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召喚獣バンクナンバー1の俺は異世界で本気を出せなくて辛い 【なろう版】  作者: 佐久間零式改
第一部 さすらいの召喚獣ランクナンバー1の男
19/53

第19話 話をしよう。俺の事を知って欲しいし、君たちの事が俺は知りたい

『異世界オールオールド その4』







「今回の種はいい男ね!」


「若いし、きっと種も元気よ!!」


「ああ、はやく種が欲しいわ!!」


 聞きたくもない声が背後から数多聞こえてくる。


 俺は相変わらず逃げ続けている。


 蹴散らしてもいいのだが、それは違うような気がして、俺は逃げ続ける事に決めていた。


 しかしだ。


 こいつらの前じゃ、俺はただの種扱いなのか?


 俺をもの扱いしているような奴らに捕まってたまるか!


 俺は自分の事を好いてくれる奴以外に、この身体を好きにさせる気はないんだ。


「ッ?!」


 銃声がとどろいて、俺の足下を銃弾がかすめていった。


 今だとゼクスの言っていたことが痛いほど分かる。


 本能で行動しているから理性も何もあったもんじゃないってところか。


「ッ!」


 腕に何かが刺さって痛みが走った。


「俺を象か猛獣か何かと思っているのかよ!」


 刺さったのが象などに使う麻酔薬だと分かったが、やはり今回も効果はほとんどなかった。


 だが、何か執念みたいなものを感じて、背筋が凍るような思いに囚われた。


 種の保存の行き着く先は執念だと思い知ったような気がしたからだ。


「……」


 しかし、俺はここで種馬として朽ち果てるワケにはいかない。


 ここにいるのは、24時間らしいが、後どれくらい時間が残っているんだろう。


 召喚獣として強敵との死闘の末、死ぬのはやぶさかではないと思ってはいた。


 それが、まさかまさかの種馬エンドを迎えるワケにはいかないのだ。


 まだやられちゃいないが、こんな場所で誰かに捕まって、身体を好き勝手される事になるんだったら、俺のいる世界で誰かと愛し合ったりすればよかったな。


 俺の家に転がり込んできた、あの四人のうちの誰かに手を出してみたり、愛を語り合ってみたり、ちょっと触れあってみたり、他愛ない会話をしたりするのもありだったかな。


 東海林志織とお泊まりデートするなら、その前にちゃんと話し合ったりする必要もあったし、俺の事が嫌いなのになんでデートするのかと訊いてみたかったな。


 なんで、俺は近くにいる女の子ともっと触れあっていなかったんだろう。


 どうして俺はもっときちんと周りの女の子と向かっていなかったんだろう……。


『諸君、私はオールオールドの大統領ゼクス・カリバーである。今日は重大な発表があって、この緊急放送を流している。理性を失った者達よ、正気に取り戻る時が来た』


 ゼクスの声がどこからともなく反響した。


『捕らえし者達を解放せよ。我が国はワクチンの開発に成功した。理性ある者のみに投与を開始する。故に、捕らえし者達を解放せよ』




 * * *




「私とニールを糾弾した者達を弾圧しようかと思っていた時の事だ。ニールは言っていた。愛と理性があるのならば、弾圧すべきではない。弾圧するようならば、ゼクス、あなたは彼ら同様、理性も愛もない人間だ。愛するに値しない人間だ、と」


「……何の話で?」


「君の言葉はニールの言葉そのものであった。あの時、ニールが私の前に現れたのかと思ったのだよ。私が人でなくなりつつあるのを叱咤するために。故に、私は人に戻ろうと思ったのだ」


