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召喚獣バンクナンバー1の俺は異世界で本気を出せなくて辛い 【なろう版】  作者: 佐久間零式改
第一部 さすらいの召喚獣ランクナンバー1の男
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第4話 チェンジで ~異世界バニラソカイ編 前編~

『霞通りには、鬼が出るってウワサを知っているかい』


 これは、俺が中学生の頃に地元で噂になった都市伝説である。


 何を隠そう、この鬼はたぶん、というか絶対に俺こと本城庄一郎の事だ。


 自宅から霞ヶ丘第四中学まで直線で、8キロほどの距離だった。


 しかも、霞通りという通りに沿っていくだけで辿り着けるという位置関係にある。


 当時、俺はママチャリ通学をしていたのだが、ただのんびり走るのはかったるくて、筋肉トレーニングと称して全速力で走り抜けるというような事をやるようになった。


 最初はきつかったが、慣れれば時速40キロは出るようになり、信号の具合が良ければ、一度も赤信号で止まる事なく、学校に辿り着く事もあった。


『ママチャリだろうが、ロードバイクだろうが、クロスバイクだろうが、マウンテンバイクだろうが、原チャだろうが、とろとろ走っている自動車だろうが、なんだって抜いてやる! 何人たりとも俺の前は走らせねぇ!』


 途中からそんな意気込みになっていって、常に全力スプリントを心がけるようになっていた。


 目の前にいる自転車は全部抜いた。


 原チャだって、抜けるのは抜いた。


 車だって、そうだった。


 そんな事を卒業するまで続けていた。


 たぶん全速力で走っている時の形相が鬼のようだったからか、そんな都市伝説が生まれたんじゃないかと予想している。


 何故、こんな説明をしたのかと言えば、理由は二つある。


 一つは、異世界での俺の強さを分析したときに、特訓か何かしたかな? といくら考えても出てこなかった。


 そのため、中学生時代のママチャリ通学が異世界での強さにつながったんだと俺自身に納得させたという過去があったからだ。


 もう一つは、鬼とウワサされた事があっても、俺は鬼そのものではないという事だ。


 そう……。


 俺を鬼呼ばわりしたランク37程度の召喚獣ロイ・ペーターソン!


 俺はお前を絶対に許さない!


 絶対にだ!




                    * * *




 ロイ・ペーターソンが召喚獣として、異世界バニラソカイに召喚されたのは、ほんの2ヶ月前の事だ。


 召喚された時のロイの累計ポイントは、1289万程度である。


 召喚獣ランク30~100位くらいの累計ポイントが1000~2000万であることを鑑みれば、良くも悪くも、平均的な召喚獣レベルといえた。


 その上の召喚獣ランク20~29位がおおよそ、2500~3500万ポイント。10~19位が4000~6000万ポイントだったりする。


 9位以上となると、1億ポイント越えが出てくるが、10億を超えているのは本城庄一郎ただ一人である。


「私なんかの召喚に応じてくれて、ありがとうございました」


 ロイを召喚したのは、異世界バニラソカイに住む15歳のアリアリアース・フォンバンという、見習い召喚士のちんまい少女であった。


『まずは、お友達になりましょう』


 召喚したロイにぺこりと頭を下げた後、アリアリアースはそう言いながら、手を差し出してきたという。


 ロイはアリアリアースの手を握りながらこう言った。


『友達では駄目だ』


 アリアリアースはロイに拒否されたと思って、悲しげな顔をするも、


『召喚士と召喚獣は友達では駄目なんだ。パートナーでなければならない』


 ロイが言ったことで、アリアリアースはその言葉の意味を理解して嬉し涙を流し始めるも、にっこりと笑いながらこう言ったという。


『はい! それでは、私とあなたはパートナーになりましょう。この世界バニラソカイで一番のパートナーに!』


 そして、ロイとアリアリアースの旅が始まった。


 異世界バニラソカイに厄災を及ぼすと言われる『影』を探し出し討伐する旅に。


 二人は様々な困難を乗り越え、仲を深めて行き、そして、『影』の正体へとようやくたどり着く。


 影とは、1万匹もの甲虫軍団であったのだ。


 甲虫軍団のボス『レオパルドン・ザ・ビートル』は、バニラソカイに存在する如何なる武器をもはじき返し、バニラソカイに存在する如何なる魔法でも傷一つ付かない装甲を有していた。


 そのため、バニラソカイに住まう者だけでは討伐できないのである。


 レオパルドン・ザ・ビートルは、3匹の銃士を従えていて、その三銃士でさえも同じ耐性の装甲を有しており、この世界に住む者では討伐できない状況だったのだ。


 しかも、その甲虫軍団は作物を食い荒らし、作物がなければ動物を食い荒らし、動物がいなければ人を喰っていたという。


 誰も有効な対抗策を有していないため、バニラソカイの三分の一の大地がぺんぺん草さえはえない砂漠と化していたという。


 ロイとアリアリアースだけでは、甲虫軍団を倒せないと分かると、二人は大いなる召喚士ファルファルラ・ローゼンスに相談をしたのである。


『……成る程。ここままでは、影によってバニラソカイが滅びてしまうのだな。ならば、必要性がある。さらに強力な召喚獣の召還が』


 ファルファルラの三人の息子・大魔道士ラファス、大賢者モーシャル、大剣士ミシャスが儀式執行の指揮を執り、バニラソカイの未来をかけて、大いなる召喚士ファルファルラの召還の儀が執り行われる事となった。




                    * * *




 今日、自室のベッドの上でごろんと横になって、スマホゲーで無料ガチャを回している最中に、俺は異世界バニラソカイに召喚された。


 転送先で俺の視界に即座に入ったのは、禿げ頭だった。


 俺を召喚したのが頭を燦々と輝かせている親父だと分かった瞬間、直滑降でやる気が失せたのは言うまでもない。


「チェンジで」


 開口一番、というか、自然とそんな言葉が口から出ていた。



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