音無夕陽。
「 ねぇ、俺の今の姿になった理由ってなんだと思う?」
仁の部屋で、夕陽と話をしていた時、仁に夕陽が、こんな質問を投げ掛けてきた。
仁は、ついこの間、ひなやはなことその話をしたばかりだったので、夕陽に3人で出した結論を話してみることにした。
「 この間、はなこばあちゃんが来たじゃろ。そん時にも、夕陽が今言った事と同じ事をひなと俺で話をしたんよ」
「 うん。それで?」
「 はなこばあちゃんが、茂兄から聞いた話によると、夕陽の葬式の晩に、隆史おじさんがね。『 律や夕陽がどんな形でも、ええけ甦ってくれんかの』って繰り返し言うとったらしい。 じゃけ、夕陽の姿は、隆史おじさんが、甦ってほしいって願ったけぇかねって、ひなやばあちゃんと話したんよ」
「 ふーん」
夕陽は、そう返事して、暫く黙っていた。
夕陽が、黙ったままだったので、仁も口を開かないでいた。
数分間の沈黙の後、夕陽が急にこんな事を言った。
「 ハサミある? 」
「 あるけど、どうするん?」
仁は、自分の学習机からハサミを出して、夕陽に手渡す。
夕陽は、いきなり、髪を一房つかみハサミで、ジャキジャキと切り始めた。
「 なんしょんや!( 何してるの)髪なんか切ってからに」
仁は、夕陽を止めるが腰まで伸びていた黒髪は、夕陽の手によって切られて、無惨な状態になっている。
「 あ~あ。もう、えらい事になってしもうてから。なんで、髪を切りだしたんね」
「 今の俺は、見た目は平原律で中身は、平原夕陽。じゃけど、平原律と平原夕陽は、死んでこの世におらん。この事実は、変えられん。現実問題、仁はもちろん、ひなも茂兄も、学校の友達も皆、『 平原夕陽』の葬式に出とるじゃろ。
じゃったら、今の俺は、何者? 平原夕陽? それとも音無夕陽。親父の願った通りに蘇ったかもしれん。けど、おれは音無夕陽であって、平原夕陽じゃない。だったら、見た目も、平原律である必要はない。じゃたら、髪を切ろうって思ったんよ」
「 それにしても、自分で切る事ないじゃろ。貸して、ハサミ」
仁は、夕陽からハサミを受けとると、綺麗に髪を切ってあげた。
「 あ~さっぱりした」
夕陽は、そう言って、バッサリと、切って肩より下くらいの長さになった髪をふる。
「林原先輩、泣くかも」
髪を切って喜ぶ夕陽をみながら、ポツリと呟く仁。
数日後、夕陽が髪を切った事について根掘り葉掘り、拓人に聞かれてうんざりする仁の姿があった。




