サムヒア・ノーヒア
〜作者〜
ちょろんぞ/小野崎まち様
〜あらすじ〜
人はどうして思うままに生きられないのだろう。
人はどうして理想的に生きてゆくことができないのだろう。
――人は、どうして、望むままに変われないのだろう。
天より並外れた絵を描く才能を与えられた少女、上木田零子。
だがその代償だとでもいうかのように、彼女は弱かった。
その身体が、ではない。心が、圧倒的に弱かった。
――弱すぎたのだ。
これはそんな彼女と幼馴染たる少年、沖澄栄一郎の、一夏の物語である。
〜感想〜
心抉られるヒューマンドラマ。
天才でありながら心が並外れて弱い少女とそれを支える確固たる自我を持つ主人公の物語。
不器用で、もがき苦しみながら過ごす、青春というには苦々しく、されど心につよく響かせてくる作品。
高校時代の夏の光景が蘇るような鮮やかな情景描写に、理想と現実のすり合わせに途惑い苦しむ青春を思い出させる心情描写が秀逸で、読んだ後思わず放心してしまうほど。
文章力が極めて高く、絵について詳しくない自分でも世界観にのめりこんでしまうほど丁寧にわかりやすく書かれています。また小説全体を通してテーマの一貫性があるのですが後半には驚きの展開となっていき、全く飽きない構成をしているため、万人にお勧めする小説です。
〜URL〜
https://ncode.syosetu.com/n8676bo/