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第5話

   

 卒業の場面だけでなく、他のスチルも確認してみる。

 三年間の毎日の行動のうちいくつかのイベントでは、文字表示に加えて一枚絵のイラストも用意されているのだが……。

 そこで描かれている校舎内のイラストはもちろん、学校の外で遊ぶイラストを見ても、慣れ親しんだ商店街や駅前の風景だった。

 つまり、この『高校生メーカー [Ver. N]』というゲームは、俺の高校や地元をモデルにしていたのだ。


「今まで気づかなかったなんて……。イベントスチルは流し見だったんだなあ」

 迂闊な自分に呆れてしまうと同時に、ようやく『高校生メーカー [Ver. N]』の「Ver. N」の部分を理解する。「N」は永多岐市中央高校あるいは永多岐市のことで、つまり『高校生メーカー [Ver. N]』とは「『高校生メーカー』の永多岐市中央高校バージョン」という意味に違いない。

 どうやら『高校生メーカー』には複数のバージョンがあり、それぞれ実在の高校が舞台。たまたま俺の手元に、俺自身の高校のバージョンがやってきたらしい。

「これって、なんだか凄い偶然じゃないか?」

 独り言と共に、自然に笑みが浮かんだ。

 三年間かけて育て上げた大谷直哉が、単なるゲームのキャラクターではなく、まるで本物の後輩のように思えてきたのだ。

 強烈な親近感が湧くし、感情移入も強くなるゲームだ。

 俄然やる気になって、俺はまた『高校生メーカー [Ver. N]』をプレイし始める。


 大谷直哉のケースでは五月スタートだったが、今回はまだ三月。

 高校一年の終わりから始まるかと思いきや、入学直前の春休みからだった。『N市中央高校』への入学が決まっている、という設定だ。

 なお一人目が男子だったので、二人目は女子を選んでみた。鈴木(すずき)(あおい)という、同姓同名がたくさんいそうな名前だった。

 少しふっくらした頬と、くりっとした瞳が可愛らしい。こんな少女がリアルで後輩だったら、きっと俺は可愛がってしまうだろう。

 一人目の育成プレイが完了しても「将来の夢」で新しい選択肢は解放されず、今回も「神」や「悪魔」は見当たらなかった。

 二人目なので一人目とは違う「将来の夢」を選ぶことも考えたが、とりあえず性別が異なるだけでも、育成過程は色々と変わってくるはず。そこを比較してみたい気持ちもあり、大谷直哉と同じく「弁護士」を目指すことにした。

 さあ、鈴木葵の育成スタートだ!

   

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