仁の相談。
10月の終わりの土曜日。クロを連れて理緒の所に、遊びにきているひなは、
理緒の部屋で、最近のクロの話をしながらお茶をしていた。
クロを抱っこして理緒は、側にいるおにゃんこさんと、比べながら話す。
「 クロ。ちっちゃいよね。おにゃんこさんが、7キロもあるせいかな?」
「 生後半年って聞いたから、もう少し大きくなるんじゃない?」
「 へぇー。飽きたって理由で、前の飼い主の人手放したんだよね?」
「 その話なんだけど、兄さんが、改めて理由その人に、訊いたんよ。そしたらさ、動画サイトに可愛い猫の動画を投稿したくて、飼い始めたけど、想像以上に猫の世話が大変だったからなんだって」
一瞬の沈黙のち、理緒の怒りの声が、響く。
「 はああ? なんだよ、それ! 意味わかんない。自分の趣味の為に猫飼うなよ」
「 うん。理緒ちゃんの怒りは、最もだね。猫だけじゃなくて、犬や鳥やハムスター他にも、色々人間に飼われてる生き物全般そうだけど、人間の都合の良いおもちゃじゃないよね。少なくとも、私は、そう思う」
ひなは、そう言うと、手元のお茶で喉を潤してから続けた。
「 とにかくね、人間が生き物飼う時は、最後まで、面倒みんにゃ駄目よ。何らかの事情で、飼えんくなったら新しい飼い主を責任持って探さんといけんと、思うんよ」
ひなは、そこまで、言うとお茶を飲み干した。
言いたい事を言って、落ち着いたのか、おにゃんこさんを呼んでみた。
「 おにゃんこさん。おいで」
「んなん」
おにゃんこさんは、とことことひなの側にやって来ると、体をスリスリとすり付けた。
「 んなー。んなん。(さっ、可愛い吾が輩を撫でて)」
「ひなさん。 おにゃんこさんが撫でてって」
理緒は、おにゃんこさんのセリフを一部訳さずに、伝えた。
「 おにゃんこさん、撫でてほしいの? わかったよん」
ひなは、夕陽程ではないがやはり、猫バカである。
笑顔で、おにゃんこさんを撫でていた。
ひなが、おにゃんこさんと戯れている頃、夕陽は、自宅マンションから、歩いて数分の駅で、拓人と仁を待っていた。
夕陽の今日の服装は、紺と白のボーダーのカットソーと淡いブルーのスカートを着ていた。
「 仁の野郎、相談って何じゃろ?下らん事じゃったら、ぶっ飛ばす!」
夕陽は、一人ぶつぶつと文句を言っていた。 久しぶりに、拓人と二人きりになれるのに、仁のせいで、二人きりになれないので、イライラしていた。
しばらくして、拓人と仁がやって来た。
話しやすいという理由で、駅前に出来たファミレスに入る事になった。
「 ひなに告るタイミング?」
夕陽は、食べていたパフェから顔を上げて、そう聞き返す。
「 ひなに告ろって、思ったはええけど、最近、中高祭の準備が忙しくて、なかなかタイミングが掴めんのよ」
「 中高祭って、文化祭の事か?」
「 ほうなんです。 旭ヶ丘は、6月に体育祭と文化祭一度に済ますでしょ。でも、中島高は、6月に体育祭やって、11月に、文化祭やるんです」
「へー。 うちは、文化祭無くて、合唱祭やって終わりだもんな」
「 中島高の文化祭は、地域のイベントにもなってて、賑やかなんよね。おれも何回か行ったよ 。中島高ってさ、普通科以外に、食物調理科と生活文化科があるんよね。食物調理科の人がレストランやったり、生活文化科の人がファッションショーやったりしとったっけ」
夕陽は、去年行った中高祭の様子を二人に話して、聞かせた。
「 あっ思いだした。そういや、中高生の告白大会ってあるんよね。そこで、告れば?」
「 何その、中高生の告白大会って?」
仁は、難しい顔で訊いてくる。
「 えーとね。体育館のステージから、好きな人に大声で告るんよ。何年何組の○○さーん、好きです。みたいな感じで」
「 そりゃ、面白そうだな。そこで、ひなさんに告白しろ。ついでに、見届けてやる」
拓人は、意地悪な笑顔で言う。
――ゼッテー面白がっとるし。俺があがり症のヘタレなん知っとるけぇじゃわ。
あっでも、部外者入れんかもしれんし。
「 でも、部外者入れる?」
「 入れるよ。見学に家族とか、友達呼ぶ人もおるみたい。おれ、部活の先輩に言われて、同級生の娘連れってたもん告るのは、何も、中高の生徒じゃないと駄目みたいなルールが、ある訳じゃないみたいよ。今年は知らんけど」
「ほうなん」
――林原先輩をこさせないという目論見は、瓦解した。まぁしのご言う手も仕方ないか。
「 はあ、そこでしかチャンスはないと思うけぇ、そこで告るよ」
と仁は、項垂れながらもそう言った。
「言ったな?男に二言は無いよな。夕陽も聞いたよな?」
「うん。バッチシ聞いた」
「という訳で、見に行ってやる」
「もっ好きにしてください」
大勢の前で告白せねばならないというプレッシャーと、林原先輩がやって来るというプレッシャー。その二つのプレッシャーで、仁の心のHPはゼロになりかかっていたのだった。




