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第5話 ここからが召喚獣バンクナンバー1の俺の物語だ

『……そろそろ本気を見せないとヤバイのかな、俺』


 とか、


『仕方ねえな。まだ誰にも見せてはいないんだが、奥義って奴をお前だけにお披露目してやるよ』


 とか、そんな台詞を一度でも口にしてみたい。奥義なんてものはないし、本気がどれほどのものかまだ俺自身知らないが。


 それに、俺がボコボコにされるくらいの強敵が出現して、現実世界の時間とは比べものにならないくらいゆったりと時間が流れる部屋で数ヶ月修行してみたり、適度な食事と運動をしてB級からS級にランクアップしたり、戦いの中で潜在能力が覚醒してみたり、やれそうになっていたところを戦友が助けにきてくれたりとか、そんな展開を心のどこかで望んでいるのに、そうならない現実は如何なものか。


「また一発で終わりかよ。邪神とか名乗りながら、防御力もへったくれもありゃしない」


 俺は転送された異世界でまたしても邪神とやらを一撃で倒してしまった。


 あっけなさ過ぎた事もあり、俺は茫然自失としていた。


 俺を召喚した召喚士が『あやつこそが最強の邪神!』と何度も言っていたからワクワクしていたのに雑魚すぎた。あの時のわくわく感を返して欲しいくらいだ。がっかり感に変化した時のあの気持ちの落ち込みようはいかんともしがたい。


「召喚獣ランクナンバー1はつらいぜ」


 俺こと本城庄一郎は、数ヶ月前に召喚獣アプリ『メソポタミア』に登録した事で、依頼があれば即異世界へと転送される『召喚獣』になった。


 召喚獣アプリとは、召喚獣という名目の凄腕の傭兵を異世界に転送するシステムである。


 召喚士によって召喚されると、登録している召喚獣は半ば強制的にその異世界へと飛ばされ、その異世界で召喚士から依頼を受けるのである。


 その依頼を解決すると、その異世界にはこれ以上存在してはならいものとして強制的に帰還させられるシステムとなっている。


 その異世界の住人では解決できないような問題を解決するのが、召喚獣という『外来種』である。


 そんな召喚獣システムにはポイントがあり、その累計ポイントによって、召喚獣の順位が決まっていく。


 俺が召喚獣アプリに登録した一ヶ月後くらいには、もう累計ポイントがたまりにたまって一位になっていた。そして、そこからずっと俺の順位は変わらないでいる。要は不動の一位だ。しかも、日々召喚獣としてミッションをこなし順調に累計ポイントをためているおかげで、今では、二位の召喚獣とは一桁ほど差が付けている。だが、俺は順位だとはあまり興味がない。


「俺の召喚獣としてのこれからの目標は……」


 ちょっと前までは、ヒロインを探し続けていたのだが、その目標を達成したようなものなので、ヒロインとの出会いはなるべくなしの方向性でお願いしたい。


「友だ。親友と呼べるような友だ。俺は友と出会うために異世界に転送され、世界を救っていく」


 俺は徹夜で語り合ったりできるような友と出会いたい。


 許嫁やら何やらが一気に増えてしまったのだから、もうヒロインは必要ないだろう。


 これからは、親友の時代だ。


 親友こそが俺には必要なものだ。


 だから、出会いを求めるのだ。


 召喚獣として。


「出会えるかな、俺は……」


 邪神を倒し、無事にこの異世界での依頼を達成したからなのだろう。


 元の世界へと転送させるシステムが稼働し、俺の身体が光の柱に包まれていく。


 ミッションコンプリートの証のようなものであり、これは転送される時に儀式のようなものだ。


 異邦人は強制的に帰還させられる。


 この異世界では、もう異質な存在であるとして……。


「あれ?」


 しかし、いつもと勝手が違って、光の柱が収束してしまった。


 まだこの世界にいろ、とでも言いたげに。


「……なんだ?」


 召喚獣システムの不具合か?


 そう思っていると、頭上から何かが降ってきて、俺の目の前にどすんと大きな音を立てて落ちた。


「……人? いや、違う。ケモ属性の女の子?」


 白銀の狼の耳と尻尾を持つ少女が俺の前に落下してきたようだった。


 傷が全身にあり、そこから多量の血が流れ出しており、今にも死んでしまうんじゃないかと思えるくらいの有様だった。


「……き……みは?」


 そこまでのダメージを負いながらも、ケモ属性の人は俺の事を見て、呑気にもそんな事を訊いてきた。


「……俺か? 俺は本城庄一郎だ。召喚獣バンクナンバー1のエリートだ」


「メソポタミアの人?」


「そうだな。アプリの名前はメソポタミアだ」


「……良かった……」


 張り詰めていた緊張感から解放されたかのように、ふっと笑うなり、白銀の少女は目をそっと閉じるなり、動かなくなってしまった。


「死んだのか?」


 生きているかどうか確認しようかと思い、その少女に近づいて、しゃがみ込んで抱き起こそうとしたときだった。


 俺と白銀の少女の身体が影で覆われた。


 また人が振ってきたのか?


 そう思って見上げると、今度は人ではなく、棺桶が俺達の方におちてこようとしているところだった。


 しかも、相当なスピードで。


「おっと」


 俺は慌てて白銀の少女の事を抱き起こすなり、横に飛んで棺桶から逃れる。


 棺桶の直撃は回避できたものの、少女が思いのほか軽かったので、勢いがあまりすぎて、なんていうか、すっころんだ形になった。


「ふごっ?!」


 気づくと、俺は柔らかい『何か』に顔を埋めていた。


 地面か?


 地面にしては柔らかすぎる。


 なんだろうかと思って、顔を上げると、そこにあったのは、白銀の少女のお尻であった。


「……こんな時に……求婚しなくても……」


 少女はまだ死んでいなかったようで、俺の方を振り返るようにして見て、そんな事を恥ずかしそうに呟いた。


「……は? 求婚ってどういう事だよ!?」


「白銀の一族は……お尻の匂いを嗅ぐ事が求婚のポーズ……なの」


 なんですか、それは?!


 しかも、こんな瀕死の状態なのに意識がはっきりしているようだし、これはどういう事なんだ?


 それにあの棺桶は何なんだ?


 元に戻れなくなった事と何か関係しているのか?!




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