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第六話 空の旅


ミリアスで紫の刺身やら、ピンクの酢飯などの現実じゃ「これ絶対腐ってるだろ……」って色をした海鮮料理の食事を終えた俺達が向かう先は空。

青空だった。


「さて……じゃあ龍車で空の旅と行きましょう」

俺の予想に反してカプセルが啖呵をそう取った。

空の旅……?車なのに空?

「いやちょっとまてーい!!龍車って飛行機なのか!?」

てっきり道路を行くもんだとばかり思っていた俺は驚く。そりゃそうだ。いきなり空の旅なんて言われたら。

「飛行機?その言い方は珍しいと思うけど飛行はするわよ。当たり前じゃない車だもの」

「当たり前じゃない……車だもの(裏声)……じゃねぇよ!車は道路を走るもんだろ!?」

そう必死に言う俺に二人は首を傾げる。

「車は空を飛ぶものでしょ。道路を走る車なんて見たことないわね……」

少し冷や汗をかいてまるで「迷子の子供」を見るような目で俺を見るサテラ。それに続いてカプセルも答える。

「はい。全くです。秋橋さんのいた世界はやはり我々とは別物のようですね」

「別物っていうか、もうかなり違うな。異世界って表現が正しい。ってか頭がおかしくなりそうだ……この話やめよう!」

俺はいよいよ頭がおかしくなりそうになり、そう提案した。サテラは「あなたが始めたのに……」という顔をしながら。カプセルは「そうですね……秋橋さんが壊れてしまう」と心配していた。


そうしてサテラは例の通り受付に行きオーダーを完了させたようだ。サテラが「次の番までまだ時間があるわね……」と言いながら帰ってくる。時間がある‥…なら聞きたいことがあった。大したことじゃないが……

「そういえば龍車ってモデルが龍なんだろ?」

「えぇ……そうだけど。それが何?また変なこと言い出すんでしょ?」

サテラがジト目で答える。

完全な変人レッテルを貼られていい気分じゃねぇな……俺は何も悪くないってのに。

「いや、変なことじゃねぇよ?モデルの龍ってどんなのかなって。ほら、城の地下にいたスイリュウ?ってやつ?あいつか?」

「半分くらい正解ね。」

サテラが答える。

「あの水龍は、小型種だから。モデルとなる水龍はもっと大きいのよ」

そう人差し指を俺の顔に立てたながら言う。

ふーん……スイリュウにも種類があるのか。

「あとあの洞窟にいた水龍……スイリュウって言うのは名前で、種族名も同じく水龍なのよ。なんでこんなややこしい名前つけたのかしら。」

ん?どういうことだ?

種族名?

俺は少し考えてようやく理解した。

「水龍って種族の龍に"スイリュウ"って名付けたってことか!」

「そういうこと。カシャとラシュアのセンスは理解に苦しむわ……」

それを聞いていたカプセルが「あはは……」と苦笑していた。

おそらく頭が混乱しているのだろう。俺もよくわからなくなってるし。


そんな話をしていたらどうやら時間が来たみたいだ。指導員みたいな人が俺達の元に来て「時間です」と会釈をする。

会話をしてるとすぐ時間が過ぎるのはこの世界でも同じか。

その指導員の後ろを着いていくとどうやらエレベーターに乗るみたいだ。

ゆっくりエレベーターに乗る俺達三人。 

無口そうな指導員が口を開く。

「頂上まで行きます」

俺がふーんと思いながら話し出す。

「このエレベーター長いやつだろ」

乗ってからすぐ俺が口を開く。

サテラが怪奇現象でも見たような顔をする。

「エレベーターに長いも短いもないわよ。ね、カプセル?」

「そうですね。水界全域平均1秒に調整されていますから」


……もう水界を予想するのはやめよう。俺はこの時そう思わざるを得なかった。

「俺の世界より文明発達してんじゃねぇかこの異世界!文明が発達してない世界で俺がウハウハライフ!みたいな展開こいよ!」

なんでこう上手くいかねぇ?異世界でも上手く行かんのか俺は。ふと見るとサテラは可哀想な人を見るような目でこちらを見ていた。

指導員が口を開く。

「着きました。あとはエレベーターを出てすぐ右にあるそちらの車にお乗りください」

ふと見るとそこには恐らく三十メートルはあるだろう龍型の機械がある。機械とは言ってもメタリック過ぎず……尚且つ柔らかい。そんな自然の龍の原型を壊さないような感じのデザイン。

