ハンパ聖女レナ=アーリオンは努力の天才。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第九弾!
「レナ=アーリオン! 貴様をクビにする!」
アルテラ教の修道女の仕事の一つ、教育機関における『ダンジョン学』の講師の仕事に向かう直前。私は上司であるワランド司祭にいきなりそう言われた。
「ワケワカメなのですが?」
「クビにされる心当たりがないとは言わせんぞ! 貴様は普段から遅刻やらつまみ食いやら居眠りやら自堕落な事をして! そしてそんな注意をどれだけした事か! 今だって遅刻寸前ではないか!」
「転移魔術で行くので問題ないです。準備も着いてからできます」
「そういう事を言っているのではない! それで立派な聖職者になれると思ってるのか!? というか教会は貴様をだらけさせる場ではない! これ以上貴様を……巷で『ハンパ聖女』と呼ばれる貴様を抱えていては教会の恥! だからクビだ!」
「……だいたいわかりました。私の力を証明できれば文句はないんですね?」
「?? そうだが、何を言っている?」
「司祭様、魔力比べをしましょう」
魔力比べとは、相手と向かい合い、握手し、魔力を流し合い、相手を己の魔力の圧力で先に抑え込んだ方が勝ちという原始的な魔力測定手段である。
「もし私が司祭様に勝てれば、私は司祭様以上の逸材という事です。クビにするのは惜しいでしょう?」
「ふっ、面白い。そこまで言うからには自信があるのかね……笑止!」
司祭様が手を差し出す。
魔力比べをする事への合意だと判断し私はその手を握る。
本当は未来あるピチピチな少年少女と握手したいのですが……自分で言った手前無視はできません。
「貴様がどれだけ怠けてたか思い知らせてやる。用意……始め!」
そして、私達はお互いに魔力を圧し合い…………先に膝を屈して、敗北したのは司祭様の方だった。
「……ば、かな……なぜ自堕落な……ハンパ聖女が……?」
信じられない、と……己の中の常識が崩壊して茫然自失な司祭様。
ちょっと可哀想に思え声をかけたいですが、時間がないのでそれはまた今度。
私はすぐに転移魔術を使い、未来ある少年少女の待つ教育機関へ転移した。
※
確かに私はハンパ聖女と呼ばれてる。
でもそれは、私が……どんな努力をすればより自他の実力を高める事ができるか分かる努力の天才だから。
下手に努力すれば際限なく実力が上がり相手を殺してしまいかねないので、私は今まであまり努力していないのだ。
それに、ハンパのどこが悪いのでしょう。
程度によりますが、それは発展途上とも言える事。
未来があるって事じゃないですか。
レナ「『異世界清掃伝説!!』……いつ連載再開するやら」