おれも、撫でて。
10月の中旬。秋らしいを通り越して、冬を思わせる気温が数日続いたある日。夕陽は、風邪をひいてダウンしていた。
そこに、生理痛も加わって体調は最悪だった。
「 夕陽、ご飯食べんの?」
お粥を載せせたトレイを持ったアキが心配そうに、ベッドで寝る夕陽に声をかける。
「……いらん。欲しくない」
「 そう言って、昨日から何も食べとらんよ。ちょっとでも、食べんと」
「 気持ち悪くて、食べれん。食べたいけど。ゴメン。持ってきてくれたのに」
「 ええけど、お昼も食べんかったら、母さんが入院させたするって」
「 うええ、入院嫌い 」
「 そう言っても、よくなるものもよくならんじゃない」
アキに、そう言われて夕陽は、ぐうの音も出ない。
「 何なら、口に出来る?」
「 いつも飲んでる野菜ジュースなら」
「 わかった。持ってくるね」
アキが出ていくと夕陽は、枕元に置いた体温計を手に取ると、脇に挟んで測ってみる。
「 38℃、さっき測った時より上がっとるし」
体温計を、ケースに戻して再び枕元に置いた。
「 手洗いやうがいも毎日しとるし、好き嫌いをせんようにご飯も食べとるのに、なんで、風邪ひくかのー」
夕陽は、思わず愚痴る。体力作りも兼ねて適度に運動もして、なるべく薄着をしないようにしてる。
夕陽は、考え事しながらいつの間にか寝ていた。
夕陽が寝入ったあと、アキが夕陽のお気に入りの野菜ジュースを持って、部屋に戻ってきた。
「 夕陽、持ってきたよ。ありゃ、寝とるし。まあ、後でええか。」
アキはそう言って、ソッと部屋から出ていった。
「 うう、重い。 岩に襲われる」
自分の寝言と重苦しさで、目が覚めた夕陽は、自分の胸元に乗っかりグーグーと昼寝をする白い猫に怒鳴った。
「 そら、何べんも言うとるじゃろ。人の上に、乗っかるなって!重くて、寝られんじゃろ。なんで、調子悪い時に限って人の上で寝るんよ」
「 んー。夕陽うるさい。寝られない」
そらは、呑気に伸びをすると、夕陽に文句を言う。
夕陽は、そらの文句を無視して、説教を始めた。
「 あんね。なんで、おれの調子悪い時に限って、人の上で寝る訳? お昼寝したきゃ、そらのベッドでお昼寝しんさいや」
夕陽は、自分のベッドの下にあるそら用のベッドを示す。
「 だって、夕陽が心配なんだもん。それに、夕陽胸の上は、柔らかいから寝心地いいの」
「 寝心地が良かろうと、悪かろうと、おれには関係ないの。 おれが寝れんけぇ、とにかく、上に乗っかるの禁止」
夕陽は、強制的にそらをベッドから下ろすと、そら用のベッドに連れていった。
「 そらのベッドは、ここ! ええね!」
「 んにー。イヤ~ そらも一緒に寝る~。 んにー」
そらは、ベッドの中でバタバタと暴れたが、夕陽はさっさと、自分のベッドに戻り布団にくるまった。
「 やっと、普通に寝られる」
夕陽は、そう呟くと、寝息をたて始めた。
夕陽が、眠りはじめて数分後、そらが自分のベッドから、のそりと夕陽のベッドに移動した。
そして再び、夕陽の胸元に乗っかり昼寝を始めた。
夕陽は、そらが乗っかてるせいか、唸り声をあげ始めた。
その頃、雫がお見舞いにやって来た拓人を夕陽の部屋に案内した所だった。
「 なあ、中から唸り声聞こえるけど、ヤバくないか?」
「 本当。やだ、思ったより熱が高いのかな?」
雫は、ソッとドアを開けて、確認する。
「 あー。そりゃ唸り声あげるわ。そら、下りんさい」
雫は、夕陽の上に乗っかり昼寝をするそらを下ろそうとする。
「 んにー。んにー」
「 こら!」
そらは、布団に爪をかけて抵抗して離れようとしない。
そこへ拓人が、雫に替わって、そらを下ろそうとする。
「 ほら、夕陽がしんどいから下りような。おいで、そら」
拓人は、優しい声を出して、そらを呼ぶ。そらは、抵抗する事なく、夕陽の上から下りて、拓人の方へ行った。
雫の時は、抵抗しまくったのに、拓人の言うことは、すんなり聞いて下りた。
「 ええっなんで、夕陽の次に可愛がってるあたしより、先輩の言うこと聞くって、どういう事よ。そら」
「 そりゃ、そらを無理に夕陽から離そうと、するからだよ。多分、落ち着くんだろ。夕陽の側にいるの」
拓人は、抱っこしたそらを撫でてやる。
そらは、ご機嫌なのか喉をゴロゴロと成らしていた。
「 ああ、ずるい、そら。拓人さん独り占めしとる」
いつの間にか、目を覚ました夕陽が、そらを恨めしそうな目で見ていた。
「 おいおい、猫に焼きもち焼くなよ。」
「 おにゃんこさんに、焼きもち焼いた人に、言われとうない。ずるい。ずるい。そらばっかり、可愛がって」
んきゃーと喚く夕陽。熱のせいか、子供のような事ばかり言っている。
「 おれも、撫でたりしてほしい」
「わかった。わかった」
拓人は、そらを下ろすと、夕陽が喚きちらすのが終わるまで、頭を撫でていた。




