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第9話 友であると同時に恋人……か


「この宇宙そのものを作り替えようとしている勢力? そんな奴らがいるのか?」


 いきなりスケールの大きな話を振られ、俺は戸惑いを隠しきれなかった。


 宇宙そのものを作り替えるというのは、どのような行為を指しているのだろう。


 もしかして、新しい宇宙を創成して、新勢力か何かを作り出そうとでもしているというのだろうか。


「デスティニー・マイスターをおぼえていますか?」


 ジオールは真面目な顔つきでそう問うた。


「当然だ。さっきまで行っていた異世界で、デスティニー・マイスターを盟主と口にしていた奴と戦ってきたところだ。当然勝った……とは言い難いが」


 トイレに行くのも、食事をするのも、眠る事も人間の行動一つ一つに税金がかかり、その税金が払えない者は不必要な人間だと判断される、人工知能が世界を支配していた異世界ミスカルダルで出会った、いけ好かない男がデスティニー・マイスターだ。


 左頬に何やら数字が刻まれていた奇妙さを今でもありありと思い出す事ができる。


「デスティニー・マイスターは、元々は私達と同じ志の元、行方不明になっているリーダーに付き従い行動していました。ですが、元リーダーが行方不明となり、私達はちりぢりとなったのですが、一部のメンバーは私達と決別をし、世界を思いのままに操る事に喜びを見いだし、そうし出したのです。そのメンバーの一人がデスティニー・マイスターなのです」


『作り方を間違えちゃったのさ。なんでこうなっちゃったんだろう。また失敗して、ダメな世界になっちゃったんだよな。何が悪かったんだろう。もう十何回目だよ』


 あの時、デスティニー・マイスターがそんな事を口走っていた。


 何の事なのかさっぱり分からなかったが、ジオールからそう説明を受けた今だと、あの言葉の意味が十分に理解できる。


 世界を自分たちの思うがままに作り替えようとして失敗したのだ。


 その失敗には、多くの犠牲者が出たであろう事が想像できる。


 デスティニー・マイスターの言動には、命を軽視している事が顕著に表れていたため、場合によっては失敗作だからと世界そのものを消滅させたことがあるのかもしれない。


「彼らはやりすぎました。人の命を虫けらのように操れることに快楽を覚えているのです。私達は彼らと対抗する戦力を持ち合わせてはいませんでしたが、今は違います。あなたがいるのです。この意味が分かりますか?」


「分からないでもないが、その前に……」


 俺は深く息を吐き出した。


「どうして俺たち、温泉のど真ん中で突っ立って、真面目な話をしているんだろう?」


 温泉のど真ん中でするような話ではないし、俺の姿がどうにも滑稽すぎるような気がしないでもない。


 温泉につかっていて気持ちよさそうにしているオリエラがすぐ傍にいるし、身体を洗ったりしている女の子がいる中、私服姿の俺と白スク水姿のジオールが向き合って、生真面目な話を滔々と語っているのは場違いな雰囲気がしすぎる。


「では、温泉に入りながら話をしましょう。それならば不自然ではありません」


「服のままで入れと?」


「裸になれば問題ないのでは?」


「しかし、俺が全裸になるのは……」


「問題ありません。しかも、この温泉は混浴です」


 ジオールが胸を張って、そう断言した。


 温泉をどこからかひいてきたのは聞いたが、どうやってこんな温泉を作り上げたのか、それに、どの部屋を改築してこんな浴場にしたのかを聞いていない事を思い出した。


「……深く考えるのはよそう。異世界に転送とかでもう俺の常識は通用しない事は分かっているし」


 俺は一旦温泉から出て、服を脱いで裸になった。


 そこからお湯で身体を軽く洗い流してから湯船へとその身体を沈める。


 こんなに大勢の女の子の前で裸になれる自分に驚愕するが、もう何も感じていない俺自身には不感症か何かではないかと恐れずにはいられない。


 おそらくは感覚が麻痺しているだけなのだろうが。


「ふぅ……」


 温泉のせいだろうか。


 身体から一気に疲れが抜けて、精神的に楽になってきたように思える。


「続きはわらわが説明しよう」


 気配さえ感じ取る事ができていなかった。


 俺としては失態ではあった。


 背後を狐耳と狐の尻尾を持つ舞姫に取られていたのだ。


 しかも、後ろから身体を絡ませるように抱きしめてきていて、おそらくはご自慢の豊満な胸を背中にぐりぐりと押しつけてきている。


 ぐぬぬ……舞姫の奴、分かってやっているな。


「お、おうよ……」


 身体が反応しそうになるのをなんとか理性で押し切ろう。


 元気になったりしてしまってはいいようにいじり倒されるだけだ。


 俺を抱きしめているのは、ふくよかな体格の男だ。決して巨乳の女ではない。


 だから、俺は欲情なんて抱かないし、身体は何ら反応しない。


 そう言い聞かせるしかなかった。


「わらわもジオールも他の者達も、デスティニー・マイスター達のリーダーには、どう足掻こうともかなわぬのじゃ。デスティニー・マイスターとは互角であっても、あのリーダーがその気になれば、リヒテンやドンゴでさえ葬ることは可能であろう」


