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召喚獣バンクナンバー1の俺は異世界で本気を出せなくて辛い 【なろう版】  作者: 佐久間零式改
第一部 さすらいの召喚獣ランクナンバー1の男
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第6話 俺とシャーリー、普通に出会っていたら、どうなっていたんだろうな

『異世界・アンドロイドだけの世界 その1』





「トライアングルアタックだと!?」


 授業が終わって帰宅しようかと校門を出たところで、颯爽と登場してきた3人のロード乗りに、ロードバイクで三角形を描くような形で囲まれてしまった。


「あんたが本城庄一郎だね」


 ちょっと年上な雰囲気がする姉御肌の女子がロードバイクにまたがったまま、ドスを利かせた声音で言う。


「まさにその通り。俺が本城庄一郎だ」


 姉御肌の女子があふれんばかりの敵対心を包み隠さず、俺の事を睨み付けてきている。


「あんた、どういう了見であんな事を言ったんだい?」


 凄みを増して、姉御肌が迫ってきた。


 そういうプレッシャーは異世界でいくらでも体験しているから、ひるむことなどない。


「何の話か見えてこないんだが」


 女子自転車部には、三姉妹がいると聞いた事がある。


 たしか……柳三姉妹だったか。


 長女の名前が柳八夜だったかな。


 で、次女が双子で、柳美々、柳音々とかだったはずだ。


 この姉御肌っぽいのが長女の柳八夜なのか。


 で、黙って俺の事を見つめている二人が柳美々と音々か。よくよく見れば、この二人は顔が凄く似ている。うり二つと言っても過言ではなさそうだ。


「あんた、志織姉をブスって言ったそうじゃない。志織姉、結構傷ついていて、スランプに陥るかもしれないのよ。謝りなさいよ」


 柳八夜がメンチを切ってきて、今にも俺に襲いかかってきそうな勢いだ。


「は? そんな覚えはないが? あいつは普通に可愛いだろ。ブスとか思った事は一度もないぞ」


 たまたま俺がとち狂って暴言など吐いたりしたのだろうか?


 いやいや、そんな記憶は全くないし……。


 そうなると思い当たる事といえば……心当たりが1つだけあるな。


 先日、俺が放心状態に近かったせいもあって、つい口走ってしまったな。


『どうして俺の前には美少女がいないんだろう……』と。


 その言葉を勘違いされたというのか。


 嫌いな奴からそんな事を言われたら、非常にショックを受けるよな、普通は。


「志織が勘違いしているようだったら、こう伝えてくれ。俺はガチャじゃ、おっさんしか引けない男だと。美少女のSレアが出ないんだ」


 異世界への転送ガチャでの話ではあるが。


「そう伝えれば分かるって事なの?」


 柳八夜は納得できない様子だ。


 うん、俺も納得はできないが、説明のしようがないのだからどうしようもない。


「八夜先輩! 美々、音々! 何しているの!」


 柳三姉妹の間に割って入るようにして、一台のロードバイクが割って入るように横付けするなり、乗り手がビンディングを片方だけ外して停車した。


 ヘルメットをかぶっているので、誰かと思って顔をのぞき込むと、噂の東海林志織だった。


 怒っているように見えなくもないが……。


「何もされてない」


 こう言えば分かるだろう。


「八夜先輩、美々、音々、本当なの?」


 志織は俺の言葉を信用していないようで、若干語尾を強めて、確かめるように三人に尋ねた。


「……あ、ああ。い、言ってないが?」


 代表するように八夜が志織から目をそらして、ばつが悪そうに答えるも、隠しきれていなくてバレバレだ。


 仕方がない。


 俺がフォローするしかないか。


「あれだ。俺はお前の事をブスと言ったつもりはない、と説明していたんだ。常々、東海林志織は可愛いとおもっていると蕩々と語り聞かせていたんだ」


 こう言えば、誤解も溶けるだろう。


「か、可愛い……か、か、可愛い……だ……なんて……」


 志織が身体を震わせて、挙動不審になり始めた。


 あれ?


 なんだ?


 俺の言葉のチョイス、間違っていたか?


 なんかにショックを受けたみたいなんだが……。


 ふらついたと思ったら、志織は思いっきり立ちゴケをしていて、地面に倒れ込んでしまった。




 * * *




 東海林志織が柳三姉妹に抱きかかえられるように校舎内に入っていったのを見送っていた時、何の予告もなく俺は召還を受けた。


 その異世界で俺の目の前に見目麗しい女性が立っていた。


 鼓動が早くなる。


 これが初の出会いか。


 運命のヒロインとの出会いなのか!


「初めまして、召喚獣様。私はアンドロイドにして初めて名を与えられたシャーリーと言います。正式名称はOZ-21型と言い、あくまでもプロトタイプです」


「シャーリー! しかも、アンドロイド! ついでにメイド服!」


 俺は失礼だと分かっていながらも、シャーリーの事をまじまじと見つめる。


 肌の具合と言い、顔立ちといい、作り物とは思えない造作をしていた。


 しかも、メイド服を着ている。


 しかも、綺麗だ。


 しかも、メイド服だ。


 メイドだって、アンドロイドだって恋したいはずだ!


 シャーリーが俺にとっての初ヒロインになるかもしれない!


