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異世界から戻ったおれが、双子の姉の姿になっていた件。  作者: ねこた まこと
間章 ひなのお祖母ちゃん。

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間章 ひなのおばあちゃん。

ひなのお祖母ちゃんのセリフが広島弁全開となっております。分かりづらい単語には、括弧で標準語の訳を付けてます。もしかしたら読みづらいかも、しれません。ごめんなさい。


桃宮市 旭ヶ丘。地元の私立学校の名前にもなってるこの町の駅に1人の老婦人が、降り立った。


綺麗な白髪をきっちりと結い上げ、ピシリと和服を着こなし、スタスタと歩く姿は、どこか厳しい教師を思いおこさせるような所作である。


老婦人は、手元の鞄からスマホを取り出すと、地図アプリを起動した。


「 さてと、メールで、送られてきた住所によると、この辺りなんじゃけど。 ええい、見えずろうていけん。(見えずらくて駄目ね。)邪魔になるけぇ、思うてタブレットを置いてきたんは、間違いじゃた」


老婦人は、スマホを近づけたり離したり、眼鏡を外したりして、目的地を探していた。

そこに、通りかかった1人の男子高校生に老婦人は、声をかける。


「 ちょっと、そこの、お兄さん。これ見てえや」

「 えーと、操作の仕方ですか」

「 いやぁ違う。年寄りじゃけぇ言うて、スマホを使えん思いんさんなあんた。

アプリの文字が、こまい(小さい)けぇ見えずらいんよ」

「 はあ。ちょっと、貸して下さい」


男子高校生は、老婦人からスマホを借りて、地図アプリを見る。


「 用事で、こっちの方来たついでに、昔の教え子のとこに寄ろうかぁ思うて、来たわんわええが、道が分かりゃせんのでよ。ちいと前( ちょっと前)に遊びにきんさいゆうメールもろうた時に、住所を教えてもろうとったけぇ、地図アプリに登録したんじゃけど、スマホはいけんのぅ、字が、こまーて( 小さくて)見やせんのじゃけ。やっぱり、タブレットのがええわ」

「 はあ、それは、そうと、どちらに行かれるんですか?」


マイペースに喋る老婦人に、男子高校生は、目的地を訊いた。


「 ああ、ほうじゃ、この辺にマンションがあるって訊いたんじゃが、この地図じゃと、どこらかいの?」

「 マンションなら、駅から歩いてすぐですよ。 今から僕も、行くところなのでご一緒しましょうか?」

「 ありゃ、そりゃあ助かるわ。あんたみたいなイケメンのお兄さんと歩けるなんて、嬉しいのぅ。ウチがあと70年若けりゃ逆ナンしとる」

「 はは。そりゃどーも」


老婦人の冗談か本気かわからないセリフに、男子高校生は適当に、相槌をうった。


「 お兄さんの名前を訊いとらんかったわ。 ウチは、服部 はなこゆうんじゃ」

「 林原拓人です」


――服部はなこかあ。まさか、ひなさんの身内じゃないだろうな。マイペースだし。飄々としてて何考えてるかわかんないあたり、ひなさんそっくりなんだけど。


拓人はそう思いつつ、はなこに、質問した。


「 あの差し支えなければ、教え子の方のお名前教えて頂けますか?もしかしたら、知り合いかもしれないので」

「 えーよ。 音無瞳子いうんよ。知っとってかの?」

「 ええ!」


夕陽の母親の名前が、はなこの口から出てきたので、驚きのあまり大声を出してしまう。


「 知り合いみたいなの。もしかして、お兄さんのこれか?」


はなこは、小指を立てて訊いてくる。


「 違います。付き合ってる彼女のお母さんですよ」


拓人は、必死に否定した。


――何なんだこのお婆さん!どうやったら、人妻と高校生が恋人同士になるとか、思うんだ?


はなこは、笑顔でこう言った。



「 ホホホ 。冗談じゃ。 時にお兄さん。付き合ってる彼女の名前を当てちゃるてっ言うたら、あんた信じるか?」

「 普通は、信じませんよ。けど、一発で当てたら、信じます」


――ホントによく分かんないお婆さんだな。まぁ瞳子さんの知り合いみたいだし、どうせ雫の名前が出てくるんだろうし。


拓人は考えていたが、はなこの目がすっと細目られ、先程の飄々とした雰囲気は、消え去る。


「 ほう。なんなら、当てちゃる。あんたの彼女名前は、音無夕陽じゃ!まちがっとるか?」

「 なんで? 夕陽の事は、一度も話してないのに」


拓人は、ただ ただ驚いていた。音無家には、現在3人女の子がいるが、拓人と歳が近いのは、雫だけだ。アキや夕陽は年齢からして、よっぽどの事が無い限り、恋愛対象にならないだろうと、普通の人は候補から外すだろうから、推測にしても、当てずっぽうにしても当たらないだろうと、高を括っていたのもある。だから余計に驚いた。


