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家族の終わり

ピピピッピピピッ

アラームの音で眼が覚める。


そして床に刺さったままの右腕を見て理解する。

夜の出来事は夢ではないのだと。


「これ親父に殺されるかもな」


軽く現実逃避気味に言ってはみたが、実際何故昨日の夜に家族全員が起きて来なかったのかは不思議だ。

床を貫通させる程の威力だ音も相当出たに違いない。

なのに何故か誰も部屋に来ていない。


嫌な予感がする。


まずはこの手を抜かなきゃ始まらねぇ!


「てか、俺の腕無事なのか?」


普通に考えれば右腕は原型を留めていないだろう。

だが感覚的に痛みはない。

昨日の頭痛で痛覚が麻痺してるのかも知れないが。


「あの頭痛はマジでヤバかった」


俺以外で耐えられる奴はいるんだろうか?

日常的に激痛に耐えており、なおかつ身体の限界を超えて動かすイメージを持てる人間。


「とにかく腕を抜いて現状の確認だ!」


そしておもいっきり腕を抜こうと力を込めると。


(バカがやめろ!)


勢いよく腕が抜け、その勢いで今度は天井に右肘が突き刺さった。


(だからやめろと言ったのだ、このバカが)


昨日の奴の声がする。


「てめえまだいやがったのか」


(いるに決まっている。私の肉体はお前の肉体と同化していると言っただろう、やはりバカだな貴様は)


「コイツ!さっさと俺の身体から出ていけ!」


(それは無理だ、同化が完了してしまえばお前の肉体から私を切り離す方法などない。お前は食べて消化され、肉体の一部になった食べ物を身体から選んで切り離す事が出来るのか?)


「つまりお前は完全に俺の身体の一部になったということか?」


(貴様の身体の一部という言われ方は気に食わんな、我々は身体を共有していると言うことだ)


「共有だと!?元々俺の身体だろうが!お前が勝手に入って来たんだろ!」


(貴様が脳の支配権を私に譲っていれば私の身体になっていたものを、無駄に抵抗するからややこしくなる)


「好き勝手言いやがって、お前に俺の身体を好き勝手させる事はこれから一切ないと思えよ」


(今の貴様相手では無理だろうな、だが世界の現状を見て絶望した後ならどうだろうな?)


「世界の現状?絶望って何の話だよ?」


(まずはさっさと天井から降りて、家族がどうなっているか確認した方が良いんじゃないか?)


「お、お前!俺の家族に何かしやがったのか!?」


(私は何もしていないさ、私はね)


「家族に何かあったら絶対許さねぇからな」


(それを私に言っても仕方ないぞ?私は実際何もしていないからな)


くそ!

コイツと話てても仕方ない!

とにかく早く皆の無事を確認しなければ!


(それと忠告しておくが、力の入れ方は気をつけた方が良い無駄に疲れるし、時間がロスするだけだからな)


「お前の忠告なんて聞くかよ!」


そして右肘を抜こうと力を込めると。


また床に腕が刺さった。


(はー、だから言っただろう?力の入れ方に気をつけろと、また無駄に疲れたぞ)


それより俺の身体今さらだけど、どうなってるんだ?

力と耐久力が昨日の比じゃない。

いや最早人間技じゃない。


(貴様と同化した私の細胞は人間の細胞では耐えられない負荷も耐える事が出来る。そして細胞の回復速度、神経の伝達速度も人間の比ではない)


それって最早俺人間じゃないんじゃ。


(そうだぞ?貴様の身体は私と同化した時点で人間とは言えない身体だ。頭だけは私の細胞との同化を免れたので頭だけは人間かな?)


おい、これ元に戻す方法とかあるんだろうな?


(そんなものはない。言っただろ?一度食べて吸収された物を取り出す事が出来るのかと。完全に同化した細胞を全て取り出す事など出来はしない)


マジかよ、じゃあ一生俺はこのまま?


(そうだ。私と言う存在、自らの人外化、そろそろ絶望したくなってきただろう?)


お前の話だけ信じる何て出来る訳がない!

とにかく皆と話をしてどうすれば良いか考えないと!


(まぁ好きにしたまえ。君が絶望し精神力が低下して脳の支配が弱まれば、私が貴様の脳を支配出来る)


そんなこと一生させねぇって言ってんだろ!


