第3話 学園生活
宇喜田健二と白銀の少女は同じクラスだった。
ヒロイックウェポンを使える者が入学している事もあって年齢はまちまちで、下は十歳から上は六十歳までと幅広かった。
そんな中であっても、狼と人との混血であるかのように狼の耳と尻尾とを有する彼女は際立っていた。
あのオリエンテーションの次の日、教室に彼女が入って来ただけで色めき立った。
騒がれている事など意にも介していない様子だったが、彼女は宇喜田の顔を見ると、尻尾を左右に揺らし始めて、積に座っていた宇喜田の前まできた。
「僕と同じクラスなんだ」
目をキラキラとさせながら興味津々といった様子で宇喜田を見ている。
「よろしくな」
宇喜田は立ち上がり、手を差し出すと、白銀の少女はキョトンとした表情を見せた。
「握手がしたいんだが」
「あ~、そういう事なのね。僕にはそういう習慣がないから」
白銀の少女は両手を差し出してきて、宇喜田の手を両手で包み込むように優しく握ってくれた。
「僕の名前は、レイシア・ウィズ・シルバーウルフ。よろしくね。実力はどうあれ、いの一番で向かって行った君には敬服したい。一番槍は高貴なものだしね」
「俺の名前は宇喜田健二。よろしくな」
レイシアは手を離すと、尻尾を振るのを止め、真剣な眼差しで宇喜田を凝視した。
「唐突で悪いけど、勇ましき紺碧って聞いた事ある?」
あの日、ゴーレムにも同じ事を訊いていたはずだが、生憎なことに宇喜田はその名を聞いた覚えがない。
「いや、ないが」
「やっぱりね。でも、もし、その名を耳にしたら僕に教えて欲しい。いいかな?」
「ああ、分かった。それって宇喜田たちみたいな人なのか? それとも、レイシアに似ている人なのか?」
「僕に似ているけど耳と尻尾の色が違うんだよ。紺碧色って言って、深く濃い青なんだ」
「深く濃い青……か」
白銀のレイシアとは違い、深く濃い青の毛並みの人を想像しようとしてもできはしなかった。
「僕はそいつを追ってこの世界に来ているんだ。来ていると言っても、もう戻る事はできないけどね」
「……え? 戻れない?」
一瞬聞き間違いか何かかと思ったが、そんな事はあり得ない事に気づいた。
「戻る気がないって意味ね」
レイシアは屈託無くそう口にした。
どう返していいものか宇喜田が悩んだくらい、陰りのない表情をレイシアは見せていた。
「先日まで政府のひみつきかん?っていうのにお世話になっていたけど、まだまだこの世界の事が分かっていないから、変な事をしていたら教えて欲しいかな。一番槍の君は信用出来そうだし」
レイシアは宇喜田の手を取り、何をするのかと思っていると、かぷりと甘噛みした。
「っ!?」
「これが僕のコミュニケーションの取り方の一つかな?」
手を引いた方がいいのか分からず混乱しかける宇喜田に、レイシアは甘噛みしたまま、満面の笑みを浮かべていた。




