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第七話 ジカラオ


サテラが「驚きすぎでしょ」と言いながら俺の座っていたソファの隣に腰掛ける。

10秒の静寂が訪れる。

俺は思い出した事を話し出す。

「そういえば空の国って言ってたけど昨日までいた俺たちの世界というか……国は何なんだ?」

空の国もあれば他の国もあるだろうという俺の予想である。

なんだ?水の国とかかな……?

また俺は予想をしてしまった。これはもう異世界にきた以上仕方のない行動なのかもしれない。

「地の国"ジカラオ"」

ほら外れた……

ジカラオ?地面っぽい名前で丁度地の国って感じのネーミングだな。

「ジカラオは酷い被害を受けていたの。」

サテラはそう続ける。

恐らく水城からの支配だろう……

水城の王は余程酷い奴なんだな。

「やば……また予想しちまったよ。その被害ってやっぱり水城からの?」

「えぇ……その通り。王は"権力"を使って民を苦しめた」

ふーん……権力ねぇ。

俺はそう思いながらガラス越しを見る。

やっぱり黒い雲が辺りを覆って何も見えねぇ……

サテラがその俺の様子を見ながら続ける。

「100年前から続く支配よ」

「100年って……寿命は?死ぬんじゃねぇの?」

そう俺が言うとサテラは下を向く。

100年間の支配って想像もつかねぇな。

「王の300年の寿命……どうすることもできないの。」

いきなり口を開いたサテラに俺は驚く。

へ……?さ、三百!?聞き間違えたかな……

「おいおい冗談だろ……300年ってもう人間じゃないだろそれ」

「そうね……もう人間辞めてると言ってもおかしくないかもしれない……」

そう言うとサテラは頭を抱えて痛そうにし始めた。

「おいおい大丈夫か?なんかすまねぇ……嫌なこと思い出させたみたいだ。」

俺は咄嗟にサテラに声をかけた。

「いえ……いいの。もう寝ることにするわ」

そう弱々しく言うとサテラはふらついた足で自室に戻る。

なんか……とんでもない話を聞いてさらに眠れなくなったわ。

くそ……


そのあとの俺は最悪なことに結局眠れなかった。


翌朝。

「起きなさいよ秋橋!」

耳奥に聞き馴染みのある声が響いて俺は目が覚めたようだ。

なんだよ……まだ眠いってのに。

「今何時くらいだ?」

それを聞いたサテラが腕時計を俺に見せてくれた。

丁度正午かよ……寝過ぎたわ。というかこの世界の時計は現実と同じなのか。

「仕方ない……寝れなかったしな」

こう、昼近くに起きると1日損した気分になるから嫌なもんだが……いやまてよ……別に異世界だしいっか。

当たり前と言ったら当たり前のことに気づき俺はほっと胸を撫で下ろす。

その様子を見て何かを察したような顔でサテラが答える。

「寝坊よ。罰としてお昼ご飯抜きだからね!」

「お前はお母さんか!」

思わずツッコミを入れる俺。

昼ご飯抜き!?無理だって……

そんな俺の想いが顔に出ていたのかサテラはそれを見て答える。

「流石にお昼ご飯はあるけど早く起きなさいよ。一応秋橋って高校生なんだから……なんで私が起こしてるのよ」

サテラがツンとして答える。

一応ってのが気になったが……

確かにそうだな。サテラには悪いことしたぜ。

「悪い悪い。今日だけは許してヒヤシンス。」

「何それ……」

サテラはそう言いながら「まぁ許してあげるわ」と答える。

そしてまたもや中央部に俺は行き、大きなテーブルに乗せられた食材を見る。

「あ……」

その日秋橋は思い出した。水界の料理が常軌を逸している事に。

テーブルの上にあったのは緑色のご飯の上に盛られた青いカレーのような液体だ。

その隣には虹色の魚の刺身がある。

その隣にはりんごにそっくりな形をした白と黒のシマシマの模様の……恐らく果物がある。

「おわぁぁ!?腐ってる!?」

その食べ物とは思いたくない料理を見て俺は思わず叫んだ。

「秋橋さんは苦手なんですか?ブルガラ。」

そう言いながら紫色の恐らく果物を食べているカプセル。ブルガラ?

