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召喚獣バンクナンバー1の俺は異世界で本気を出せなくて辛い 【なろう版】  作者: 佐久間零式改
第一部 さすらいの召喚獣ランクナンバー1の男
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第9話 今日も元気だ。ご飯が美味い


『異世界Third Earth編 前編』





=========================================================================


【 曲名 】凄絶神器ナルイハーワルツ


【 歌手 】チーム・ナルイハーW

【 作詞 】:檀上イルモッツア

【 作曲 】シルフィード藤岡



 僕らは一人じゃ何もできないけど


 みんなといれば勇気が出る出る


 信号無視だって 万引きだって


 みんなといれば何でもやれる


 D・A・K・E・D・O


 勇気を出しても


 犯罪行為は No! No! No!


 僕らは正義の使徒故に


 勇気を出すなら正義で示せ


 正義こそが僕らの証


 証こそが僕らの勇気


 僕らが勇気は凄絶神器ナルイハーワルツ


 その名の下に勇気を示せ


 僕らがナルイハーワルツ


 絶対勇気の力を示せ


 僕らがナルイハーワルツ



=========================================================================



「あああああああああああああああああああああああああああああああ」


 俺は貝になりたい。


 そう……こんな電波ソングを聴かなくてもいい貝になりたい。


 しかし、それは叶わぬ夢だった。


 なにせ、俺は耳を塞ぐ事さえできなかった。


 コックピットの中でずっと流れ続けている電波ソングのせいで、俺は頭がやられそうになっているのだ。


「こんな理解不能な歌詞の歌を聞き続けると、気が狂いそうになる!」


 しかし、誰も反応してはくれない。


「誰が止めてくれ!」


 しかし、誰も止めてはくれない。


「誰かスピーカーを壊してくれ!」


 しかし、壊せない。


「くそっ、俺は操縦席から動けないんだ!」


 そう……俺はコックピットに固定されていて身動きが取れず、ナルイハーWの歌をエンドレスで聴き続けているのだ。


「敵を倒さない限りベルトが外れない仕様の操縦席とか拷問だろうが!」


 ロボ軍団が敵だろうがなんだろうが、俺なら一人で倒せるはずなのに、俺は何故かよく分からないロボのコックピットの中に放り込まれて拘束されている。


 しかし、この歌の歌詞が延々とモニターに流れ続けていて、もう暗記していそうなくらいであった。


「力が制限されているだけじゃん! 頼む! 誰か俺の代わりに壊してくれ! スピーカーを! いや、この巨大ロボを! というか、檀上イルモッツアって誰だよ! シルフィード藤岡って何者だよ! 責任者は出てこい! こんな歌、こんなコックピットを作った責任者だ! 修正してやる!」


 だが、俺の叫びは空しく、ただただコックピット内に木霊するだけであった。




 * * *




 最近、俺は東海林志織の事が正視できない。


 志織の方も何故かしら避けるようになっていて、なんていうか志織の地雷か何かを踏んでしまったかのような避けられようだ。


 志織は最初から俺の事を嫌っていたはずだから、それがさらに進行しただけなのかもしれないが。


 その日の昼休み。


 例の特等席にいると、志織と鉢合わせしそうだからと、わざわざ行く場所を変更した。


 もう一つの俺の特等席、そこは体育館裏であった。


 幸いな事に日陰だし、何よりも昼休み中は人があまり来ない事もあって、のんぼりと過ごすには丁度良い。


 壁に身体を預けるように座り、購買部で買って来たおにぎりをほおばる。


「今日も元気だ。ご飯が美味い」


 本来ならば、教室で学友同士、わいわいと騒ぎながら昼飯を食べるべきなのだろう。


 友達があまりいないと言えば聞こえが悪いが、あくまでも俺は孤高だ。


 それ故に、一人で昼飯を食べているのだ。


 決して友達がいないワケじゃない。


 鮭のおにぎりを食べ終え、次のおかかに取りかかろうかとした時、


「俺と付き合ってください!」


 体育館の手前くらいから、男の滑舌の良い声が響いてきて、思わず手にしていたおにぎりを口から遠ざけた。


 なんだろうか?


 そう思って、声がした方に視線を向けてみるも、死角になっていてよく見えなかった。


 こういう現場はのぞき見るべきではないのだが、何せ俺は好奇心旺盛な召喚獣だ。


 どこのどいつが、どんな人に告白しようとしているのか知らなくは。


「私には好きな人がいるから断る事にしているんだけど……。でも、みんなにチャンスをあげているのよね」


「チャンスですか。聞いていた通り、自転車レースですか?」


 ようやく告白している男と、告白されている女のご尊顔が拝める位置に立てた。


 男の方が体育館の壁に手を添えていて、女の方は体育館の壁に背中を預けている。


 ようは壁ドンだ。


 そんな状況であるのに、女は余裕綽々とした態度で、男の方は何故かしら自信がなさげな態度であった。


 って、あの女は……


「うん。とある直線コースで私を一度でも抜く事ができたら、考えてもいいかも」


 告白されているのは、東海林志織か!?


