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イチオシ短編

パチンコ屋の幽霊

作者: 七宝

 愛知県名古屋市 Yさん 20歳女性


 私はカバンを持ち歩かない派なので、いつもズボンの左ポケットに財布をしまうんです。右側にはスマートフォンと車の鍵を入れています。


 あの日は駅前のパチンコ店でデビルマンのパチンコを打っていました。54000円ほど使った頃に熱い演出が来ました。それと同時に、私の後ろにおじさんが来ました。おじさんは腕を組んで私の台の画面を凝視しています。


 ちょっと心配な展開でしたが、なんとか当たりました。後ろで立っているおじさんは小さく舌打ちをしました。しかし私はまだ喜びません。確かに当たりはしましたが、4図柄当たりは体感的に確変に入りづらい気がするのです。大当たりの消化中に確変か通常かのチャレンジをするのですが、おじさんはまだ見ています。


 ここで私は腰の左側にくすぐったさを感じました。私が目を向けると、そこには人の手がありました。私のズボンのポケットに手を入れようとしています。私はその手を掴もうとしましたが、逃げられてしまいました。


 あまりソワソワしているのを見られたくないので、私は何事も無かったように視線を画面に戻しました。通常でした。やはり4図柄は確変突入率が低いのでしょうか。後ろのおじさんはいなくなっていました。お前、私の財布奪おうとしただろ。


 私は10分休憩の札を台に置き、お手洗いに行きました。帰りに自販機でコーラを買って自分の台へ向かう途中、40連している台を見つけました。ちょうどラストチャンスで、40連で終わるか続くかの場面でした。


 大工の源さん超韋駄天という機種なのですが、ハズレ目が595でした。これは最後の回転での大当たりが濃厚(諸事情で確定とは書けない)なので、41連目まで行けます。後ろを通りかかった私は思わず「あっ!」と声を上げてしまいました。


「ウェーイ!」


 私の声が聞こえていたようで、その台に座っていた人が私にハイタッチを求めました。ハイタッチはしましたが、私の心は暗黒でした。こっちは54000円負けてるのに、なんで41連してる奴とハイタッチせにゃならんのだ。


 台に戻った私はまた0回転から打ち始めました。しばらくして、また腰に何かの感触を感じました。やはり手が見えます。私がその手を掴もうとすると手が引っ込み、また逃げられてしまいました。私はすぐに後ろを振り向きました。もちろん左から。しかし、周りには誰もいません。周りの台にすら誰も座っていないのです。


 もしかして⋯⋯幽霊? そう思い始めると、もうそんな気がしてならなくなってしまいました。それでも私はパチンカスなので打ち続けました。460回転、ちょうど80000円で2回目の当たりです。私はまだ喜んでいません。また4図柄なのです。


 すると、どこからともなく先程のおじさんが現れ、私の後ろで仁王立ちをし始めました。お前、マジで殺すぞ。と思いながら、私は台に祈っていました。結果は通常。おじさんは満足そうな顔をしてどこかへ消えていきました。


 誹謗中傷は捕まるのに、なんで4図柄当たりのチャレンジを後ろで腕組んで見るのは違法にならないの? そもそもなんで40%を2連続で引くの? と私は爆発寸前でした。


 ストレスでお腹が痛くなった私はまた休憩札を置き、お手洗いに行きました。お手洗いを済ませて戻る途中、誰かにお尻を触られた気がしたので振り向くと、そこには誰もいませんでした。


 私は怖くはなりませんでした。80000円負けている人間はもはや幽霊など怖くはないのです。そもそも財布をスろうとしたり、痴漢をしたりする幽霊など恐怖の対象ではありません。


 366回転、ちょうど100000円で3度目の当たり。なんと、また4図柄です。腕組みおじさんスタンバイ。そして安定の通常。おじさん去る。40%の通常を3連続で引くなんて⋯⋯!


 もしかして、これも幽霊のせい? 怖くはないけど、これはさすがに困ります。あ、隣が当たりました。腕組みおじさんも来ました。確変に入ったようです。おじさんは舌打ちをしてどこかに行きました。


 はぁ、さすがにもうお金が尽きました。ATM行ってきます。パチ屋によっては店内にATMがあるところがあるのですが⋯⋯


 ありました。カードを入れて15秒くらい待たされてから暗証番号を入力するのですが、この15秒の待っているだけの時間が地獄なのです。周りからめちゃくちゃ見られている気がするのです。「あいつ、負けすぎてATMでおろしてるよ」と思われているに決まっています。


『プルルルルルルル』


 母から電話です。


『大学の近くまで行くからちょっと寄るね、ボールペン貸してほしいの。あと30分くらいで着くから。じゃあねー』


 クソっ! ボールペンくらいその辺で買えよな! 私はそう思いながら移動の準備をしました。大学をサボってパチ屋に行っていることがバレるのが怖いからです。幸い今日は大学の近くの店だったので、すぐに帰れます。


 はぁ、今から3万発出してプラスで帰るつもりだったのになぁ。そろそろ勝ててもいい頃だと思ったのになぁ。あああぁ。


 というお話でした。パチ屋にも幽霊っているんですね。恐らくあの幽霊はこの店で負けすぎて借金をして、自殺でもしたのでしょう。それで化けて出ているのです。しかし、なぜ私を狙ったのでしょうか。私が幽霊だったら当たっている人をとり殺しますよ。100000円も負けてる人を見たら「かわいそう」以外の感情湧かないですよ。

 ちなみに腕組みおじさんは幽霊ではありません。1店舗に10人ずつくらい居るれっきとした人間です。こいつらはいつか殺されると思います。人が人を殺すなんて、あってはならない事なのに⋯⋯

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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろかったですww。絶妙な、好きな雰囲気の作品でした。ようはパチンコでぼろ負けした話ですよねw。ホラー仕立てのやり方がおもしろかったです。 [一言] ダメな日はとことんダメですね。
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