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召喚獣バンクナンバー1の俺は異世界で本気を出せなくて辛い 【なろう版】  作者: 佐久間零式改
第一部 さすらいの召喚獣ランクナンバー1の男
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第16話 俺と志織がデートする事になっただと!!

『異世界オールオールド その1』





 目を覚ますと、俺は少女の股間に顔を埋めていた。


 最初は枕かと思い、もぞもぞと顔を動かも、頭上から微かな吐息が聞こえてきたので目を開けると、白い布地が見えたため、その事にようやく気づいた。


 右手が誰かのない胸を触っていたり、左足に誰かが抱きついていたりして、俺自身、どんな状況になっているか把握さえできない。


 四畳半の俺の部屋に五人が寝るような事態になっているのだから、もうどうしようもない。


 何故このようになってしまったのか説明する必要はあるような気もするが、しなくてもいいような気もする。


 だが、俺はどうしても説明したい。


 酒池肉林などではないのだから……。




『変身をあと2回も残している。その意味がわかるな?』


 異世界ダブルアークで、召喚士パ・オを追い詰めると、突然そんな事を言い出したので、変身させてみた。


 如何せん雑魚すぎたので、邪神レプリカ・ジ・オリジネーションを召還できるかどうか何度も試させたのだ。


 だが、結局召還できず、パ・オが召還したダークナイト・ブラグランという奴に拳をたたき込んだら、思いの外盛大に吹っ飛び、たまたま落下地点にいたパ・オと激突し、盛大に爆ぜたのだ。


 その瞬間、四人の少女を助かるかどうかの覚悟ができていないまま、俺は日常世界に戻されていた。


 元の世界に戻ったはいいが、四人の姿はそこにはなかった。


 結局、見捨てる形になってしまったのかと自分の覚悟のなさと無責任さに呆れかえりつつ、自宅に戻った。


「俺って誰も救えてないんじゃないか?」


 独り言を口にしながら、リビングルームに行くと、テーブルの上にプリントアウトされたであろうが紙が置かれていた。


『急遽海外赴任と相成った! 息子よ、私は母と海外に飛ぶ。しばらく一人暮らしを満喫するがいい。私たちが戻った時、彼女と同棲していても問題はない。ただし、子供ができていたら許さん。避妊は大事だ』


 彼女さえいない俺に避妊も何もあったもんじゃないだろう。


 それに俺はまだ高校生だ。


 彼女がいたとしても、同棲なんかするにはまだ早い。


 何を言っているんだか。


「何なんだ、うちの親は……」


 その紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に放り込むと、自室へと向かった。


 いつものようにドアを開くと……


「……」


 見覚えのある四人の少女が折り重なるように裸で倒れていた。


「はぁ?」


 目をごしごしこすって、夢幻ではないのを確認した。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」


 俺はもう一度叫ばずにはいられなかった。




 * * *




 温泉の時、俺の右腕をつかんでいた小ぶりなお胸の少女の名前は、リリ・ポーア。


 決して俺がじっくりと見ていたワケではない。たまたま、偶然、偶発的に見てしまったのだが、右の乳房にほくろがある少女だ。決して食い入るように見ていたから気づいたワケではない。