はなこは、拓人の様子を見て、ドヤ顔だ。まるで拓人がこういう反応する事がわかっていたかのようだ。



「 驚いたろ? でも、これはウチが、持っとる能力( ちから)の1つにすぎん」



そんな会話をしてるうちに、音無家の自宅があるマンションについた。


拓人とはなこが、音無家の部屋の前に立った時、後ろから声がかけられた。


「 はなこばあちゃんと拓人さんなんで、一緒におるん?」


夕陽が、目を丸くして2人に訊いてくる。


「 このお兄さんとは、駅で会ったんよ。ここまで、一緒に来たの」

「 ふーん。まあ、家に入ろう」


夕陽は、2人を家に招く。音無家には、夕陽以外に、雫がいたが、勉強してるとかで、2人に挨拶すると自室に引っ込んだ。


「 はなこばあちゃん。まさか思うけど、はあ、あの能力(ちから)見せたん?」

「 見せたよ。お陰であんたの彼氏は、ぽけーっとしとる」


はなこは、拓人の方をニヤニヤしながら見た。


「 付き合ってる彼女の名前を当てちゃる。って言われて、夕陽の名前を言われたんだ。びっくりしたよ」

「 ばあちゃんは、いつもそうなんよ。近所でも不思議な能力(ちから)を持ってるって有名じゃったよ。 ひなや茂兄は、ばあちゃんの能力を受け継いだのかよく分からんけど、未来の出来事を夢で見るって言ってた。あの2人が、おれ以外に話しした事は、ないけどね」

「 やっぱり、はなこさんは、あの2人のお祖母さんなんだ」


と言う拓人にはなこが、返事をした。


「 ほうよ。 拓人くん、ひなや茂とも知り合いなんよね。 茂の初めての教え子。家庭教師しとった時のね」

「 なんで。また」


はなこに話してない過去をズバっと当てられ、拓人は驚くばかりだ。


「 ウチは、話しした人間の過去とかも分かるんよ。昔は、化け物扱いされたけどね」

「 そうなんですか」

「 ねーねー。ばあちゃん。母さん帰ってくるまで、時間あるけぇ、おれの話聞いて」


子犬みたいな目で、はなこを見つめる夕陽。

はなこは、そんな夕陽に苦笑した。


「 夕陽の事をずっと心配しとったけど、大丈夫みたいなねぇ。色々大変な目にあったみたいなけど」


はなこは、夕陽を抱きしめる。夕陽は、実の孫のように可愛がってきた。だから

『あの日』から、ずっとずっと心配していた。


『あの日』の出来事全てを知る茂を問いただしても、曖昧な返事しか返さない。

だから、自分の目で確かようとはなこは、来た。


「 夕陽。あんた、ちいと(少し)熱がしょうる(熱が出てる)じゃない。妙にハイテンションじゃー思ったら。こまい(小さい)頃から、変わっとらんね。こういうところは」


はなこは、夕陽に体温を測るように言った。


「やっぱり。37℃あるじゃない。早よう、ベッドに行きんさい」

「そうだよ。 部屋に戻れよ。また、どやされるぞ、お母さんに」

「 うえー」



夕陽は、拓人とはなこに言われて、大人しく部屋に戻った。


拓人は、夕陽を雫に任せると、ずっと訊きそびれていた事をはなこに訊いてみた。


「 そういえば、服部さんは、何の先生だったんですか? 瞳子さんが教え子っておしゃってたけど」

「 ああ、ウチはね、近所の子に習字をずっと、教えてとったん。瞳子さんやひなの母親を教えてたんよ。結婚する前は、小学校の教師しとった時期もあるんよ」

「 そうなんですか」


拓人は、はなことの話を終えると、雫に帰る事を伝えた。


「 先輩、ごめんなさい。来てくれたのに、夕陽ったら」

「 夕陽にまたメールしとくよ」


はなこに挨拶すると、はなこは、こっそり拓人に耳打ちをしてきた。


「 拓人くん。夕陽の事大切にしんさいよ」

「わかってます」

「 なら、ええんよ。あの子は、あんたとって、これからずっと、重要な存在になるけぇね」

「 どういう意味ですか」

「 自分で考えんさい。ほほ。将来楽しみなのぅ。まだまだ長生きせんにゃあいけんわ」


と、はなこは、意味ありげな一言を残して、去っていった。

拓人がこの言葉の意味を知るのは、十年先の未来である。





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