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召喚獣バンクナンバー1の俺は異世界で本気を出せなくて辛い 【なろう版】  作者: 佐久間零式改
第一部 さすらいの召喚獣ランクナンバー1の男
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第2話 すまないな、俺の属性攻撃って手加減が難しいんだ



 家に帰ると、俺は自室に直行して、ベッドに身体を投げ出した。


 鞄に入っていたスマートフォンを取り出し、召喚獣アプリ『メソポタミア』を起動させた。


『は~い、本城庄一郎さんですね』


 そんな声がスマホのスピーカーから流れてきた次の瞬間には、俺の身体が異次元空間そのものといった場所へと転送されていた。


 ベッドに横たわったままの格好で、時の流れが線として表現されているような真っ暗な空間にぽつねんといる。


 次元の狭間にいるかのような感覚だ。


「こんばんは、本城庄一郎さん。今日はどうしましたか?」


 俺一人の空間に、一人の白いスクール水着を着た少女ジオールがぱっと現れた。


 外見から察するに、年は俺と同じくらいだが、中身はただのプログラムか何かなのか、事務的な対応しかしてくれない。


 このアプリケーションのNPCなのだろう。


 ちなみに白のスクール水着は俺の趣味だ。


 獲得したポイントを使って購入し、ジオールに着てもらっている。


「ポイント交換がしたい。上位者用のリストを見せてくれ」


「今日のミッションで2000万ポイント追加されました。本城庄一郎さんが現在所有しているポイントは、3億2000万ポイントです。で、上位者用の交換リストですね。こちらです」


・猿の手 2000万ポイント


・全快の薬 4000万ポイント


・超人の薬 6000万ポイント


・奇跡の光 8000万ポイント


・時の種 1億ポイント


 リストがスマホの画面に表示された。


 猿の手はとある物語で有名なアイテムだ。


 全快の薬はその名の通りどんな怪我をしていたとしても飲めば全快になり、超人の薬は能力アップする平凡な薬であり、奇跡の光は使えばちょっとした奇跡が起こるらしい謎アイテムだ。


 そのリストの中で、俺が欲しいものは1億ポイントで交換できる『時の種』だ。


「時の種を……そうだな、2つほど欲しい」


「2つで2億ポイントになりますが、いいですか?」


「ああ、それで」


 時の種は、1分ほど時間を戻す事ができるチートアイテムだ。


 このアプリ……もとい、召喚獣システムは、この世というべきか、この世界、強いては宇宙の創造主か何かが気まぐれで創ったものなのだろう。


 だから、そんなチートアイテムまで用意されている。


 とはいえ、俺がやりすぎてしまうから、こういうアイテムが必須なんだけどな。


「あ、そうそう。本城庄一郎さんに特別なミッションのお誘いがあります」


「……で、内容は?」


 欲しいアイテムを手に入れたから、そろそろアプリを終了しようかと思っていた。


 こうして依頼を打診されるはよくある事なので、話だけでも聞いてみることにした。


「召喚獣ランク20位の方が失敗したミッションがあるのですが、それを本城庄一郎さんに提案してみては、と思いまして」


「ランク20……ね」


 俺は鼻で笑いそうになった。


 召喚獣ランク10位以内でないと大したことがない。


 たかがランク20の奴が失敗したミッションを俺に振られても困る。俺じゃなくても、10位以内の召喚獣ならば余裕でこなせる内容であろう事が予想できた。


「とある異世界に氷雪魔神アルファミルという魔神がいるのですが、アルファミルが住まう世界だけではなく、この宇宙を凍り付かせようとしているそうです。困った事ですよね。つまり、このミッションは、アルファミルの討伐です」