「そんなに強いのか?」


「ナンバー2であった事は伊達ではないのじゃよ、完遂の弥勒という男は。しかしながら、お主はどうじゃ? 本気のわらわや、最終兵器を操るジオール、騎士道を貫くリヒテン、未来予知のドンゴでさえも、本気のお主に勝てるか分からぬ」


「俺はそこまで強いのか?」


 リヒテン達と手合わせしたことがないから実感が全くわかない。


「お主はお世辞抜きにして、そこまで強い」


 俺の反応を逐一観察するようにのぞき込むように俺の表情を舐めるように見つめてきている。


 しかも、何やらコリコリとしたものが二つほど背中に故意に当ててきていて、もうどうしようもない極限状態にあると言えた。


「故に、お主に賭けてみようと思っているのじゃ、わらわ達は」


「……はぁ」


 俺がそこまで認められているという事なのだろうか。


 それとも、ただ単にいいように操ろうとしているのだろうか。


「……」


 ふと視線を舞姫から外すと、取り囲まれているに気づかされた。


 温泉から恥ずかしさのあまり出ていった東海林志織以外の女の子達が俺を取り囲むようにして、湯船につかったまま、じっと見つめていたのだ。


 俺を身体を絡ませている舞姫からもそうだが、オリエラやサヌ達から女の子のいい香りが温泉の湯気と共に俺の備考を刺激してきていて、理性で圧迫し続けているのがもう限界に近づきつつあった。


「この身体を饗することも辞さぬ。それはわらわも、ジオールも意は同じ。他の者達を顎で使うもよし、意のままに操るもよし、全てはお主の気持ち次第じゃな」


「俺への見返りはそれくらいなのか?」


 見返りが欲しいワケじゃないが、舞姫、ドンゴ達が苦戦するような奴を相手にするのに、いまいち割に合わない。


「ならば、言うが良い。お主が欲しいものはなんじゃ?」


「……欲しいもの? それは……」


 俺はさっき転送されてきた異世界でこう考えたはずだ。


 友が欲しい、と。


 親友が欲しい、と。


 正確には、俺と共に戦ってくれる友だ。


「……戦友、かな」


「くくっ、それならば、いるではないか。お主の目の前に。この子らは、友であると同時に恋人ともなろう。そのような巡り合わせの元、出会ったのではなかろうか」


「友であると同時に恋人……か」


 そういった関係があるとは想見した事がなかっただけに目からうろこではあった。


 相手を信じ、相手を思いやり、相手を愛し、相手と慈しみ合い……。


 目の前にいるサヌやエーコ達とそんな関係になったのを想像すると、有りだと思えてくる。


 まだ相手の事がよく分かっていないオリエラや、名も知らない少女との仲を深める意味でも有りだ。


「やってやろうじゃないか」


 少し前までは俺だけのヒロインを求めていただけだった。


 それが友に代わっただけになるだけではどうせ鬱屈がたまるだけの日々になりそうだし、宇宙そのものを作り替えようとしている奴らの野望を打ち砕いてやろうじゃないか。


 そっちの方が面白そうだしな。


「……すぅ……」


 俺は息を深く吸い込むと、舞姫の手を振りほどいて立ち上がり、『俺が世界の秩序を守ってやる!』と高らかに宣言しようとした。


 だが、空気と共に女の子のいい匂いを一気に吸い込んでしまったからなのか、理性のたがが外れてしまった。


 それ故に、押さえ込んでいたものがなくなり、


「……あ」


 俺自身と一緒に起ち上がってしまった。


 状況が状況だけに、全員がそちらの方を注視する。


「実に勇ましいですね」


 ジオールが俺のをなめ回すように見た後、頬を赤らめてぼそりと呟く。


「実に立派な殿方ですね!」


 オリエラがよく分からない感想を述べて、笑みを浮かべる。


「……ほぉ。もうやる気のようじゃな」


 舞姫が意味ありげに微笑む。


「にーにのにーに、だ」


 サヌがはしゃぎながら言う。


 これは俺の兄なのか?


「僕には隠せって言っていたけど、君はこんなに立派なものを持っているなら隠さなくてもいいじゃん」


 前に裸に近い姿でいた事を注意された事を気にかけているのか、ワサが不服そうに言う。


「こんなのを見せつけたって、私は負けないからね」


 顔を紅色に染めながらエーコが言うも、それは負けるフラグだろうと思ったが、さすがに俺の口からは言えなかった。


「リリの自慢なのです」


 リリが自慢げに言うも、どういう自慢だと突っ込みたくなる。


「さすがはご主人様」


 名無しの少女がそう呟いたのだが、俺はいつから君のご主人様になったんだ。


「……ッ」


 これを褒め殺しというのだろうか……。


 褒められるのは悪くない。


 自信が満ちてくるというものだ。


「……」


 しかしだ。


 俺はどうする事もできず、その体勢でじっとしているしかなかった。


 下手に恥ずかしがるのは面白がられるだけだろうし、何か言おうものならからかわれそうだし、 収束するまで我慢の子になるしかなかったのだった……。



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