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世界が終わるまでもう少し

旨すぎるパンを食べた日の夜、家では給食のパンの話で持ちきりだった。

いや家だけではなく世界的にパンの話で持ちきりだ。


ニュースでもSNSでもネットでも給食のパン一色だ。

一つで満腹になるのが残念だがこれ程美味しい食べ物はないとまで言われている。


パンが嫌いな人でも一口食べればたちまち虜。


薬物等ないか検査したが何も問題はないという。


それはそうだNewで管理され製造されている物に薬物を混ぜる事は不可能とされている。


何故ならAIで製造から配給されるラインで人の手は一切入っていないからである。


そして人に渡る直前も食品に異常がないかスキャンしている。


完璧な衛生管理の下給食は配給されるのだ。


世界中でこのパンを口にしていない者はいない。


都市開発が出来ない場所でさえこのパンだけは配給されたという。


そしてこのお祭り騒ぎだ。


だれもがあのパンを待ち望んでいる。


だが不思議な事にあのパンを食べてからお腹が減らない。


皆も同様で満腹のままだと言う。


世界中、パンの旨さを讃えながらも満腹感に打ち勝ち2個目に手を伸ばせた者はいない。


次の日の給食を待ち望みながら。

この満腹感が明日には無くなっている事を祈りながら皆眠りについた。


俺の家も同様であのパンは旨かったと話をし。

満腹なので晩飯は食べれないからもう寝るかとなりいつもより大分早く皆眠りついた。




その夜、俺は頭が割れる様な痛みを感じ飛び起きた。

頭痛はどんどん酷くなる。

眼と鼻から血が流れて視界が赤く染まる。


(お前の身体はもうすぐ私の物だ)


割れそうな頭から声がする。


(もう首から下は既に私の細胞と同化した、後は脳を支配すれば終了だ)


眼が飛び出そうな痛み、絶え間なく襲う頭痛。


(さぁお前の意識さえなくなればそれで終わりだ、さっさと楽になれ、痛いのは嫌だろう?)


だがこの訳のわからない奴の言うことを聞いて意識を手放したら最後なのは間違いない。


(耐えようとして耐えられる痛みではないぞ?しかもこの痛みはお前の意識がある間は永遠に続く。速いか遅いかの違いしかない。だからさっさと諦めろ)


だが逆を言えば意識さえあればこいつに身体を奪われる事はないと言うことだ。


(お前まだ思考する余裕があるのか?凄まじい精神力だ。それにどんどんお前の意識が強くなっていくのを感じる。これはありえんことだ)


徐々に思考に余裕が出来てきた。

後は肉体の制御を取り戻すだけだ。


(な!バカな!この痛みを耐えるだけでなく肉体の制御を私から取り戻そうというのか!?)


さっき自分で飛び起きた事を考えると完全に制御を持っていかれている訳では無いはずだ。

俺の肉体と脳は繋がっていて首から下の細胞だけが奴と混じっているから動きが制限されていると言うことか。


(こいつただの人間ではないな、普通なら痛みが襲った直後に目覚めすぐさま気絶するはず。それほどまでに私達が送る痛みの信号は強い。脳が壊れるギリギリの強さで痛みの信号を送り続けているのだから)


普通に動かそうと思っても身体はピクリともしねぇ。

だったら普段ならあり得ない位に力を入れて動かせばどうだ?


(これ以上の痛み信号は脳が壊れてしまう。そうなれば肉体の生命活動が停止してしまい、私もこの身体の細胞ごと滅んでしまう)


普段なら軽く動かす程度の力の意識を重い物を持ち上げるイメージで。

まずは右手で10キロを持ち上げるイメージ。

ダメかピクリともしない。


(だがどうする、こいつの精神が壊れるまで待つと脳への負担が心配だ)


じゃあ100キロのバイクを持ち上げるイメージで右手に力を入れる!

腕が少しピクリとしたぞ!


(そうだ!手で口を塞ぎ酸欠にすればどうだ?長時間は危険だが短時間ならダメージは少ないだろう)


なら今度は車を持ち上げるイメージでおもいっきり右手に力を込める!

精神力、脳の信号の強さが問題ならこれでどうだ!

右手がゆっくり持ち上がる。


(こいつ!私が思考してる間に!?)


よし!次は足だ!

100キロの重りを背負ってるイメージで足を出す!


(制御を持っていかれてたまるか!肉体は私の物だ!)


上がっていた右手がゆっくりと口の方に近づいてくる。


(窒息させ気絶させてやる!)


そうはさせるか!

右手で床を殴り抜くイメージで動かす!

ゆっくりと右手が床に降りていく。


(こいつ!どれだけ脳のイメージ力が強いんだ!普通床を殴り抜く程の力を入れる信号なぞ肉体に送れないぞ!)


そう、普通の人間なら送れない、人間の脳は自分の身体が壊れるような命令は送らない様にストッパーをかけている。

これ以上力を込めると危ない、これ以上意識すると精神が危ない等肉体や精神を守る為思考を停止したり力を制御したりしている。



だが俺は出来る、これまで全ての痛み、力の入れ方を記憶している俺なら!


普通なら忘れる事故や怪我の痛み、火事場の馬鹿力的な力の入れ方を俺は常に感じ覚えている。


俺は意識を持ってから今までの全てを記憶している。

忘れるというプロセスが俺には少し欠如していた為だ。


痛い記憶はずっと痛みを俺に与え。

悲しい記憶は俺に永遠に悲しみを背負わせる。


だから先程の痛みも耐えられた。

数々の痛みの記憶を味わい続けてきた俺だからこそ耐えられた。


そして肉体の制御も俺はどんな動き、力の入れ方も忘れない。


だからこいつから俺は肉体を取り戻す事も出来る!


(人間の分際で私をなめるなよ!)


下がった腕がまた口に近づいてくる。


(私はそこらのミミックとは格が違う!亜種と呼べる程に進化した個体なのだ!お前みたいなガキに負けるはずがないのだ!)


知るか!お前がなんだろうと俺は俺の身体を他人に譲るつもりはねぇ!!

床でダメなら地面まで砕けろ!!!


そして遂に右手が俺の命令通りに動く。


口に向かっていた右手が勢いよく床に振り下ろされる。


それは一瞬だった。

床を拳が貫通した。


それを見届けてから俺の意識は闇に沈んだ。

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