 唐突に召喚されることもあれば、こういうふうにミッションを与えられて召喚される時もある。


 どういうふうに召喚されるかは、選べたり、選べなかったりするということだ。


 突然召喚されるなんて事が当たり前なので困りものだが、のんべんだらりと生きている中での突発的なイベントみたいで俺は好きだった。


「雑魚そうな名前だな、アルファミルって。なんか力強さを感じない」


「それはランク1位の本城庄一郎さんだから言える事ですよ。召喚獣ランク30位以降の方ですと、震え上がるほどの強さなんですから」


「だから、俺が選ばれた、と?」


「はい。本城庄一郎さんでしたら、絶対に勝てると思いますし」


「そこまで俺を買ってくれているのならば受けようじゃないか」


「ありがとうございます。召喚士の方に召喚してもらうよう言っておきますので、少々お待ちください」


 三分後、俺はアルファミルという奴がいる異世界に召喚されていた。


 今度こそ、メインヒロインに値するであろう召喚士が俺を召喚しているに違いない、なんて淡い期待をしていたが、ものの見事に裏切られることとなった。


 敵が氷雪魔神アルファミルという時点で察するべきだった。


 俺を召喚したのは、雪だるまだったのか、転移された俺の前に一体、というべきか、一匹の雪だるまが立っていた。


「俺を喚んだのは……無機物……なのか?」


 そろそろ召喚士の美少女が出てきてもおかしくはないはずなのに、どういう事なのだろう……。


 しかも、この世界は、氷の世界そのものだった。


 視界には氷しかないし、雪が降っているし、気温が低くて、長居をすれば凍死しそうだ。


「召喚に応えていただき、ありがとうございます」


 召喚士である雪だるまが深々と頭を下げた。


 というか、雪だるまがお辞儀をする事に驚愕を禁じ得なかった。


 人と変わらぬ動作で頭を下げる雪だるま……なんか斬新だ。


「で、アルファなんとかはどこだ? 寒いから倒して、とっとと帰る」


 なるほど、この世界の住人は雪だるまのようだ。


「アルファミルは、この先にある居城にいるはずです」


 雪だるまがとある方向を指さした。


 やはり、雪だるまが動く事に違和感を覚えたが、それは気にしない方がいいのかもしれない。


「この先か。そこまで行くのが面倒だし、一気に片を付けるか」


 俺は目をこらして、雪が降りしきる先にあるものを見定める。


 遙か遠方に、氷柱によって築き上げられたような城が見えた。


 透明感のある、芸術的な建物であった。


「魔神がいるのは、氷の城か?」


「はい。あの城には、アルファミル以外にも大勢の強者がいて、十二氷将や、四氷柱王、それに……」


「いやいや、俺に説明は不要だ。誰がいようが俺には関係ない」


「何故です?」


 雪だるまが不思議そうな顔をした。


 おお、雪だるまに表情がある!


 奇妙な事、この上ない。


「そうだな。ここから炎の属性で遠隔攻撃して終わらせる。歩いてあの城に行くとか凍え死にそうだし、それが一番手っ取り早そうだし」


 属性攻撃程度、俺にできないワケがないし、普通に使える。


 だが、滅多には使わない。


 手加減が難しいという問題があるのだ。


「狙い撃つ」


 俺は右手を構え、人差し指で氷柱の城に狙いを定める。


 人差し指の先に炎の玉が出現する事をイメージして数秒。


 あめ玉くらいの大きさの炎の玉が、人差し指の先にできあがっていた。


「食らいやがれ!」


 拳銃でも撃つかのようなポーズをして、炎の玉を氷の城めがけて放った。


 俺が生成した炎の弾丸は降りしきる雪を一瞬で蒸発させ、炎の弾丸の軌道上の氷の大地を瞬時に溶かし、その下にある土の大地を露出させながら、氷の城へと迫る。


 氷の城に直撃するなり、盛大な炎の柱が上がり、天さえも焦がしていった。


「これで終わりかな?」


 しばらくすれば、炎の柱が消滅して、魔神が倒せたかどうかわかるはずだ。


「……あれ?」


 しかし、炎の柱は消えるどころか、激しさを増し、広がっているようにさえ見えていた。


「やばいな」


「どういうことで?」


 召喚士の雪だるまが不安そうに言う。


「すまないな、俺の属性攻撃って手加減が難しいんだ」


 その言葉を証明するかのように地響きと共に、目の前に炎の柱が立ち上った。


 この星にもマグマ層があるのならば、その層まで俺の属性魔法が到達してしまった可能性が高い。


 で、マグマ層に貯まっていたマグマが噴き出している……そんなところか。


「あの程度でマグマ層に到達するとは……困ったものだな。こういうときは、今のはメラゾーマではない、メラだ、とかそういう台詞を言うべきなのかな?」


 俺は頭を抱えると同時に、自分の強力さを恨まずにはいられない。


 手加減したつもりが手加減が全然できていない。


 強者故の悩みか。


「うおっ?!」


 地表には次から次へとマグマのような炎の柱が立ち上り始めた。


 手加減をしたつもりの炎の弾丸は、どうやら俺の予想を遙かに凌駕したよりも手加減できていなかったようだ。


 火山活動まで一瞬にして活発にさせてしまったようで、この世界を壊してしまうほどの威力であったらしい。


「こういう時のお助けアイテムだよな。時の種を使うべき時か」


 世界そのものを破壊してしまう攻撃をしてしまったのは何度目だろうか、と思いながらも、俺は1億ポイントで交換した時の種を早速使って、1分ほど時を戻した。


「ふぅ……仕方がない。居城に乗り込むか」


 この世界でも、属性魔法は禁止して、俺は肉体言語を使うしかないようだ。


 結局、なんとか魔神は、居城に乗り込んで、一発ぶん殴って倒したのであった……。


 俺はもうちょっと力をセーブするように心がけた方がいいのかもしれない。


 手加減をするという事は大変に疲れる事だ。


 ストレスがたまって仕方がない。


 そんなストレスを軽減してくれるヒロインが俺の事を召喚することを切に願う。


 どこにいる、俺のヒロイン。


 俺は君に会うために、どんな異世界にだって行くし、どんなミッションもこなしてみせる。






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