何その絶妙に現実世界にありそうな名前。と思いながら俺は質問する。

「おう、苦手だな。っていうかブルガラって何?」

「これですよ。この黒と白の模様をした果物」

そのカプセルが指を差した先を見るとりんごそっくりな形のそれがある。

さっき見たこれか……

「食べます?」

カプセルがお皿に分けられたブルガラ(紫の物体)をこちらに。この紫のやつブルガラだったのか。

腹減ってるし食べるか。

こんなもの食べて大丈夫か。そう思うが前のミリアスのご飯は美味しかったからセーフだろう。

「うん……美味いな!」

見た目は完全アウトだが、美味しい。

ハチミツのような味が仄かにするバナナのような味がした。


なんて呑気なことを思ったその時だった。

船が上下に揺れ動く感覚がした。それも徐々に津波のように大きくなって行く……

異変を感じ取ったのかサテラは動揺して答える。

「何者かに襲われているわ……!!」

マジかよ……寝不足だってのに辞めてくれよ。

俺は目をこすりながらそう激しく思った。

そしてカプセルが察したように口を開いた。

「これはアフィスアの連中の仕業ですよ!間違いない!」

「なんでそう言い切れる?」

俺は咄嗟のカプセルに疑問をかける。

サテラはその俺の発言に答えた。てかカプセルに聞いたんだが……

「そんなの決まってるわ。こんな上空の雲で視界が悪い車を狙えるのなんてアフィスア以外にいないのよ。」

あっさり論破された俺だった。


その時、ガラスが割れる音が中央部に響く。

驚く俺たちの前に現れたのは……

「あらぁ……見つけちゃった♡」

そこにいたのは黒服の男ではなく、黒い巫女服の女の子だった。大きな鎌かまを持っている。怖い。

あれ?どこかで見た覚えがある……

そんなことを思うのも束の間、続けて女の子が話し出す。

「さっそく、偵察しちゃいます♡」

「何が偵察だよ。気色悪りぃ!」

俺は唐突のキモい発言に思いっきり反応する。

その時だった。脳裏に聞き覚えのある高い女の子の声が聞こえた。

(あの……驚くと思うのですが……)

それはあの黒服の男に殺された時見た、女神っぽい女の子だった。

(あの人の正体は私です。正確にはドッペルゲンガーというか偽物というか……とにかく私です)

は!?その唐突な告白に俺は脳が混乱する。

そして目の前をふと見るとガラスを割った張本人、鎌持ち巫女(勝手に命名)が襲ってきていた!!

「秋橋!伏せて!!」

サテラの咄嗟の声に俺は思わずしゃがみ込む。

RPGゲームのSEのようなリアリティのない音が頭上で鳴る。

サテラの魔法と鎌持ち巫女が衝突したんだな……

にしてもなんだよこの音ふざけた世界だぜ。全く。

(あの……自分で言っちゃうのも変ですが、私ほどほどに強いんですよね)

そういや事情は理解不能だがあの鎌持ち巫女はこの女の子と同一人物……だったな!

てか強いのか……そりゃ人を死から甦らせるなんて芸当は強者だよな。

俺の頭はいきなりのバトルスタートによりフル回転していた。目の前ではサテラと星型魔法とカプセルの魔剣飛ばしが火花を出しぶつかり合っている。

「あらぁ……♡私は秋橋くんに用があるのになぁ」

鎌持ち巫女はペロリと舌を出し鎌を舐める。


その次の瞬間。

俺は剣を構えていた。というより剣と鎌がぶつかり合っている!

「はぁ!?なんだよいきなり!!」

「やるわねぇ♡ケイスの奴に教えなくちゃ♡秋橋くんは瞬発力抜群ってね!」

その鎌巫女の発言の次の瞬間思いっきり俺は吹き飛ばされる。

いってぇ……てかケイスって誰だよ。

俺の脳裏に声が響く。

(危なかった……私が強制的に勇者の力……というかほとんど闇の力ですけど……発動させました)

この子ほんと凄いな。

そう思った次にはサテラとカプセルの心配する声が耳に聞こえた。

「秋橋!」

「秋橋さん!!」

俺はそれに大丈夫ってことで手でグットを見せた。

サテラとカプセルの安心した顔が見える。

しかし次の瞬間の声を聞いて絶望する俺たち三人。

「バイ……。なに遊んでんだよ。さっさとゴミはゴミ箱へ捨てるって約束したろ?」

そう……黒服の男だった。……てかバイって名前は色々とヤバいぜ。


〜第八話に続く〜


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