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第7話

   

 現実で俺が五年目の大学に通う間、ゲームの中では鈴木葵が高校二年生として過ごすわけだが……。

 高校二年の六月頃から、鈴木葵は学校へ行かなくなってしまう。いくらコマンド入力画面で「学校へ行く」を選択しても、その通りに行動してくれないのだ。

 大谷直哉も「学校へ行く」に従わない時があったが、あれは体調を崩したのだから仕方がない。彼の場合は行動欄に『病気で学校を休みました』と表示されたが、今回の鈴木葵は『不登校です』となっていた。

 しかも、それが連日続くのだ。ご丁寧にイベントスチルまで用意されており、布団を被って部屋から出ない姿が描かれていた。


 こうなると不登校というより、もはや引きこもりではないか。

 おそらく無駄な努力とは思いつつ、毎日「学校へ行く」を一つ入れて、残りは「遊ぶ(ゲーム)」「読書」「音楽」「休憩」などにしてみた。

 外出を促すために「「アルバイト(コンビニ)」「遊ぶ(友人と)」「遊ぶ(デート)」も入力するが、完全に無視されてしまう。

 鈴木葵は毎日毎日、部屋の中で布団に(くる)まった状態だ。見ている俺の方が嫌になるくらいだった。


「おや……?」

 そんな日々が一週間ほど続いた時点で、俺はふと気づいた。行動を入力するコマンド画面に、いつのまにか新しい選択肢が表示されていたのだ。

 それは『リセット』というコマンドだった。

「これは……。鈴木葵を放棄して、ゲームをやり直すという意味か?」

 なんだか嫌な予感がしたので、自問自答するつもりで口に出してみるが、考えても答えはわからない。試してみるしかないのは、自分でも理解できていた。

 そこで、その『リセット』を選んでみる。六月二十五日の出来事だった。

 すると……。

「おっ!?」

 昨日まで部屋に閉じこもっていた鈴木葵が、セーラー服に着替えて高校へ向かう。

 もしかすると『リセット』とは「最悪なステーテスを初期化する」という意味であり、まっさらな気持ちでやり直せるのだろうか。

 ……と一瞬でも甘い期待を(いだ)いた俺がバカだった。

 鈴木葵は、校舎五階の渡り廊下から身を投げ出して、自殺してしまったのだ!


「おいおい。いくらゲームとはいえ、これは悪趣味だろ……」

 俺は胸がムカムカして、何か吐き出さなければやってられない気分になり、そんな言葉を口から出していた。

 自殺シーンに、わざわざイベントスチルが用意されていたのだ。校庭のアスファルトに叩きつけられた鈴木葵は、ドクドクと赤い血溜まりの中で、ありえない方向に体を捻じ曲げていた。

   

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