 そこだけは誤解して欲しくはない。


 温泉の時、俺の左腕をつかんでいたツンとそそり立つようなお胸の少女の名前は、エーコ・ピアッサ。


 これも誤解して欲しくはないのだが、女の子を胸で区別しているワケではない。


 たまたま、目に焼き付いていただけであって、胸で識別していたのではないと言っておこう。


 温泉の時、俺のズボンを脱がしていた胸が全然ない少女の一人が、ワサ・プロシェル。


 左目は赤く、右目は青い少女だ。


 どうだ。


 胸だけを見ていたワケではにないのが、これでお分かりいただけただろう。


 最後に、俺のズボンを脱がしていた、これまた胸がないもう一人の少女は、サヌ・リアッツ。


 小学生かと思うくらいちっこい少女だ。


 彼女らが目を覚ますのを待って、日本語で話しかけると、普通に日本語で返答してきたのには驚きを禁じ得なかった。


 意思疎通が普通にできそうで、なんとかなりそうなのが分かってホッとしつつも、本人達は嫌がったが、なんとか母親の服を着てもらった。


「どうして俺の部屋にいたんだ?」


 四人をリビングルームまで連れてきて、椅子に座らせてからそう訊ねた。


 すると、四人はお互いの顔を何度も見合わせて、しきりに小首をかしげる。


「リリ達は気づいたら、ここにいた」


 代表するかのように、リリが言う。


「俺が異世界に転送されるように、この世界に転送されたってところか。誰の……」


 そう言いかけて、舞姫の顔が思い浮かんだ。


 あの御狐様なら、面白がって、この四人の少女を俺の世界に転送していそうだ。


 運営側の者であろうし、その程度の処置は造作もないことだろう。


「もしや、両親の海外赴任も……」


 舞姫がやった改変だろうか。


 その可能性も捨てきれず、今度会うことがあれば、あの御狐様とは一度腹を割って話す必要がありそうだ。


「両親が帰ってくるまで、ここに置いておくのが一番か。放り出せるわけにもいかないしな」


 いきなりハーレムルートに入ってしまった。


 異世界での出会いを求めていたはずなのに、どうして現実世界でこんなイベントが起こってしまったのか。


 俺は頭を抱えるしかなかった。




 * * *




 俺の家は、すっかり桃色イベント多発エリアになってしまった。


 トイレに入ろうとドアを開けると、リリが放尿をしているところだったし、お風呂に入っていたらサヌが一緒に入りたいと涙目で訴えてきたので、仕方なく一緒に入る事にしたり、廊下でエーコとぶつかって転倒すると何故かしらエーコの胸を鷲づかみしていたり、リビングで寝そべって漫画を読んでいただけなのに何故かリリの股間を顔に押しつけられていたり……。


 俺の家がすっかり心安まる場所ではなくなってしまった。


 終いには、四人とも夜は一緒に寝ると言ってきかず、狭い部屋に五人が押し込まれるような形で寝ることになったり、だ。


 ああ、神様。


 俺に安らぎ空間をください。




 * * *




 次の日、リリ達には家から出ないように釘を刺して、俺は高校へと向かった。


 疲労度が半端なくて、足取りが重い。


 高校に行ってしまえば、気楽に過ごせるだろうから疲れたりはしないだろう。


 授業中、好きなだけ寝てもいいし、お気に入りの場所で昼寝もいい。


 よし、今日は学校で好きなだけ寝よう。


 先生が注意してきても寝てやろう。


 それが今日の方針だ。


「やるっすね! マジ感動っす!」


 校門をくぐろうとした時、俺の前に二人のちっこい同級生が現れて、憧憬に近い光を帯びた目で俺を見つめてきた。


 俺は立ち止まり、誰だったかなと記憶の糸をたぐると、柳三姉妹のうちの双子である事に気づいた。


 柳美々と柳音々という名前だったはずだ。


 どっちが音々で、どっちが美々なのかは、似過ぎていて判別できないが。


「さすがっすね! 霞通りの鬼が違うっすね!」


「志織姉さん、服選びでおろおろしてるっすよ!」


「志織姉さん、デートは初めてなんで今から緊張してるっすよ!」


 二人の歓喜きわまっている表情がどうにも気にかかる。


「デート? 服選び? 何の話だ」


 俺には何の事なのかさっぱり分からなかった。


 東海林志織が誰とデートしようが、俺には関係ない事なのに、どうして俺に報告する必要があるのか。


「あれれ? 志織姉さんとデートする権利を勝ち取ったんすよ?!」


「うんうん、志織姉さんがデートするのは、君っすよね?」


「……は?」


 寝耳に水だった。


 俺は志織とデートするなんて約束を取り付けた事もなければ、向こうだって俺とデートする気なんてないはずだ。


 この二人は何を言っているんだか。


「勝ったんすよね? 志織姉さんとのレースに」


「バスケ部の千堂とのデートをかけたレースに乱入して勝ったんすよね?」


 二人が不思議なそうな目をして、俺を見る。


「レース? バスケ部の千堂?」


 その二つの単語が頭に引っかかる。


 どっかで、そんな単語を耳にしたような気がする……いや、した。


 あの日の体育館裏だ。


『私には好きな人がいるから断る事にしているんだけど……。でも、みんなにチャンスをあげているのよね』


『チャンスですか。聞いていた通り、自転車レースですか?』


『うん。とある直線コースで私を一度でも抜く事ができたら、考えてもいいかも』


 こんなやりとりが体育科裏であったはずだ。


 それを俺が盗み見するような形だったし、志織はそんな俺に気づいていたようだし……。


「……まさか、まさか、まさか」


 あの日、あの山道で最初に抜いたのが、千堂常次郎だったんじゃないか。


 その後、東海林志織まで抜いたから……まさか……まさか……。


 志織の奴、俺が志織とデートがしたいからと乱入したと思っているのか。


 まさか、まさか、まさか、まさか……。


「俺と志織がデートする事になっただと!!」


 校庭に響き渡るほどの声で俺はそう叫んでいた。






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