表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/53

第1話 異世界からの訪問者



――――――――数年前。



 中世欧州的な内装の会議室に獣とも人とも違う奇異な姿の者達が席に腰掛け、真剣な面持ちでとある一人の男の言葉を待っていた。


 狼の耳と尻尾を持つ『白銀』と言われる狼族の長老は、そこにいるすべての者達の重苦しい視線を受けて怯むどころか、内よりいずる威厳で押し返している。


 その空間は長老によって支配され、沈鬱な空気が流れており、誰一人として無駄口を叩こうとはしていなかった。


「勇ましき紺碧の耳どもは、別の時間軸より持ちこんだ核爆弾とやらを使おうというのか。我らを滅ぼすには余りあるほどの兵器であるそうだな、核爆弾とやらは」


 長老は厳かに言ったが、その表情に絶望の色は皆無であった。


「それは我ら白銀がそこまでの一族であるという証左でありましょう。誇らしき事です」


 左耳が一部ちぎれている一人の男が口を開いた。


 他の者達もまた長老同様、希望を失ったような素振りはみせていない。それどころか自信満ちた表情さえ伺わせていた。


「時間軸を歪めてまで勝利を求める執念、感服に値する。だが、我らとて黙って滅びの時を待つほど愚かではない」


 長老のその言葉に皆が相槌を打った。


「我らが滅ぶは宿命である。だが、原因は断たねばならん。そのためのガリアントだ」


 またしても一同が静かに首を縦に振った。


「この時間軸の我ら死すとも、我が一族の誇りは死せず!」


 長老の一言で全員が立ち上がる。


「我が一族の誇りは死せず!」


 白銀の誇りを示すかのように皆、声を上げる。それはまるで雄叫びのようであった。


「我らには我らの戦い方がある」


「我が一族の誇りは死せず!」


「さて、我らの滅びの時はいつであろうか? 今か? いや、違う。未来である!」


 長老は不敵な笑みを浮かべた。


「レイシアを呼べ。あやつにガリアントと共に我らの次なる未来を託す。この未来での死を無駄にする事がないよう、我らは尽力せねばならぬのだ」




 * * *




「……そうか、ここが別の時間軸」


 長老からガリアントを託されて、どこかの時間軸へと飛ばされたのだけど、今まで見た事のないような城とは違う、キラキラとした輝く装甲のようなものがはり巡らされた長くて高い建築物らしきものがそこここに屹立としている場所にレイシア・ウィズ・シルバーウルフはいた。


 来たのはいいけど、ここで何をすればいいというのだろう。


 何をすれば、希望へと結びつく事ができるというのだろう。


 どうすれば……とレイシアが考えていると、空から聞いた事のない奇異な音が響いてきた。


 バリバリバリ、と空を切り刻んでいるかのような音に思えた。


 なんだろうかと思って、天を仰いでみると、数体の箱のようなものが何かをぐるぐると回転させながら、僕の方へと近づいてきていた。鳥とは違い、無機質すぎた。


「……生き物?」


 僕は耳を立てて、箱のような物の動向を探る。


『こちら、チームB。特異点観測ポイントに到着』


 箱の中から声がしたのが拾えた。


『人ではない何かを発見。指示を願う』


 テレパシーか何かで話し合っているのか、レイシアにはこの声の主と会話している者の声を聞き取る事ができなかった。


『了解。ただちに捕獲行動に移る』


 言葉は少なめであったけど、レイシアはすぐさま理解した。


 この箱のような物の目標はレイシア自身だという事を。


 ここは素直に捕獲される方がいいのかもしれない。


 生きてさえいれば、長老達に顔向けできる可能性が出てくるのだから……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