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異世界から戻ったおれが、双子の姉の姿になっていた件。  作者: ねこた まこと
三章 おれと愉快な仲間達の日常。

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壁ドンの告白。



11月の初めの日曜日。よく晴れた空のもと、中島高校では、中高祭(なかこうさい)が開催された。


ひなや仁の所属するクラス1年3組は、お好み焼きの屋台を出す。


「 いやー、お祭り日和だねー」


テントの中で、お好み焼きを焼いていた橋田渉は、呑気にそう言う。


呑気な渉とは、正反対に暗い顔で帳簿をつけていた音無仁は、ボソボソっとぼやく。


「 俺の心は、雨降りだけどな」

「 なんだよ? 今更になって、ひなに告るの止めるとか言うんじゃねーよな?」


渉の一言に、仁はピクリと体を震わせて、作業をしてた手を止める。


「 止める訳ないだろ。止めたら、ひなに一生軽蔑されるわい」

「 なら、なんで、そんなに暗い顔してんだよ?」

「 会いとうない人が来るんだよ」

「 会いたくないって、親父さんとか?」

「 んにゃ、悪魔みたいな人」

「 誰が、悪魔だって?」

「 ゲッ 林原先輩。いつの間に」



仁が、テントを覗く制服姿の拓人に驚いて、そんな事を言ってしまう。


「 先輩に向かって、ゲッってなんだ?ゲッて、お前の妹が来たいって言うから連れて来てやったのに。」

「 何をいけしゃあしゃあと言ってんですか。 ただ、俺の事からかいに来ただけでしょ」

「 ひでー。お前が心配で来たのに」

「 仁。後輩思いの先輩苛めるなよ」


渉が、2人の会話に口を挟んでくる。


「 そうだ。橋田くんの言う通りだぜ」

「 あーもう。あんたらと、漫才繰り広げとる暇は、無いんだ。 それより、夕陽は、どこに居るんですか?」


いつまで経っても、埒が明きそうにない拓人との会話を打ち切ると、夕陽の行方を探す。

誰よりもお好み焼き大好きな妹が、ここに、来ないのはおかしい。


もしくは、お好み焼きと同じくらい好きな甘い物を売っている屋台に釣られてるのかもしれない。

仁はそう考え、人で溢れてるグランドを探して歩く。


しばらく探してると、見覚えのある制服姿で、ピョコピョコと歩く夕陽がいた。

側には、中年男性が一緒にいる。辺りをキョロキョロしてる所を見ると、拓人か仁を一緒に探してくれてるらしい。



「 あっ、お兄ちゃんだ」


仁は、夕陽からお兄ちゃんと呼ばれて、ぞわっと鳥肌が立った。


「 よかったね。お兄ちゃん見つかって、おじさんもう行くよ」

「 妹が、世話になりました」

「 いやいや」


男性は、ニコニコと夕陽に手を振って去っていった。


「 1人で、フラフラするなや。あのおじさん、ええ人じゃったけぇ、よかったけど。世の中、何されるか分からんのよ」

「 大丈夫。そん時は、ドスのきいた声で、喋りゃあ逃げるけぇ。それにヤバそうな奴はじゃったら、大声出すもん」


夕陽は、そう言うと、手に持ってた綿菓子を口にする。


「 でも、今の夕陽は、女の子なんよ?危ないじゃろ。1人でおったら」

「 そんなん、今更じゃし。男の時も、女に間違われようたんじゃけ、嫌でも対処方法身に付いたし」


夕陽は、仁の心配をよそに、そう言い切った。


「 それより、クラスの店番大丈夫なん?

ひなか渉か真央に、怒られん?」

「 あっ」


夕陽探しに夢中で、肝心の店番を忘れていた仁は、あわてて戻った。


「 仁、夕陽みつかった? なんか、林原さんだっけ? 夕陽の彼氏。みつけたら、体育館まで連れてきてくれって」


テントに戻ってみると、エプロンを付けた真央が仁の代わりに店番に立っていた。


「 悪い、長谷川、任せてしもうて」

「 別に、いいよ。お兄ちゃんとして、妹探しに行ってたんでしょ。あそうそう、ひなに告白するまで、ここ立ち入り禁止ね」


真央は、むちゃくちゃな命令を仁に下して、テントから追い出す。


「 ええ?! 意味わからん」

「 いいから、もう行って! 告白大会始まるよ」


真央は、しっしっと野良犬を追っ払うかのように、仁を追いたてた。


仁は、夕陽を拓人の所まで送り届けると、体育館のステージ脇に行った。


在校生は、予め申し込みで参加する人を決めてある。


仁は、トップバッターである。

1年生で、参加する人がほとんど、いないからである。


『 さあ、今年も告白大会の時間がやってまいりました。 今年は、どんなドラマが待ち受けているのでしょうか。始めは、1年3組の音無仁くんです。どうぞ』


司会を務める実行委員から名前を呼ばれて、ステージに上がる仁。


――うわあ、ぶり(すげぇ)緊張する


在校生はもちろんの事。ちらほらいる一般の人も仁に注目している。

拓人も夕陽も見ていた。肝心のひなは、どこかと探してみれば、やや中央で、ひなが仏頂面で仁の事を見ている。


仁は、深呼吸をして、中央に据えられたマイクを持って立つと、大声でひなに告白する。


『 服部ひな。小学生の頃から好きでした。めっちゃ、ヘタレな僕ですが、付き合って下さい』


シーンとするなか、ひなが仏頂面のまま人をかき分けて、ステージに向かってくる。


慌てた実行委員がひなを遮るが、ひなはひと睨みして、実行委員を遠ざけた。


ひなは、ヒラリとステージに上がると、仁の手からマイクを奪い、ステージの壁際まで、仁を追い込むと、いわゆる壁ドンのポーズになって、こう言った。


『 付き合っても、ええで』



歓声が体育館に響く。こうして、仁の生まれて初めての告白は、幕を閉じた。


ただしばらく、仁は、女に壁ドンされた男として噂されたのは言うまでもなかった。





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