 男の方は、バスケ部の主将・千堂常次郎だと?!


 ヤバイよ、ヤバイよ。


 志織に俺が見ていたなんてバレちゃ大変な事になる。


 俺はそそくさとさっきまでいた位置に下がり、なるべく音を立てないように体育館裏から出て行こうとしたのだが……。


「……こんな時に……」


 直後、俺は何者かの召還を受けていた。




 * * *





 人っ子一人いない大通りに俺はいた。


 白昼夢を見たと思わざるを得なかった。


 テレビなどで見た事がある東京という街がそこに広がっているように思えたからだ。


「国会議事堂に……靖国通り……だと?」


 ビルなどの姿形に見覚えがあるだけではなく、通りの名前さえ東京の『それ』そのものだったからだ。


 だが、違和感がある。


 否定のしようもない違和感だ。


「これは……違う!」


 国会議事堂の裏にあるのは、見覚えが全くない戦国時代にでも建てられたかのような城があった。


 国会議事堂よりも、後ろの城の方が本丸とさえ思える。


「もしかしなくても、パラレルワールドという奴か? そういった異世界もあるという事なのか?」


 パラレルワールドの東京。


 そんな異世界もあっていいような気がするのだが、人が誰一人いないのが気になる。


『江戸の諸君、降伏せよ、降伏せよ。即座に降伏したまえ。江戸の諸君、降伏せよ、降伏せよ。即座に降伏したまえ。江戸の諸君、降伏せよ、降伏せよ。即座に降伏したまえ』


 どこからともなく、スピーカーからと思われる渋い男の声が流れ続ける。


「江戸? 東京じゃなくて?」


 この世界がパラレルワールドだとするのならば、どんな世界線の日本なんだろう。


 誰かと誰かがこの東京……じゃなくて江戸で戦っているというのか。


「君か! 召還に応えてくれたのは!」


 今度はスピーカーからではない生の声が頭上から降ってきた。


「トォッ!」


「ハッ!?」


「ほいっ!」


「はいっ!」


 威勢の良いかけ声が空から降り注いだ。


 なんだと思い、空を見上げると、アクロバティックな格好をして飛び交う四つの影が次から次へと俺の視界をよぎっていった。


「俺のソウルネームは、Rセブンティーン!」


 俺は一つの影を追うも、そんな声がしたものだから、その声がした方へと視線を向けてしまった。


 その先にいたのは、歌舞伎のような見栄を切っている優男であった。


「わしのソウルネームは、のど飴太郎じゃ」


 その声がした方を向けると、ふくよかな体格の男がこれまた見栄を切って立っていた。


「私のソウルネームは、ストロベリー昌子!」


 今度は女の声がしてその声の主を即座に見やると、またまた見栄を切っている姿が視界に入った。


「あっしのソウルネームは、風穴太郎でありんす」


 またかと思い声のする方を見ると、はやり見栄を切って颯爽と立つ姿が見えた。


「4人揃って我ら貴族戦隊ソウルジェネラーズ!!」


 それが決め台詞だったのか、びしっと決まった瞬間、四人の背後で軽い爆音と共に白い煙が上がる。


「……はぁ?」


 四人とも色つきのレザースーツを着ており、一体感があるような気がする。


 外見だけは。


 そう……外見だけは。


 鍛えていないであろう、ひょろひょろの体躯が戦隊ものとしての違和感を醸し出す。


「君が召喚獣くんか! さあ、俺たちチーム・ナルイハーワルツと共に凄絶神器ナルイハーWに乗り、江戸の平和を守ろうじゃないか!」


 全員、白い歯をきらりと輝かせながら、爽やかに微笑んだ。


 この時、何かとてつもない嫌な予感がしたんだ。


 だが、この四人に従わざるを得なくもあった。


 今回のミッションがどんな内容なのか知るためにも。


「で、俺はどうすればいいんだ?」


「まずは、あのロボに乗りたまえ!」


 優男が指し示す先には一機の巨大ロボがあった。


 これに乗れというのか?


 ロボに乗れば、今回のミッションがなんであるのか分かるのだろうかと思い、俺は警戒心なしにコックピットに入った。


 だが、入った瞬間、俺はコックピットから変なロープが伸びてきて、俺はコックピットに拘束されてしまったのだ。




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