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キャラクリエイト


                ☆


 約束していたから――という理由は建前にすぎなかったりもする。

 標準的なヒューマの体型の腰付近にも届ないミニマムな身体を持つ”アバター”という種族にはどんなプレイヤーだって興味を抱くはずだ。

 けどサービス開始当時は不評の嵐が渦巻いた。ヒットボックスが小さいこと以外、このアバターの身体にはデメリットが多すぎた。

 体型に合わせて小型化されたRESULTERは出力が著しく減少し、与えるダメージにはマイナス補正がかかるのは当たり前。

 装備できる兵装は、たとえ以前の僕のように適正値をあげたとしても使用には違和感が付きまとう。

 当然、歩幅も小さいため歩行する間も連れ立った仲間から置いてかれる始末である。

 そして最大の欠点がアバターの種族専用スキルがどれもピーキーすぎて使いづらいことにあった。

 たとえば一定のスキルポイントを割り振って取得できるコンバットアルゴリズム≪ナーサリー・クラウド≫は自身の意識を別の電子機器にアップロードして操るというものだが、操れる機器自体が戦場においてあることは稀だし、あったとしてもトラップとして配置されたガンタレットを使えるくらいなので劣化”アーティラリー”でしかない。

 他にも接近戦用の技である≪ビー・オーケストレーション≫は体内の電力を接触した敵に流すというものがあるが、そもアバターの機動力では接敵自体難しかったりする。

 サポート系種族スキルの≪ディードル・ディドル≫は一度壊れた兵装をアレンジして作り直すという技だがその兵装は拠点で修理しても元には戻らないため、レア兵装が雑魚兵装に成り代わってしまう恐れがあるため滅多に使われない。

 唯一この前煮え湯を飲まされたダミー生成のスキルは≪ナーサリー・クラウド≫の上位スキルらしいが、発動のためにはキャラロスト寸前のキャラクターが必要なのでこちらも発動自体がシビアだった。


 とどのつまり、以上の事柄が理由で”アバター”という種族は大変不遇でネタプレイ満載ということだ。

 ……どう転んでも”攻略メインのクランと関わるようなことにはならない”だろう。


「それに小さな身体を操る感覚も気になるしね。

 うぁ、種族がアバターだとプリセットがオモチャになんのか……」


 玩具の兵隊やテディペア、一時期流行った犬型ロボットと……着せ替えビスクドール。

 ゲームだからいいが、実際にこんな肉体(?)へ意識が送り込まれたら即発狂してしまうこと必至だ。

 

 キャラクタークリエイトはこれで二回目だが、人型キャラの目鼻立ちや髪色を選択するのではなく憑りつく玩具の塗装から入るのではまったくの別物だった。

 

「RESULTERを装着しない生身状態は拠点でしか曝さないけど……、やっぱ少しでも愛着出るように……っと。」


 別枠でブラウザを開き、好きだったマスコットキャラクターで検索してみる。

 ウサギ型ロボット、うさ耳、バニーで、モフモフで……サン●オのキャラに似せてつくるとかは、ダメだろうなぁ。

 アバターがそうなのかは確認してないけど、ヒューマでプレイした時は人体の欠損とかざらにある。

 PVPならむしろそれを積極的に狙うのが定石でもあるし……いや、玩具ならそこまでグロくはないだろうか。


 思ったよりも時間をかけて、30分ほどで新しいキャラクターが完成する。

 二足歩行できるウサギ型の小型ロボットだが、獣毛の類はなく全身は丸みをおびたフォルムになっている。

 頭部にはデジタル時計じみたディスプレイがあり、喜怒哀楽が顔文字じみたもので表現される。ちなみにオフにすることも可能なので実質ポーカーフェイスも可能。

 全裸というのも落ち着かないのでザ・モダンロボットな姿を隠すために子供用ポンチョをアクセサリーとして装着する。

 RESULTERありきでもそこまで嵩張らない。どんなアーマードスーツを着ているのかプレイヤーに偽装できそう。もちろん偽装したところで何がどうするってわけでもない。


 これで完成だ。

 後ろ姿だけみれば子供が歩いているようにも見えるが、アバターの身長はNPCとして出てくる子供たちよりも一回り小さい。ポンチョがフレンチコートみたいに全身を包んでいても、すぐにアバターだと気づかれるに違いない。


 で、どちらかといえば問題は次だ。

 初期ステータス傾向。

 シュナイダー、アサルター、アーティラリー、そしてドルイド。

 散々考えたが、小さなヒットボックスを活用するために回避タンクになるのが一番まともな思考に思える。

 次にドルイド。サポートスキルが豊富なら、体型うんたらはそこまで影響を受けないはず。

 一方でアサルターは兵装の装備でかなり手こずるだろうし、アーティラリーには設置型であっても重火力兵器には真っ当なパワーが求められる。こっちはRESULTERの性能をチューンナップすれば扱えるが、結局は他の種族を追う形になってしまう。


「いや、もうとことんニッチスタイル極めるのもいいのかもな。

 下手に効率云々気にしなくなるだろうし。

 あ、でも今度は他のプレイヤーともしっかり遊びたいし……むむむ」


 煮え切らない。

 シュナイダーだと前線で敵の注意を引き付けるという役割上、失敗したら責任重大だ。今更盾役である〈カタリスト〉のことを尊敬する。


 もしあのとき、僕が”アバター”の特性をちゃんと理解していたらこの結末も変わっていただろうか。

 あのPKが用意したダミーの潜伏に気づいていたら……。



「…………決めた。 アバターでドルイド!

 使える使えないはともかく、アバターの専用スキルには後方支援が多いし、そこまで腐ることはないはず!」

 

 今度は全兵装の適正値にスキルポイントなんて使わない!

 ドルイドで真っ当にサポートスキルを上げ、アバターを使いこなして一目置かれる存在に僕はなる!



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