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君が僕を連れまわす話  作者: 宮野 紡
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プロローグ

初めての連載小説の執筆で不定期更新になるかもしれませんがが読んでくれると嬉しいです。


 僕、須藤 翼の人生最初の葬式が幼馴染のものになるなんて予想したこともなかった。


 故 山本 加奈 そう書かれた看板を感情任せに蹴っ飛ばした。


 帰ってくるのは加奈の注意ではなく足にジィンと広がる熱と痛さだった。


 中学生だった僕は親しくもない親戚、はたまたおじいちゃん、おばあちゃんなど歳を老いたものから死んでいく、そう信じていた。


 事の発端は学校の体育の授業中に胸を押さえ痛みを訴えながら加奈が倒れたことだった。


 先生が急いで救急車を呼び5分、10分はたまた永遠とも思えるような時間の末、加奈は救急車で運ばれていった。


 あまりの出来事に僕は呆然と立ち尽くす事しかできなかった。

 もう一回この時に戻れると知っても僕はたぶん立ち尽くす事しかできないと思う。


「翼、加奈大丈夫だよね?」

 もう一人の幼馴染の菊池 遥が駆け寄って僕の体育着の裾をつまんだ。

 その質問は医者でない僕には分からない。でもきっと遥は僕に大丈夫って言って欲しいことは分った。


「きっと、大丈夫だよ」

 きっと加奈なら屈託のない笑顔で戻ってくるそう信じていた。

 けれど加奈は学校に戻ってくることはなかった。


 結果から先に言うと加奈は癌だった。


 癌なんて若い僕らに縁のない病気。フィクションの中のものだと思っていた。

 しかし病魔は平等にそして無情に加奈の体を蝕んでいった。


 癌は若いほど進行が速い。

 手術が出来ないほどに加奈の清い体をひっそり汚していった。


「ねぇ翼、私加奈にどんな顔して会っていいかわからないよ」

 病院の白い廊下を歩きながら、遥は寂しそうな顔をしていた。


「そんなの僕も分からないよ!」

 今まで溜まっていた感情が風船を針で刺したように爆発し声を荒げてしまう。

 近くに居た看護師に「病院では静かにしてください」と注意され冷静さを取り戻した。


「ごめん、少しトイレ行ってくる」

 そう言い残すと僕はひっそりと近くにあったトイレの中に入った。


「ハハ、ひどい顔」

 隈の出来たやつれた顔をした僕が鏡に映っていた。

 手洗い場の水で顔を洗いハンカチで顔を拭きトイレを出た。


「ごめん遥」

 

「ううん、私こそごめん、翼も分かる訳ないよね」

 

 廊下を進んでいくと山本加奈様そう書かれた部屋があった。

 その字をマジックで塗り潰せば病気もなかったことになればいいのに。

 そう思いながら扉をノックした。


「はーい」

 扉の中から元気そうな声が聞こえてきた。


「翼、遥、来てくれたんだ」

 加奈はいつもと同じように屈託ない笑顔で僕たちを迎えてくれた。


「翼も遥も顔ひどいけど大丈夫?私よりよっぽど病人っぽいよ?」


「大丈夫なわけないよ、僕達がどんだけ心配と思ってるんだよ」


「そうだよ、私もすごい心配したんだから」

 そう言いながら遥は加奈に抱き着いた。


「こらこら、暑いよ」


 そこからはいつものように談笑した。


 数学の教師丸山は女子生徒を見る目がいやらしい。こないだのテストが難しかった。誰々が告白したらしい。

 そんなどうでもいい、いつも通りの話をした。


 ありふれた会話がこんなにも愛おしく感じるのは初めてだった。


 そしてそんな時間も長くは続かなかった。


 それから僕は毎日、君のお見舞いに行った。


 最初は遥と二人で行っていた。

 だけど日に日に体調が悪くなって目に見えてやつれていく加奈を見るのが辛くなったのか遥は病室に行かなくなった。


 僕はそんな遥に悲しさと怒りを覚え、遥ともだんだん疎遠になっていった。

 遥が来なくなって1週間ぐらいたったある日。


 今日も僕は病室に来ていた。


 もう加奈は起きている時間より眠っていることのほうが長いぐらいだった。

「ごめんね翼、私のせいで遥と喧嘩しちゃって。でも二人が仲直りしてくれたほうが私は嬉しい」

 唐突に加奈はそう言いまた眠った。


 その数時間後に息を引き取った。


 初めての葬式はマナーがよくわからなかったから前の人を真似た。

 最後に見た加奈の顔は死化粧がされていた。


「普段は化粧っ気ないくせに最後に色気づいて、加奈の化粧した顔もっとしっかり見たかったよ」

 そうつぶやいた声は静寂の中に溶けていった。

 帰ってきたのは加奈のお母さんとお父さんのすすり泣く音だった。

 そして僕の初恋が終わった。


『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、評価やブックマークしていただけるとモチベーションになるので、していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします!

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