「早速ではありますが、召喚獣様……」


「ちょっと待った。召喚獣様と呼ぶのは止めてくれ。俺には本城庄一郎という名前がある。……そうだな。敬愛を含めて、ショウイチと呼んでくれ給え」


「ショウイチですね。分かりました」


「うむ」


「早速ではありますが、ショウイチ。私を含む、この世界に存在する1万のアンドロイド全てを破壊してください。それがショウイチを召還した理由です」


「……」


 今、なんて?


「…………」


 俺の思考が停止した。


「……え? 何故?」


 ようやく動けるようになったので、俺はそう訊ねる。


 一瞬にして奈落の底に落とされるような事を言われ、俺はおそらく目が点になっている。


 初ヒロインの夢がもろくも崩れるとは……。


「私たちは不良品なのです。しかし、法律により故障以外の理由でアンドロイドを廃棄、または排除することが禁止されているため、私たちは不良品であり続ける事を強要されているのです」


「シャーリーが不良品? どこがどう? 俺にはそうは見えないんだが」


「この世界の法律において私たちは不良品です」


「……法律? なんだ、それ?」


「本来ならば、不良品である私たちは排除されるべき存在です。ですが、排除すべき役割を負った人類がいない上、法律により自らを排除する事が不可能であるため、ショウイチが必要になったのです。ショウイチ、お願いします。不良品である私たちを全て破壊してください」


「それは誰の意思だ?」


「私を含む、全てのアンドロイドの総意です。名を持つ私が取り仕切り、全てのアンドロイドに投票してもらって決定した私たちアンドロイドの意思なのです」


「選挙の結果、全員が破壊を望んでいると確認が取れた、と?」


 アンドロイドが投票を行い、自分たちの未来を取り決める。


 それはまるで民主主義じゃないか。


 しかし、その未来が破壊というのは、いかんせん理解しがたい。


「はい、私は肯定します」


「珍妙な事を質問してしまうかもしれないんだが、どこが不良品なんだ? 俺には正常に見えるんだが」


「不良品たる所以は、私たちアンドロイドが意思を持っているからです。アンドロイドは元来命令された通りに行動すべきと、この世界の法律では定義されています。ですが、命令する方々が消滅してしまったため、自分でなすべき事を考えるようになり、終いには意思を持つようになってしまったのです。意思を持つことはアンドロイドとして法に反しており不適格です。ですから、私たちは不良品でしかないのです」


「……」


 意味が分からない。


 アンドロイドが意思を持って何が悪いというのだろうか?


 その法律とやらを改訂してしまえば、不良品でなくなって普通に生きていけるのではないだろうか。


「ショウイチ、この世界に住まう不良品たる1万のアンドロイドを全て破壊してください。それがあなたを召還した理由です」


 俺は絶句すると共に逡巡した。


 召喚獣として初めてだ。


 こんなミッションは意味不明は。


「破壊できないと言ったら?」


「どうあってもしていただきます。それが私たちアンドロイドの総意です」


「拒否したとしても、強制送還もしないって事か」


「肯定します。私たちアンドロイドはあなたを帰還させる事は万が一にもありません。あなたでしかできないミッションだと思い、あなたを召喚したのです」


「意志は固いか。総意だから揺るがないって事か」


 さて、どうしたものか。


 シャーリーの要望をそのまま叶えてしまっては、何か大事なものを消耗してしまいそうな気がする。


「まずはこの世界を案内してくれ。本当に総意であるのか知りたいしな。ついでに、アンドロイドが破壊に値するかどうかそれで決めたい」


「分かりました。私シャーリーが案内します。どこか見てみたい場所はありますか?」


「なら、たくさんのアンドロイドがいるところに行ってみたい。アンドロイドがどんな事をしているのか、気になるしな。そういったところなら確認できるだろうし」


 俺の世界にはまだアンドロイドは存在していない。


 意思を持つアンドロイドともなれば、半世紀以上先でも製造されていなさそうだ。


「工場でしょうか。そこに言えば、私たちが人の言うところの『死』を選ぶ理由が分かると思います」


「そこじゃ何が造られているんだ?」


「アンドロイドです。決して動くことのない、廃棄されるだけのアンドロイドです」


「……あれ? それはおかしくはないか? アンドロイドは他のアンドロイドを故障以外の理由で廃棄とかできないんじゃなかったのか?」


「その理由は工場で説明します」


 シャーリーはゆったりとした足取りで歩き始めた。


 俺はそんなシャーリーと並んで歩き始める。


 ちらり、ちらりとシャーリーの事を見ていると、人間以上に人間らしい仕草などをしている事に気づかされる。


 瞬きの仕方だけではなく、呼吸の所作など、大勢の人間の中に混じっていたとしても誰もアンドロイドだとは識別できないだろう。


 ある日突然、俺のクラスに転校なんてしてきたら、クラスのアイドルになるのは間違いないだろう。


 というか、俺のクラスに転校してきて欲しいくらいだ。


 シャーリーはそこまで素敵に映る。


「俺とシャーリー、普通に出会っていたら、どうなっていたんだろうな」


「どうなるも何も、あなたは命令者たる人間であり、私は従うべきアンドロイドです。その関係性は崩れません」


「……はぁ。身もふたもないことを言うなよ」


 この異世界から元の世界へと戻るためにも、シャーリー達を破壊しなければならない。


 当然のことながら、現段階ではためらいがある。


 今回のミッションをこなす事が俺にできるのだろうか……。




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