というか普通に突っ込みたいが……

「何度も言うがデカすぎるだろ!三人乗るだけでこの大きさかよ!!」

そして俺は二人が口を開く前に続ける。

「そしてこれも水界じゃ常識!!なんだろ?もう読めるよ先が!」

サテラはそんな俺を見て「ハズレ」と答えた。

「今は貸し借りしてるの。私たち3人でね」

「なんでだよ……貸し借りって高いだろ?何シールすんだ?四万シールくらい行くだろ?」

やべ……さっき水界で予想するのは辞めようって決めたのに……

またやっちまったぜ。

「うん当たり。そのくらいね」

当たりなのかいっ!

思わず心の中でツッコミを入れた。

「もしアフィスアの連中に見つかりでもしたら乗客が危ないからね。貸し借りにさせてもらったわ」

サテラが舌を「てへっ」と出し答える。

それに続いてカプセルが話し出す。


「それでは……いよいよ乗り込みましょう!」

少し上機嫌というかテンション高くなってないか?

俺はカプセルの気質の変化を汲み取る。

そして、その車(明らかに飛行船なのだが……の入り口を見る。やはり大きく巨大なモンスターの口のように見えた。

「うん。行こうぜ」

俺は啖呵を切る。入り口をくぐると中は広々とした空間が広がっており、ガラス張りが一面に広がっている。雲が一面に広がり美しさが際立つ。

「うわ〜飛行機名乗ったのは久々だがやはりいいもんだぜ」

俺は思わず感想をこぼす。

それを聞いたサテラが答える。

「飛行機じゃなくて車よ。私も久々だけど気持ちいいわね〜」

サテラが笑顔でそう言ったのを横で見ながら俺は今一度目的を確認する。

「そう言えば呪術師ってどこにいんだっけ?聞いてなかった」

「そんなことも知らないの?って他の世界から来たから無理もないわね……空の国"アトランティス"。呪術師の盛んな国よ」

なんかカッコいいな。空の国でしかもアトランティスというネーミング。

この水界に来て初めてワクワクしたかもしれない。

俺は「本当に異世界に来たんだ」と言う実感が湧き嬉しくなり思わずニヤリとする。

「な、なに……!?思わずニヤニヤしたりして……」

サテラのドン引きする顔が見えて俺はふと我に帰る。

「すまんすまん!異世界に来てよかったなって初めて思えたからつい。

「ふーん……変な人」

サテラが微妙な顔をしながら答えた。変な人……って。

相変わらずこいつは辛辣で笑えるが……

そう思っていたらカプセルが後ろから。

「皆さん!そろそろ出発しますよ!」

意気揚々とした声が聞こえる。


車はガタッと音を立てて動き出した。意外にも静寂タイプの機械じゃなかった。

外を見ると雲の中を突き抜け動いているのがわかった。

「そう言えば何分くらいかかるんだ?」

俺はそう気になり出してカプセルに聞いてみた。

「え〜と……そうですね……分というか3日はかかりますよ」

う、うそぉ!?この車遅すぎるだろ。

ガタッて音もそうだが……

もしやこの世界の車は案外未発達なのか。それとも世界が広すぎるのか……

「長くなるわね……」

サテラのそんな遠くなりそうな声が聞こえた……


その夜……俺は車内にある個室の中で寝ていた。もちろん1人だ。

ふと目が覚めてしまい俺は目を擦る。

「はぁ……起きちまった。外真っ暗だな」

窓のガラス越しに見えた景色にそう呟く。

俺はガラス越しが一面に広がるエリア。中央部に行き景色でも眺めてリラックスすることにした。

眠れなさそうだし……

「ふーん……暗くてよく見えねぇな」

そんな感想を呟きながら俺はボーッとする。

「あら……?秋橋も起きてたの?奇遇ね」

ソプラノの高い声の方を見るとパジャマ姿のサテラがそこにはいた。

「おわ!?お前か!脅かすなよ……」

俺はビビり散らす。

空の上なんだからちょっと怖い気持ちがあって普通より二倍くらいの驚きだぜ……


〜第七話に続く〜


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