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第三話 水界のミステリー


サテラが開けた扉に目をやり呆然とする俺にラシュアとカシャは驚いた顔でこちらを見ていた。

「ごめんな」

俺は咄嗟に自分から言葉を出していた。

(クソ……なんだって俺はこんな子供に大人げない……)

自分の情けなさ、頭の悪さに辟易しながら俺は扉に手をかけた。

「あの……おにいちゃん?」

「お、おうなんだ?」


後ろを振り返るとラシュアとカシャが何やら手に持っていた。

「これを持って行って」

どうやらそれは一つのペンダントのようだ。

流石異世界……綺麗な形と透き通る色を放ち、フローライトの進化系……?のような感じだ。

自分でもよくわからないがそんな感想が出た。

「きっと役に立つよ」

ラシュアとカシャの明るい声が聞こえる。

この重々しい空気には似合わないが俺は落ち着いた。


「そして思い切って扉を開ける俺ぇ!」

そうか……そんな暗くなってどうするよ。俺は調子が出た自分に驚く。

「ぁたまおかしくなったのかな……(小声)」

後ろから心配する声が聞こえた気もするがきにしな〜い!

空元気で俺は前に進む事にした。

扉の先はどうやら廊下があり、結構オシャレだった。

その先を進むと何やら洞窟のような空間がある。

そこに金髪の女の子が見える。

「さぁサテラさんよ!何が言いたいんだい?」

俺は笑顔でそう言い放つ。空元気も若干きついな……

「ど、どうしたの……?頭おかしくなったの?」

サテラの困り顔がこちらに。

ふーんまぁまぁ可愛いな。

「あなたこの世界に来てついにおかしくなったようね。無理もないわ」

サテラの優しい眼差しがこちらに向く。

「やっぱそんなやべぇ世界だったのか」

「えぇ。あれは百年前のことだったわ……」


サテラが上を向きながらそう言う。

上には青く光る洞窟の鉱石が無数に光っていた。

なんでこう異世界っていうのはどこもかしこも綺麗なんだろうな。


「ってかその……長い話始まりそうだけど聞きたくないんだが……」

サテラはこちらをキッと睨んだ。

「やっぱりあなたに頼むのは酷よね。ってかそのペンダントってラシュアとカシャの?」

「うん、そうだが……」

サテラは「はぁ…」と息を吐く。

「あの二人……秋橋を選んじゃったみたい」

「は?」

「そのペンダントの正体は"勇者の形見"と呼ばれる先代英雄の遺物」


まさか……この流れは……俺がこの世界を救う勇者になる的な!?

「その遺物は一ミリメートルの成分が含まれた貴重な鉱石を凝縮したペンダントなのよ!本物はマーブル博物館に保管されているわ」

え……俺の目が点になっているのが分かる。

ふざけんなよ……思い上がっちゃったじゃねぇか。

「なんだよぉ……」

「何ガッカリしてんのよ。いいペンダントじゃない。売れば四千シールにはなるわ」

出たよ……異世界マネー。四千シール?そんなにシールいらねぇから。

「ちなみに四千シールは秋橋の世界でいうところの四万円ってところね」

「まぁまぁするのなこのペンダント」

俺はペンダントを握り締めてそう言う。

ラシュアとカシャの奴。いい奴らだな。

「って!話逸れたじゃないの!もう!」

サテラが顔を膨れさせながら言う。その時だった……


「おねぇちゃん!!スイリュウが大変なの!」

カシャの見た目からは想像できない焦りを見せていた。前髪隠れたいわゆるインキャ的な見た目だからだ。

相当焦ってんな……なんだなんだ……

俺はキョトンとする。

そんな俺には目もくれずサテラはカシャに問いかける。

「何があったの?」

「スイリュウの水翟(すいてき)が変なのー!!」

サテラは焦りを見せながら俺に「ちょっと待ってて」と言って走って行った。

「それ言われて素直に待つ奴がいるのかよ……まったく」

俺はそういい後を追う。 

っていうかこの洞窟の中にそのスイリュウって奴はいた。奴とは言っても人間ではなくてどうやらドラゴンみたいだ。(もはや普通にドラゴンがいて笑えるが……俺は少しビビった)


