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異世界から戻ったおれが、双子の姉の姿になっていた件。  作者: ねこた まこと
一章 異世界から戻ったおれの新しい日常☆

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僕が好きなのは……


瞳子により強制入院させられた夕陽は、看護師によって患者用の寝間着に着替えさせられて、眠っている。


「 失礼します」



 拓人は、そっと病室に入る。

 何も言わずに家を出て来てしまった為、先程スマホで、母親に連絡したところ、『瞳子さんに頼まれたのなら、そうしなさい。どうせだったら自分から、付き添いますくらい言えばいいのに。ヘタレなんだから』 と言って、通話を切ってしまった。

拓人は、なんでそうなるんだろう?と思いつつ、ベッドの側の椅子に座る。


――まぁ母さんと友達だしな。だから頼んだんだろ。

と無理やり納得した。


「 娘に手出すとか、思わないのか」


思わず心の中で、思った事を口に出してしまう。


「 先輩は、そういう事しないでしょ。それに夕陽が本音を話せる人、今のところ先輩だけって、母は思ってるからですかね」


「 雫。ノックしろよ」


 ひょこっりと顔を出した雫に文句を言うが、我関せずな顔で雫は病室へ入ってきた。

 脇に大きめのトートバッグを抱えてるとこから、夕陽の着替えを持ってきたのだろう。


「 だって、開いてましたよ」


しれっとそう言って雫は、抱えてたトートバッグからタオルやパジャマといった物を備え付けの棚に入れていく。

 一見テキパキと作業をこなしてるようにしか見えないが、中2から中3まで付き合っていた拓人が見れば、若干怒ってるのは、すぐにわかった。

ただ怒ってるのが、拓人に対してなのか夕陽なのかはわからない。


雫の作業が終わるのを待ってから、拓人は話しかけた。 


「 さっきの夕陽が、本音を話せるの僕だけって、言ってたけど 家じゃどうなんだよ」

「 家じゃ、全然本音を言いませんよ。何訊いてもはぐらかすし。代わりに、先輩の話を沢山してくれますけどね。やれ『拓人さん』『拓人さん』ってね。

……悔しいな。あたしが夕陽のいっちゃんの理解者だと思ってたのに」


雫は、「あたしの夕陽をかっさらいやがって。バスケ馬鹿のクセに!」という思いをのせて、ジロリと拓人を睨む。拓人は、雫から視線を外し、話題をそらす。


「 ごめん。いっちゃんってどういう意味?」

「 いっちゃんは、広島弁で、一番って意味です」


雫は、あとお願いしますね。と笑顔で言うと出ってしまった。



「 やれやれ、起きた時どう接すれば、いいんだよ」


雫が、出っていった今夕陽と、二人きりである。


最初出会った時、おにゃんこさんと戯れる姿が可愛いと思った。

話してみれば、俺っ子でツンデレで、方言のしゃべり方が特徴的な女の子。


自分や妹には、あっさり自分の秘密を喋るし、家での事を包み隠さず話してくる。

だから、本音を自分や妹だけにしか、話して無いとは思ってなかった。


「 ん? おれ」


拓人が、考え事をしてると、夕陽が目を覚ました。


「 気分は、どうだ? 」

「 ええよ。って拓人さん、なんでおるんよ」


夕陽は、布団を頭からすっぽりかぶった。気絶する前にやらかした事と、二人きりでいるという事実から恥ずかしい。顔が熱い。熱とは違う意味でだろう。



「 なんでって、君のお母さんに頼まれたからだよ」

「 母さん。なんて事頼むんよ」

「 知らないよ。あのさ、布団から出てきなよ。なんで、すっぽりかぶってるの?」

「 恥ずいけぇよね。おれ、髪ぐっしゃじゃし、寝間着じゃもん。見られとうない」


夕陽は、布団を被ったまま大声で話す。

今まで、意識して無かった好き(きもち)が全面に出てきてる。恐らく顔は、真っ赤だ。そんな顔を見られたくない。というか見せてやるもんかという変なプライドから、布団を被ってる。そんな夕陽の気持ちを知ってか知らずしてか、拓人は話しかけてくる。


「 そんな事したら、ますます髪ぐっしゃになるよ? それに、夕陽に話したい事あるから、出てきてくれない?」


――何か必死な感じがする。出てきたほうが良さげだな。仕方ない。


 夕陽は、もぞもぞと布団から、顔を出した。


「 話って何?」

「 あのさ、夕陽のいっちゃん好きな人って誰?」


拓人が、そう訊くと夕陽は再び布団を被った。


――うわ、この男サラっと言ってきたし。ようまぁ、恥ずい事言えるよ。


「 また被って、どうしたの? 」

「 いっちゃん好きな人とか、訊くけぇじゃ。恥ずいんよね!わざとらしい。そんなん拓人さんに決まっとるじゃろ!」


 夕陽は、布団ごしに大きな声を出す。看護師さんが、すっ飛んで来やしなかとヒヤヒヤするも、その気配はない。



「 そっちこそどうなんよ? いっちゃん好きなん誰?」


夕陽は、布団から顔を出さずに拓人に、質問する。

――どうせさっきみたいにサラッとコッチが恥ずくなるような事言うんじゃろうけど。



「 僕が、いっちゃん好きなのは、夕陽」

「 うわ!よう言えるねぇ、恥ずかしいセリフ」


夕陽は、布団から顔を出して、ニタニタ笑いながら拓人をからかった。

サラッと言ったわりには、顔はそっぽ向いてるし、耳まで真っ赤だし。恥ずかしいんなら言わんにゃええのに。

と夕陽は思う。



「 うるさいな。かっこ良く決めたつもりなのに」

「 え〜。ちょっと厨ニっぽい」


夕陽はケラケラ笑いながら、布団を被る。今ので力抜けたのか、急に眠くなってきた。布団を被ると妙な安心感がある。熱がこもるが、こうしないと、寝れないのだ。


「 おれ。今まで生きてきて今がいっちゃん嬉しいかも」

「 なんで布団の?」

「うーん? 寝るけぇ。おれ、布団かぶってないと、寝れん人じゃけ」


夕陽は、トロトロ心地よい眠気に身を委ねながら答えた。


「 そう僕は、もう帰るよ。風邪早く治せよ。」

「 分かっとる。じゃあね」


夕陽は、布団から手を出してひらひらと、振った。


拓人は、苦笑いしながら手を振り返した。

夕陽は、布団の隙間からその様子を見ると、そのまま眠ったのだった。



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