行方不明深夜電車
全く雰囲気が違う短編を気晴らしに書いてみました、一読くださるとありがたいです。
とある島国は年間8万人ほど行方不明者が出ている
この島国の人口は1億2000万人ほどにも関わらず、毎年この人数がいなくなっている。
しかしこれだけ減っていても誰も気にも止めない、本当に身近の人がいなくなった場合は騒ぐかもしれないが何年と時間がたてばそれもすっかり忘れてしまってその場にいる誰かがその役割を補完して生活が続いていく。
必ず人間の生活は補完できる関係性で成り立っている、それ自体はとても効率的なものだし【生活】そのものは続けられる。しかしその効率なことも無視するのも人間らしいところである。
その日とあるBARに来ていた男はマスターに対してそんなことを言っていた、マスターは慣れた手つきでそのお客の話を聞き頷いたり相槌を打ったりして流していた。その客は結構飲んでいるようで、また絡んでいた。
そのあたりでその話をしていた男は眠ってしまったらしい。
俺はマスターに飲み物の代金を払いその店を後にした
店を出て上を見上げる、雨が少し降ってきたようだ、服が、髪の毛が少しずつ濡れていく
全身から体温を奪っていく、急激に冷めていく思考。
そして先ほどの男の話を思い出していた、行方不明者は忘れ去られる運命だということを。
人間の能力の一つである、忘れるという機能
これのおかげで人間はずっと苦しまずにすむ、忘れたいことも忘れたくないことも綺麗に忘れてしまう
行方不明者がどこに消えたかも考えることも忘れていく。
さて話は戻るが行方不明は神隠しと似たようなもので忽然と姿を消していく。
忽然と人が消えるとき目の前には深夜電車が現れる、人をいざなうように現れる。
その電車は目的地不明で進んでいく。
疲れたようなサラリーマンも何もわからない子供も平等に連れ去っていく。
連れ去れた人がどこに行くのかはどこに行くのかわからないが、みんな他力の力を頼ってでも今と違うポジションを目指していくのかもしれない。
この島国が悪い意味でもいい意味でも無関心だからなせる業かもしれない。
あなたの前にも深夜列車来るといいですね、良くも悪くも変わりますから。
では私は先に列車に乗って待ってますよ。
読んでいただきありがとうございました!