「とりあえずゆっくり腕を抜いて」


(少しは学習したか、バカでも分かる事ではあるが)


こいつマジでいちいちうるせえな。

でも実際右腕は無事だし、力も以上に上がってるのは間違いない。

こいつが言ったように俺の身体が人外になっているのは本当のようだ。


「とにかく皆の無事を確認しないと!」


急いでリビングに向かうとそこには。


食卓を囲む家族の姿。


「良かった!皆無事なんだな!」


そう言いながら食卓に近づくと。

食卓には近所のおばさんが乗っていた。


「息子か早くこちらに来て処理を手伝え、血抜きは家に入れる前に済ませておいた」


親父が何を言っているのか分からない。


「身体を同化させ、脳の支配を奪う過程で大量のエネルギーを消費してしまった。速やかに補給する必要がある」


母さんが何を言っているのか分からない。


「単独で外出するとはコイツは大分知能が低い個体のようだ」


妹が何を言っているのか分からない。


「とりあえずコイツを仕留めた私が頭を貰う」


親父がそう言いながらおばさんの頭を捻り切る。


「では血抜きをした私は心臓を貰う」


母さんがそう言いながら心臓を抉りとる。


「じゃあ私は肝臓を貰います」


妹は両手をおばさんの腹に突っ込み肝臓を抜き取った。


「息子はどの部位を食べる?自らが強化したい場所を食うと効率が良いぞ」


俺はその場で吐いた。


「なんだ?何故嘔吐する?何か食べていたのか?」


親父が不思議そうに近づいてくる。


「その個体何か変だわ」


母さんが心臓を口にしながらこちらを眺める。


「私は栄養接種を優先するからそちらは任せる」


妹は肝臓を一心に頬張る。


吐き気が止まらない。

そして涙も止まらない。


「皆乗っ取られたって事かよ」


(そうだ既に貴様の家族は人間ではない。脳まで完全に同化されてしまっている、端的に言えば貴様の家族は死んだ)


「てめえよくも!」


(これも言ったが私は何もしていない。貴様の家族を乗っ取っている個体と私は何の関係もない)


「どういう事だ?お前らは仲間じゃないのか?」


(仲間?そんなものは存在しない。私達の存在理由は生き残る事だ)


「生き残る?コイツらと戦うってことか?俺の家族と?」


(家族だった物だろ?そうだ貴様に猜疑心を持ったこの個体達は、貴様を排除しようとするだろう、そうなれば戦うしかなくなる)


「家族と戦えって言うのか?無理だ出来る筈がない!」


(では私に肉体の支配権をよこせ。私はこんな所で餌にはなりたくないのでな)


「そんな事をすればお前が家族を殺すだろ!しかも身体を返す保証もねえ!」


(そうだが?身体を返す訳がなかろう元々奪うつもりだと言っていたしな)


「どうにかする方法はねえのかよ!」


(それも答えたぞ「ない」と)


「家族を殺す何て出来る筈が…」


気がつくと親父が目の前に立っていた。


「息子よ君は個体として少し特殊のようだ。特殊な個体は稀有だが私の群れには必要ない。だから破壊させて貰うよ」


そう言うと親父は俺をおもいっきり蹴り飛ばした。

その勢いのまま窓から外へ飛び出てしまう。


一階のリビングから庭へ蹴り飛ばされた俺は、混乱しながらどうするか考えていた。


親父達を殺す何て出来る筈がない、でもこのままじゃ俺が殺されるか身体を奪われるかだ。


どうする?どうすればいい?



「息子よあまり動くと即死させられず無駄にエネルギーを使う事になる。あまり動かないで貰えると助かる」


(頭と心臓は守れよ。両方を潰されると即死するぞ)


その言葉を裏付けるかのように親父は正確に頭と心臓を狙って蹴りを放ってきた。


はっ速い!

目で追えるのが不思議な位速い。


(私と同化していなければ即死していたさ。それにしても貴様何故動きについていける?普通なら脳の処理が追い付かない程の速さだぞ?)


蹴りしか使って来ないけどあまりにも速い。

蹴りだしと戻しが速すぎて脚が何本もあるかのようだ。

首を左右から刈り取る様な蹴り。

心臓を貫くこの様な蹴り。

脳天から地面に突き刺す様な蹴り。


これらが一瞬と呼べる間に飛んで来る。


(貴様はやはりおかしい、普通の人間に対応出来る速さではない。

肉体の性能がいくら私と同化して上がっていようとも、脳の性能は貴様のままの筈だ。

普通なら動きについていける筈がない。

目で見てから身体を動かすまでの速さに人間には限界がある。

私達の様な動きを想定して作られてはいないのだから当然だ、にも関わらずこの反応速度。

貴様はいったい何なんだ?)


頭の中でごちゃごちゃ声がする。

こっちは親父の蹴りを避けるのに必死だってのに。

だがこのままじゃどうしようもねえ、避けてても解決にはならないしな。


とりあえず逃げるか?


殺せない、治せないってなると今は逃げるしか選択肢がない。


とにかく隙を見つけて今は逃げる!


だが逃がしてくれるだろうか?

追って来られたら反撃できない俺は圧倒的に不利だ。


「逃げると言うなら止めはしないぞ息子」


親父が唐突に蹴りを止める。


「私達の群れに息子、お前はいらないと言うだけで今日の餌は既にある。わざわざ殺す理由がない」


そしてゆっくりと下がっていく。


「さぁ何処にでも行くがいい。だがこの家に近付く事は許さない。次に許可なく近付けば三人がかりで始末する」


そして家に戻りながら親父は言った。


「さらばだ息子よ」

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