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第7話  それ、俺が一度は言ってみたかった台詞じゃないか!!


 棺桶が受け止められた事で、トンガリハットは不機嫌そうに目を細め、まぶたを痙攣させたようにひくつかせた。


「……理解した。十分に理解した。お前、宇喜田健二か?」


 まぶたの痙攣が収まるなり、人違いな事を言い始めた。


「俺はなんとかの野望で中国地方にいそうな大名のような名前ではない。いきなり人違いですか? 俺は召喚獣バンクナンバー1の男・本城庄一郎だ。覚えておいて損はないぞ」


「理解した。お前は雑魚だった、もう一人の宇喜田健二か?」


 トンガリハットが得心したかのように満面の笑みを浮かべて、戯れ言を繰り返していた。


「だから、俺は本城庄一郎だ。宇喜田健二などという名前では断じてない。人違いも甚だしいぞ、トンガリハット」


 俺とその宇喜田とやらはそこまで似ているというのか?


「……くんくん、確かにあの人と同じ匂いがする? 不思議、不思議」


 大怪我を負ってそうな白銀の女が俺に顔を近づけて、鼻を鳴らしながら匂いを嗅いでいた。


「あんたピンピンしているな。死にそうじゃなかったのかよ」


「……あれくらいは、タンスの角に小指をぶつけちゃったかな、っていう程度の傷だよ」


「そうか、お前の世界にはタンスがあって、そんな言葉もあるんだな……」


 そんな突っ込みを入れてから俺はハッと思い直して、


「……じゃなくて!! これはどういうことなんだよ!?」


「君はね、私がさっきまでいた平行世界では『宇喜田健二』って呼ばれていただけなんだよ。君のいる世界だと、君は『本城庄一郎』って呼ばれていて、強さも全然違うみたいだね」


 俺は本城庄一郎であると同時に、宇喜田健二だと?


 つまりは、他の世界では、俺は宇喜田健二と名付けられていて、すくすくと育っていた、と。


 で、他の世界の俺である宇喜田健二は、このトンガリハットにやられたという事なのか?


 俺は本城姓ではなくて、なんで宇喜田という名前なんだ?


 両親が離婚していたとか、そんなところなのか?


 名前も庄一郎ではなく、健二と名付けられていたと。


 イマイチ納得できない。


 平行世界などがあるとするのならば、そういう世界も存在したという認識でいいのか。


「……そろそろ本気を見せないとヤバイのかな」


「はぁ?!」


 倒れていた白銀の娘がさっと立ち上がり、ボロボロだというのに満面の笑みを浮かべて、そんな事を口走った。


 はぁぁぁぁ?


 それ、俺が一度は言ってみたかった台詞じゃないか!!


 俺より先にそんな台詞を言うなんてどういう了見なんだよ!!


 断固抗議する!


「私に止めを刺されたいの? レイシアは」


 レイシアと呼ばれた白銀の娘は余裕そうな目をして、おもむろにローワイズと正対した。


 レイシアは変な円月輪みたいな武器をいつのまにか構えていた。


 その武器はどこに隠し持っていたんだ?


「レイシア、喜びなさい。死んだ事も分からないうちにミンチにしてあげる」


 トンガリハットの女はそう言うなり、手を振り下ろしたのと同時に、棺桶が上から降ってきた。


 レイシアは後ろに跳んで回避した。


 避けないと俺も危ないかな、と思いながら、俺は左へと飛んで、棺桶を避けた。


 どうやら、俺の出番はないらしい。


 つまらん。


 実につまらん。


「勇ましき紺碧は相変わらずつまらないね」


 両手を地面について、くるりと宙を舞い、レイシアはさらにトンガリハットとの距離を取る。


「そんなんじゃ逃げられないよ!」


 地面に叩き付けた棺桶を一端引いてから、一歩前へと踏み出すと共に、全身をこの世界へと運びつつ、逃げるレイシアへと振りかぶって投げつけた。


「もうおしまい」


 レイシアは距離を取るのを止め、直立不動でトンガリハットを正視した。


「はあ?」


 即座にトンガリハットはレイシアの言葉の真意を知った。


「ガリアントを……」


 棺桶を回避した瞬間、ガリアントを投げていた事を悟るも、トンガリハットは反応できなかった。


 背後から飛来していたガリアントの直撃を受け、上半身と下半身とが分断されて、もんどり打つように地面に叩き付けられて動かなくなった。


「……はむっ」


 帰還してきたガリアントをレイシアは口で巧みに受け止めると、俺の方を見て、自慢げに胸を張った。


 ガリアントを口から離して手に持つと、


「さて、戻ろっか。僕がいかないといけない世界に。君がいるべき世界へと」


「……レイシア、でいいのかな? これはどういう事なので?」


「今の僕も、今の君もここはいたらいけない世界なんだ。だから帰られないとね」


「お前はどうやって戻るんだ?」


「そのためのガリアントなんだ。空間を斬る事で別の時間軸に行けるんだよ。でも、僕は戻れる事ができるけど、君は……」


「俺は……」


 不意に俺の身体が光の柱に包まれ始めた。


 異邦人である俺がようやく強制的に帰還させられるのか。


「大丈夫だよ。僕から逢いに行くからね、ダーリン」


 光の柱の中にいる俺に向けて、レイシアは投げキッスなどを寄こしてきた。


「初対面なのに求婚されるなんて思ってもいなくて。だから、逢いに行く。もっと君の事が知りたいから」


 これは火種なのか?


 それとも……




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