未来予知は可能なのか? その答えは、ラプラスの悪魔だけが知っている。
未来予知。それは、未来で起こる事象をあらかじめ理解する予測能力。多くの学者が現実のものとするために力を注ぎ、その理論を組み上げていった。
今回は、未来予知が可能なのかどうかの話をしていこう。
結論から書いてしまえば話は早いのだが、ここは伏せたままでいよう。
未来を予知できるのなら、結論も予知できるはずだ。
さて、未来予知の理論だが、そちらは実に簡単なものだ。
「今」がわかるのなら、「次の瞬間」がわかるはずであり、そこから「さらに次の瞬間」がわかるはずなのである。
例えば、あなたは人が行き交う街中で、膨らんだ風船を左手に持っているとしよう。これが「今」
次に、右手に持っている針を風船に近付けようとしている。これが「次の瞬間」
するとどうなるかと言えば、風船が割れるはずである。これが「さらに次の瞬間」である。
もっと予測するなら、風船が割れた音に驚いてこちらへ振り向く人がいると考えられる。
このように、なにをすればなにが起こるのかを予想するのは、まったくできないわけではない。
物事には予測が難しいこともあるが、予測が難しいだけで結果は必ず決まっている。
これを全ての物事で予測すれば、未来はわかるのではないかという考えだ。
理屈の上では納得できそうではある。
ただ同時に、とても難しいとも理解できる。
人間1人の行動予測ですら完璧にできない現代では、生物の行動や自然現象の全てを計算し尽くすなどというのは不可能に近い。
一応、生物の思考予測はできなくはない。
人間の脳にはニューロンと呼ばれる神経細胞が1000億個ほど存在しており、さらにこれが100兆を越えるシナプス結合と呼ばれる結合が存在している。これらが繋がったものが脳で、とても精巧なネットワークのようなものとなっている。
このネットワークから我々が普段をどのように過ごすかなどの選択が決められており、無意識に凄まじい計算を常に繰り返している。
言ってしまえば、超精密なコンピューターだ。現代科学でも再現不能とされているほどに、とても繊細な計算を可能としている。
しかし、計算式と答えは必ず存在している。
このことから、思考予測は理屈の上では可能とされているのだ。
この計算を1人の人間だけでなく、全人類、全生物で行い、自然現象や宇宙の彼方までの事象と合わせ、完全に正しい回答を出したものが未来予知となる。
そしてこれらを可能とする仮想存在を、ラプラスの悪魔と呼ぶ。
しかし、未来予知は理屈的には可能かもしれないが、ラプラスの悪魔は存在できないと結論付けられている。
何故なら、未来を知っているならば、その未来を変えることも可能だからだ。
ラプラスの悪魔が存在するということは、生命なり物質なりとして「そこにいる」のである。
ならば未来予知で知った未来に、当然自分も含まれる。
例えば10秒後の自分が右手を上げたとする。ならそれに逆らうように、10秒後に左手を上げることも可能である。
そうしてしまえば、知っていた未来と異なる結果となってしまう。
予測する未来に、予測する本人がいてはいけない。
これが、ラプラスの悪魔が存在しない理由である。
では、予測する悪魔が存在できなくても、予測自体は理屈の上では可能なはずなのではないか。この世にはランダムなことなど無いはずだ。
そう考えるのは否定できないはず。とは思えるだろうか。
実際、肯定もできないが否定もできないという「あくまで可能性はある」という認識が続いていた。
しかし、それも近年になって否定されたのである。
量子力学の分野での話になるのだが、とても簡略化して説明をすると、原子はとある変化を完全にランダムな確率で行うと発覚したのだ。
これにより、物事には予測が難しいこともあるが、予測が難しいだけで結果は必ず決まっている。という想定が崩れてしまったのである。
完全にランダムな事象が存在する以上、未来を完全に計算するのは不可能と判明した。
以上が、未来予知は不可能であるという説明です。
…………が、この説明ですら、現在でわかっているだけの情報に過ぎません。
もしかしたら神が存在していて、物理法則ではわからないことまで全て決められているかもしれません。
未来までも決められる神や未来を予知できる悪魔など存在しないと証明する。それこそまさしく、悪魔の証明です。
ラプラスの悪魔は存在していて、この文の結末を予測していたかもしれません。
皆さんはこの結論を予知できたでしょうか?