 逃げる必要がなくなってホッとしていると、ゼクスが俺に会いに来て、そんな事を言って大統領府へと足早で戻っていった。


 何が言いたいのかちょっとよく分からなかったけど、自己解決したであろう事が予想できた。


 俺の言葉の何かが心に刺さったのだろう。


 間接的に俺が大活躍といったところか。


 種役をやる前に解放されたし、俺、大勝利か。




 * * *




 二十四時間が経って元の世界に戻ると、リビングで六人の人物がくつろいでいた。


 リリ、エーコ、ワサ、サヌ、ジオールにはいいとして、知らないおっさんが床に寝転んでいるのはさすがに引いた。


「解決しちまうなんてつまらねえな、おい! ちゃんと種役してこいよ!」


 おっさんは俺を見るなり、眼光鋭く睨み付けてきた。


「どこのどなたかは存じませんが、悔しいの? ねえ、悔しいの? 俺があの世界の問題を解決しちゃったりしたのが」


 おそらくは運営側の人間だとは想像できたが、俺はあえてあおるスタンスを取った。


「悔しかねえよ。ただ、つまんねぇ展開だったなって思ってな」


 おっさんは起き上がり、ぼりぼりと頭をかいた。


 立ち上がると、俺よりも体躯のいい大男であるのが分かった。


 ばっちりした体格をしていて、さながらフランケンシュタインといったところか。


「お前、猿の手、交換してたよな?」


 オールオールドの話題が続くのかと思っていたら、急に話題を変えてきたので、俺は鼻白んだ。


「……うん。持ってはいるが、使ってはないな」


 何で猿の手なんて言い出したんだ、このおっさんは。


 ここにいる誰かが言ったんだろうか?


 確か、部屋の引き出しに入れて保管してあるはずだ。


「なら、がんばれよ」


「……何の事だ?」


「じきに分かるさ。せいぜいがんばれよ」


 含みのある言いぐさ。


 何かあるというのか、猿の手に。


「何か知っているのか?」


 だが、俺に言うべきことはないと言いたげに、俺に背中を向けた。


「おい、ジオール、帰るぞ」


「一人で帰ってください。私はもう少し残りますよ」


「仕方ねえ、一人で帰るか。ああ、言い忘れてた。俺の名はドンゴ。また会うだろうから覚えておけ、へたれ野郎」


 こいつか!


 ジオールに変な台詞を言わせた奴は!


 それはいいとして、ドンゴは玄関から普通に出て行った。


 創世のメンバーなのだから、もっと格好いい退出の仕方をするんじゃないかと期待していたのだが、裏切られる形となってしまった。


「結構恥ずかしがり屋さんなんですよ、ドンゴは。面と向かって言えないから、私にあんな台詞を言わせたんですから」


 唐突に、ジオールがアプリを起動させた時によく見せていた営業スマイルになった。


「本城庄一郎さん、とっておきのポイント交換情報です! この四人の戸籍などが、今ならなんと一人あたり500万ポイントで取得可能ですよ! 学校に通ったり、日本で生活するにはとても大事なものですから500万ポイントで取得しませんか? 一緒の学校に通えば、学校内でラブコメし放題ですよ! ただし、ここは日本ですので、日本人ぽい名前に改名しないといけませんが、どうですか? いいお話だと思いますよ? 好きになった子ができたら、結婚だってできるんですよ! 子供ができたって認知だってできるんですよ! とってもお得ですよ!」


「いやいや、ラブコメイベントが起きるとは限らないだろうが」


 ジオールは終始ニコニコしている。


「今の話、どう思う?」


 今の提案を四人はどう思っているのだろうか。


「リリは構わない」


 リリ・ポーアは真剣なまなざしで言う。


「私は同じく」


 エーコ・ピアッサは首肯した。


「僕はオッケーだよ」


 ワサ・プロシェルが元気よく頷いた。


「にーにが、いいって言うなら……」


 サヌ・リアッツ。


 いつから俺はお前の兄になったんだ。


「こんな感じだ。4人分だから2000万ポイントを消費して手続きを進めてくれ」


「それでは、2000万ポイントを使用して、手続きを開始しちゃいますね。明日の朝くらいには、手続きなどなど完了していると思いますよ」


「よろしく頼む」


「それじゃ私は帰りますね。色々とねじ込んでおきますよ」


 眩しいほどの笑顔を俺に向け、ブロックノイズを残しつつジオールの姿がそこから消えていった。


 まるで最初からジオールなど存在してなかったように。


「これくらいやってくれないと、格好良くないよな」


 ジオールが去ってすぐ、俺は椅子に座り、四人と向き合った。


「話をしよう。俺の事を知って欲しいし、君たちの事が俺は知りたい」


 俺に必要なのは相手を知ることだ。


 知らなければ触れあうことさえできない。


 そういう事が今回の件でよく分かったのだから……。





 * * *





 猿の手が気になったので、話し合いが終わった後、保管してあるはずの引き出しを開けてみるも、猿の手はそこにはなかった。


 リリ達に確認したが、誰も何も知らないという事だった。


 いつの間になくなったんだろうか?







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