鬼人幻燈抄
~作者~
モトオ様
~あらすじ~
江戸時代、まだ怪異が現代より身近で鬼が跋扈していた頃のこと。
江戸より百三十里ほど離れた山間の集落“葛野”にはいつきひめと呼ばれる巫女がいた。
護衛役である甚太はいつきひめの為に刀を振るうが、何一つ守れず全てを失う。
巫女を、惚れた女を殺したのは大切な妹。
彼女は百七十年後、全てを滅ぼす鬼神となって再び現世に姿を現すという。
憎しみから鬼となった甚太は、何を斬るべきか定まらぬまま、遥か遠い未来を目指す。
鬼に成れど人の心は捨て切れず。
江戸、明治、大正、昭和、平成。
途方もない時間を旅する、人と鬼の間で揺れる鬼人の物語。
~感想~
和風ファンタジーの巨作で、名作中の名作
鬼となってしまったことで果てしない寿命を得た主人公が、様々な物と出会いながら切るべきものを見定める物語
この作品は本当に面白い。
世界観が丁寧にきれいに描かれているため、自分が本当にそこにいるかのようにどっぷりとはまれる。さらに主人公やその他のキャラクターの心理描写も素晴らしく、読んでいて理解できない類のストレスを一切感じない。もちろん展開によるものは存在するが、それすらその先のカタルシスにつなげているのでぜひ読んでほしい。
明るい話だけでなく、どうしようもなさとか割り切れなさにしっかりとした世界観を感じれる人には特におすすめします。
作品のテーマの一つである、時間や世代を経ためぐり合わせはとても感情を揺さぶられる。江戸、明治、大正、昭和、平成それぞれにその時代らしい心温まる物語や悲しい物語があり、そこからさらに時を経た出会いがどこかでつながっている。読み続ければ読み続けるほど発見があり、読み返すことでさらに深い表現を味わうことができる。
改めて思い返しても、情緒が強く揺さぶられ思わず涙が出てきたり、笑顔になったりと心の底から楽しめた作品です。これを読んだ人が少しでも興味をもって読み始め、沼にはまってくれると嬉しいです。
~URL~
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