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第2話 超法規的教育機関・朝来学園


「新入生ども! 先輩の活躍を刮目して見てろ!」


 先輩である服部半次郎(はっとりはんじろう)が日本刀タイプのヒロイックウェポンを鞘から抜き放ち、後方で見学している宇喜田健二(うきた けんじ)たちに向かって言った。


 ヒロイックウェポンを持ってきているのだから、戦ってみたい気はするのだが、新入生のオリエンテーションという事もあり、戦いはなしの方向性のようだった。


「いずれ、あんた達もあたいらみたいにヒロイックウェポンを扱えるようになれるさ」


 服部のパートナーである斎宮満津里(さいぐうまつり)が薙刀タイプのヒロイックウェポンを構えた。


「俺様たちみたいにヒロイックウェポンって奴を使いこなせるようになるには、まだまだ時間がかかるがな!」


 空間が歪み始め、辺り一面に過度な重力がかかったかのように陥没し始め、何もない空間に唐突に巨大な鉄門が出現した。


 門がゆっくりと開き始め、地球の空気とは異なる、禍々しくも光の粒子を含んだものが隙間から漏れ出てきた。


 そして、門が半分ほど開いたところで、肉の塊かのような物体がのっそのっそと出てきた。


 一匹ではなく、何匹も続々と門から這い出てくる。それはアウトサイダーズと呼ばれる異世界の化け物であった。


「……まあ。ぞろぞろと。あたいに倒されに来るなんてね」


「雑魚が!」


 服部と満津里が同時に動いた。


 次から次へと門からわいて出てくる肉塊の化け物の方へと地面を蹴って飛ぶように迫り、化け物が間合いに入るなり、閃光を煌めかせながら、門との距離をつめていく。


 その二人が通った後には、化け物たちの文字通りの肉塊しかなかった。


「……凄い」


 先輩二人の動きを見て、入学したばかりの宇喜田健二は、そんな感慨を呟く事しかできなかった。


 超法規的教育機関・朝来学園(あさごがくえん)は、ヒロイックウェポンと呼ばれる武器を操れる者だけが入学できる教育機関である。


 義務教育とは異なり、ヒロイックウェポンを操りさえできれば、年齢など関係なく入学可能である。


 ヒロイックウェポンとは、選ばれし者が構えると、様々な能力が発動する武器の事である。


 発動する能力は持ち主によっても異なったりする。


 異界の門と呼ばれるものが現世に出現するようになった頃から、様々な武器にそのような特性が付くようになり、伝説の武器などと称されるものを特定の者が持てば一騎当千とさえ噂されている。


「ははっ、手応えがねえな」


「……ハァ。準備運動にもなりゃしない」


 門から出てきたアウトサイダーズを全滅させて、服部と満津里は一息ついた。


「……まだ終わってないよ」


 宇喜田の後ろからそんな声が聞こえてきた。


 誰がそんな事を、と思って宇喜田は振り返った。


 人のような外見をしているが、狼のような白銀の耳を持ち、耳と同じ白銀の尻尾をはやした少女が開きっぱなしになっている門を見つめていた。


「ッ?!」


 少女のその言葉を裏付けるかのように、開いたままになっていた門から巨大な岩石が飛んで来て、無防備に近い服部を襲った。


 不意打ちに近い攻撃を避ける事ができずに岩石の直撃を受け、盛大に吹っ飛んだ。


「何!?」


 満津里が門を見据えた時には、門から何者かの石の腕が満津里を狙うように突き出されていた。


 腕はゴムで何かであるようにぐんぐんと伸びていき、満津里を捉えようとしていた。


 咄嗟に無銘刀を鞘から抜き放ち、宇喜田は前へ前へと駆け出ていた。


「やる!」


 満津里は石の拳を薙刀で受け止めたが、相当な力であったのか、そのままの体勢で後ろへと押し飛ばされていた。


 宇喜田は上段へと刀を振り上げ、石の腕に一刀両断を加えると、能力が発動しているためか、紙を切るよりも簡単に断ち切っていた。


「君、凄いね。一番槍を取るなんて」


 声と共に、宇喜田が手にしていた刀が妙に重くなった。


 見ると、先ほど宇喜田の後ろにいた白銀の耳と白銀の尻尾を持つ少女が振り下ろした刀の剣先に片足で軽やかに乗っかっていたのだ。


 体重をかけているワケではないのだろうが、 剣先に人が乗っているとは思えない軽さは、ちょっとした奇術のような感覚だった。


 門の中から巨大なゴーレムが門をこじ開けながら、こちらの世界へと出ようとし始めた。


 白銀の少女はそんなゴーレムを見据えるだけで何もせず、ただただ宇喜田の刀の剣先に乗り続けていた。


 そして、ゴーレムが完全にこちらの世界へと来ると、剣先からちょいと降りて、待ってましたとばかりに呟いた。


「……来て。ガリアント」


 少女の求めに応じるかのように白銀よりも輝きのある円月輪が少女の前に出現した。


 円月輪を手に取り、ゴーレムを見据える。


「ねえ、勇ましき紺碧って知っている?」


 最初、誰に訊ねているのかと思ったのだが、その視線からどうやら少女はゴーレムにそう問いかけたのが分かった。


 だが、ゴーレムは何も答えず、拳を振り上げた。


「知らないんだね。なら、もういいや」


 手にしていた円月輪をフリスビーでも投げるかのように軽く放ると、ゴーレムが今まさに振り下ろした拳を軽快に粉砕しただけではなく、その巨体をも砕き、開いたままとなっていた門さえも粉々にした。


 門は砕けた瞬間に煙のように消滅し、ゴーレムはただの砂へと戻って行った。


 目標を駆逐した円月輪は弧を描くように白銀の少女の方へと向かって行くが、平然とした様子であった。


「危ない!」


 宇喜田がそう言うと、白銀の少女は宇喜田をちらりと見て、微かに微笑んだ。


「ガリアントは白銀を貫かない」


 白銀の少女は戻ってきた円月輪をフリスビーであるかのように口で受け止め、分かったでしょ? と言いたげに宇喜田の事をみやった。



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