貴女も頑張ってみます?」
「え?」
「5月の選挙が終わると生徒会役員の募集が始まります。1年生も参加出来るので、どうです?」
「いやぁ…それは…」
生徒会入りすると、紫陽ルートが開放される。ゲームの強制力が無いとも限らない。ストーリー上紫陽が生徒会長選挙に勝つ事は分かっているので、恋愛フラグを折るには生徒会入りしない事がベストだ。彼氏がいる身としては、断っておくのが無難だろう。
「遠慮しておきます…」
「おや、何故です?実力は充分にあると思いますが」
五色花は進学校だ。その新入生代表になれるという事は、私も非常に優秀という事。前世でも成績は良かったし、乙女ゲームのヒロインはハイスペックなので、生徒会でもやっていけるだろう。しかしそういう問題ではない。
「う~んと…」
答えあぐねている内に教室に着いた。まだ人はあまりいないようだ。
「私が当選した際には、生徒会入り、考えてくださいね」
そう言い残して紫陽は教室に戻って行った。
どうしよう。こんな展開ゲームには無かった。生徒会の勧誘は入学式が終わってからだったのに。
…次会う時までに言い訳考えておこう。
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