食べたら始まり
Newによる給食システムは今や当たり前になっていた。
栄養バランスが偏りがちだった現代人は給食による暖かく、栄養満点の食事がいかに大事かを知ったのだった。
当然それは全ての学校教育にも導入されていた。
「あ~腹減った~早く飯の時間になんねーかな~」
授業の終了後クラスの誰かが良く口にする台詞にランクインしていそうな言葉だ。
「その言葉毎時間聞いてる気がするが大体お前が発信源だろ!鬱陶しいからやめろ!」
ボサボサの髪をそのままに気だるげに机に突っ伏すのが心得 遊我。
そして、それを注意するのはクラスメイトの
井原信二。
ボサボサ髪でだるだるの格好の遊我に対し、髪を整え制服をキチッと着こなす信二。
正反対の二人だが何故か良く一緒にいる。
お互いに気兼ねがなく会話を楽しみ文句を言い合う、友達と言われる関係。
「次の時間が終われば給食だ、だから腹減ったと連呼するのはやめろ。僕らはもう高校生だ少しは我慢を覚えてだな…」
信二が淡々と遊我を諭す。
「うるせーなー、俺は腹減ってるから腹減った~っていってるだけだ!感情表現豊かだと誉めて欲しいね!」
その発言に信二の説教に力が入る。
「それが許されるのは小学生までだ遊我!僕らはもう高校生なんだぞ!そして腹減ったと連呼する事を感情表現豊かとは言わん!」
二人が言い合っていると。
「そんなにお腹空いてるの?朝ごはん食べてないの?」
遊我に隣の席の女子が喋りかけてくる。
「朝飯なら食べた!だけどな健康的な男子なら昼になる前に腹が減るもんなんだよ!」
遊我が力説する。
「そうなの?信二くん?」
隣の女子は信二にも質問するが信二は先ほどまでの威勢が無くなったかのように小さい声で。
「そ、そうですね」
と、だけ答えた。
「お前女子相手だと露骨に弱気だよなー」
ニヤニヤしながら遊我がここぞとばかりに信二をいじる。
「弱気ではない!ただ少し遠慮気味になってしまうだけだ!」
焦ったように信二は遊我に反論するが。
「なんで信二くん女の子に遠慮しちゃうの?」
女子が信二に少し近づくと、信二は露骨に後ろに下がる。
「こいつの家姉貴がスゲーから女に対して若干恐怖心あるんだよな~」
遊我が少し可哀想な眼を信二に向ける。
「べっ別に姉さんは関係ないぞ!僕はいたって普通だ!女子に恐怖心など欠片もない!」
「そう言いつつ私から距離を取ってますよね?」
ジリジリと距離を取り合う信二と隣の女子。
「てかあんた誰だっけ?」
ジリジリと攻防を続ける隣の席の女子に遊我が質問する。
「酷いな!隣の席なのに!」
女子がびっくりしたかの様に叫ぶ。
「いやーだってこのクラス初めてだし?」
今日は高校三年になって初めての授業日、新たなクラスメイトとの一年が始まっていたのだった!
「てな感じで今日初めましてみたいなもんだし許してくれよ」
「前の説明口調意味が分かりませんが、まぁ良いです。遊我くんずっと授業中イヤホンして寝てましたし、知らないのも無理ないですね」
「遊我貴様!また授業中イヤホンしていたのか!せめてイヤホンは外せと言っているだろ!」
信二が遊我に説教を開始しようとした時。
「それより私の名前の方が大事ですよ!」
隣の女子が説教しようとしていた信二に近付き、それにより信二が硬直。
「そして俺は信二の説教から逃れられると言う訳だ」
「あのー私の名前そろそろ言って良いですか~?」
だが無情にもここでチャイムが鳴り先生が入ってくる。
「さぁーお前ら席につけー」
信二は硬直から立ち直り素早く先へ戻り、隣の女子もブツブツ良いながら席に着く。
「今日の授業は」
そして俺は机に突っ伏しながら耳にイヤホンをセットし眠りに着く。
目を覚ますと授業も終盤、計算通り。
授業が終わる前にイヤホンを抜き、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
そして信二に注意されながら給食を選びに行き、それを隣の女子が追いかけてくる。
平和な日常、これが一年続くのだと俺はそう思っていた。
給食を食べる場所は決められていないが配給場所は大体決められている。
食堂の様な場所でAIロボが配膳及び調理を行う。
給食は数々のメニューから選択出来る、量も選べるし味も良い。
空間に表示されるメニューに触れると選べる仕組みだ。
そしてオススメに出てくるメニューはその中でも特に旨い。
[本日のオススメは「パン」です。]
ん?
メニューじゃなくてパンのジャンル全てって事か?
そしてメニューにはどれもパンがセットでつくようだ。
これは珍しい。
大体はオススメにでるのはカレーやラーメン等料理の名前だ。
そしてセットもパンかライスかそれともなしか選べるのが普通だ。
だが今日は必ずパンがセットにつく。
まぁアレルギーがある人や炭水化物を控えている人に対しても食べられるパンがあるからそこまで問題ではないだろうが、米が食べたい人もいるだろうからこれは苦情がでるかもなー。
などと考えながら俺はオススメ欄のトップにあるハンバーガーを選んだ。
信二はカツサンド、隣の女子はサンドイッチだ。
メニューを選択して間もなく座った席に給食が届く。
サラダやスープ、飲み物に至るまで計算された栄養満点の給食。
「いただきまーす!」
食べたと同時に衝撃が走る。
「う、うめーー!!!」
こんなに旨いパンを食べたのは初めてだ。
食感、味、匂い全てが脳にダイレクトに信号を送って来るかの様な衝撃。
至るところから旨い、旨いと声が聞こえてくる。
「今日の給食のパンヤバいな!」
「ああ!これは旨い!」
「凄いよね!これ美味しすぎるよ!」
三人ともに夢中になってパンを食べる。
だが何個でも食べれそうな旨さなのに一つ食べると唐突にお腹がいっぱいになった。
「こんなに旨いのに腹がパンパンで食えねぇ!」
「まだ食べたいが満腹で食べれそうにないな」
「うー!私もいつもならもう少し食べられるのに!」
皆いつもなら余裕な量なのに一つ食べた途端にお腹がいっぱいになってしまったようだ。
「あー!もったいねぇ!こんなに旨いのにもう食べれないなんてよ!」
「まぁ明日また頼めば良いさ」
「うん!絶対明日またたのも!」
そう明日になればまた給食が出るんだ。
「そうだな!明日また食えばいいか!」
明日になればまた食べられる。
皆そう思って納得していた。
美味しすぎるパン、一つで満腹になるパン。
それが最後の食事になると知らずに。
次の日世界は終わっていた。
そして俺の世界は始まった。