「グリュュ……」

スイリュウの弱った声が洞窟内に響いていた。

小さめの龍でまだ子供みたいだ。

「どうしたの?しっかりしなさいよ」

サテラは優しめに言う。

カシャは涙目になっていた。

俺は静かに見守る。

「グアアアアアアアアアア!!」

いきなりの怒号が響き俺は耳を塞ぐ。

こんな小さな身体からなんて声だ。

目を開けるとそこには信じられない光景があった。


スイリュウは闇のオーラのような物に必死に抵抗している。そして一番驚いたのは俺のペンダントがめちゃくちゃに反応してやがるってことだ。

「嘘でしょ……あいつらここを見つけたって言うの……」

サテラが絶望したような顔をしてそこにいた。

カシャに関しては絶句している。

「おいスイリュウ!大丈夫か!」

俺は急いでスイリュウに駆け寄った。そうしなきゃ行けない気がした。

そしてスイリュウと三十cmもの距離になった時だ。

ペンダントは上空に吹き上がり、闇のオーラと混じり合った。

その昇気に俺は立ちくらみながらもスイリュウに近づく。

そして驚くことにペンダントは俺の胸元に返ってきた。

十秒の静寂が続く。

「おさまった……のか?」

スイリュウは「くぅ……」と弱々しい声で泣いているがさっきより大分元気だ。

「秋橋!後ろ!!」

サテラの怒号が耳に響く。なんだ……?

後ろを振り返った。


「ッガ……ハッ……!!」

いてぇ……いてぇ……いてぇ……いてぇ……!!

「いっでぇぇぇ!!」

なんだ……?胸あたりがすごい痛い。

「おっと盛大に血を吹いてるね……可哀想に」

そんな少し余裕を感じる声が頭に響いた。

ふざけやがって……こっちは痛くて何も考えられ……ねぇ。

目の前が真っ暗になった。


「起きて」

何者かの声が聞こえる。

「あなたは選ばれたのです」

なんだと……?

目を開けるとそこには可愛い女の子の顔があった。

誰だ……?

「誰ですか?どちら様ですか?かな……いやどっちでも同じ意味か」

「ふふふっ……」

なんかいきなり笑い出したなこの子。

「面白い人ですね。」

「それはよく言われるよ学校でも」

「学校に通ってたのですか?」

女の子は微笑みながらそう言う。守りたいこの笑顔。とか言ってる場合じゃねぇな。

「あぁ……西夢高校って名前の高校。早く戻りたいんだ……君ってもしかして神様?なら早く俺を現実に戻してくれよ」

「それは出来ません、なぜなら私は神様ではないからです。今あなたは先代勇者の力でかろうじて私と話せているんです」

「勇者……?ドラクエか何か?」

勇者って響きは現実でよく聞くからな。ドラクエならやったことあるし。その勇者がどうしたんだ?

「ドラクエ……?それはよく知りませんが……とにかく時間がありません。もうそろそろお別れです」


え?

俺はボヤけていた頭がクリアになる。

「おいちょっと待て……」

「お元気で!頑張って下さい……!秋橋」

そう最後に聞こえた。


俺は魂が戻るような感覚がして目が覚めた。

「ガハッ……!!」

目を開けるとそこにはサテラが黒い服を着た男に掴まれている。

身長は百七十センチほどだろうか……

ってそんなのはどうでもいいとにかく助けなきゃ!

「大丈夫か?サテラ!!」

その俺の声を聞きサテラは「秋橋……!?生きてたの?」と言った。

「なにぃ!?あの状態から復活だと……どうなってやがる」

その男はこちらを見てそう言う。

顔はなかなかイケメンで勇者っぽい感じ……

「ん?」

そういや勇者ってあの女の子言ってたけど……

俺はペンダントを握りしめた。まさかこのペンダントが……?

「助けてくれたのか……」

「何ぶつぶつ言ってんだよ殺すぞ」

ひえ……いきなり殺害予告かよ。こいつやべぇな本当。

「逃げて秋橋!カシャとラシュアをよろしく……もう私はほっといて!」

「何言ってんだよサテラ。俺がそんなに薄情者だと思ってんの?なめんな!」

俺は流石に頭に来ていた。この男は許さない。

「あん?やんのか?」

男は出刃包丁のような剣をこちらに向けている。

くっ……こええ……でもサテラを守る為には戦うしかない。

「うおぉぉおおおおおお!!」

俺は助走をつけて男に走った。

「ふん……馬鹿か?真正面から何しやがるってんだ。死ね」

俺は目を瞑る……ここまでか……


「秋橋にしてはよくやったわ」

目を開けるとサテラがいて男は倒れている。


〜第四話に続く〜

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