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異世界から戻ったおれが、双子の姉の姿になっていた件。  作者: ねこた まこと
二章 本当の記憶を持つ者達

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幼なじみ。


渉と再会を果たした翌日、夕陽は幼なじみの少女 服部ひなを、自宅近くの商店街で発見した。


――昨日は、渉で今日はアイツかい。



夕陽は、ひなを驚かそうと、背後から忍び寄ってみるが。


「 夕陽。なんしとん? バレバレじゃし。私を脅かそうとしても無駄」


とひなは、正面を向いたまま夕陽と話す。


――やれやれ。やる事が、子供の頃から変わっとらん。パーカー着とる娘を遠目に見た時は、まさかと思ったけどね。

まぁ、性別や姿が変わっても、夕陽は夕陽か。


ひなが、はあぁと、わざとらしい大きなため息をつくと、背後の夕陽が、動揺する気配がつたわってくる。



「 なんで、バレたん? 俺、こっそりひなの後ろにまわったはずなのに」

「 あんね。何年、あんたの幼なじみやっとる思うとん? あんたの行動なんてお見通し。それに」


ひなは、回れ右をして、夕陽の方に向き直る。


「 パーカーを着とりゃ、すぐあんたって分かるし。ほんまに、服の好み変わっとらんね」


ひなは、夕陽が黒いワンピースの上に羽織った薄手のグレーのパーカーを指差して言う。


パーカーは、夕陽にとってトレードマークと言っても過言でないくらい、いつも着ているアイテムだ。しかし、今は薄着で歩くなと母から厳命されてるのもあって着ている。



「 服の好みもじゃけど、母さんから薄着するなって、言われとんじゃもん。でなきゃ、昼間暑いのに、パーカーなんか着んわいね」

「 母さん?ああ瞳子さんの事か、雫から聞いとるよ、ちいと(少し)の事で熱が出るんだって?」

「 うん」


ちなみに、ひなと雫は、中学生の頃からスマホのメールや無料通話アプリでやり取りしている。


「 夕陽には、悪いけど私は、カーディガン脱がせてもらうわ。暑うてかなわんけぇ」


ひなは、着ているセーラー服の上に着ていたカーディガンを脱いだ。

カーディガンの下から半袖のセーラー服が現れる。

ひなは、少しでも涼しくなるように手で、扇ぐ。

ひなは、あっと呟いてからこう言った。


「 おっと、私は、こうしちゃおれんのじゃった。兄さんから、お使い頼まれとんよ。夕陽は、林原さんって人の家知らん?」

「 知っとるよ」

「 ぶち ( すごい) 嬉しそうに答えるね」


ひなの指摘に夕陽は、自分の声が弾んでいるのに、気付いてわざとらしい咳払いをする。


「 そう? ひなの気のせいよ」

「 ふーん?」


ひなはジト目でを夕陽を見つつ返事した。


「 まっええわ。知っとんなら道案内してもらえる?」

「 もちろん」


夕陽は、ひなと手を繋ぐと、スキップしそうな勢いで歩き始めた。


「 ちょっちょっと、まちんさいやー」


ひなは、夕陽の歩くスピードに驚いて悲鳴を上げる。時々、つんのめりながらも、どうにか夕陽に着いていったのだった。


商店街から、徒歩で数分で林原家に到着した。


「 じゃ、俺はここで」


夕陽は、そそくさと帰ろうとする。今なら拓人に会えるはずだが、ひなの前で会うのは避けたい。だが、ひなに引き留められる。


「 まあ、待ちんさい。ここに来たら夕陽にとってええ事があるんでしょ? 」

「 うん。まあ」

「 そう」


ひなは、返事だけすると、インタホンを押した。

しばらくして、中からエプロンをした女性が出てきた。


「 すみません。 昨日、兄が伺った時にお宅に携帯を置いて帰ったみたいで」

「 ええ。さっき電話があったわ。これよね? 」


女性は、エプロンのポケットから黒いスマホを取り出した。


「 はい、そうです。ありがとうございました」


ひなは、女性からスマホを受けとると、持っていた鞄に入れる。


「 夕陽ちゃん。いらっしゃい」

「香苗さん、 こんにちは」


女性-香苗は、ひなの側にいた、夕陽に気がついて挨拶してきた。


それを見逃さなかったひなは、すかさずこう言った。


 


「 駅前の商店街で偶然会ったんですよ。夕陽は、私の幼なじみなんです。ここまで、道案内お願いして、一緒に来てもらったんですよ」

「 あら、そう。 拓人いるわよ。呼ぼうか?」

「 いや。あの」


そんなやり取りをしていると、家の中から、少年の声がする。


「 母さん。鍋ふいてたから、火止めたぞ」

「あら、忘れてた。それより拓人。夕陽ちゃん来てるわよ。あがってもらうわね」

「 ええ?!」


夕陽が悲鳴をあげるが、ひなが夕陽の手を握って逃げれないようにしている。


「 という訳で行ってこい。私は帰る」

「 そんなに、言うならついて来てや。ひな」

「 私は、部外者じゃもん。兄さんの忘れ物取りにきただけ」

「 うう」


ひなと夕陽が押し問答してると、拓人が出てくる。


「 久しぶりに会ったんだし、話すればいいんじゃない?僕も夕陽の昔話聞きたいし。君も入って」

「 じゃ、お言葉に甘えて。お邪魔します」


ひなは、夕陽のあとについて上がった。

拓人の部屋に通されると、いつものように、おにゃんこさんが、夕陽にスリスリしてきた。


「 んなな。んなな」

「にゃ〜♡おにゃんこさん♡♡ご機嫌ですか〜♡」

「んな〜」

とハイテンションで、夕陽はおにゃんこさんを撫で始める。

おにゃんこさんも、夕陽にちゃ向けてお腹を出してグルグルと喉を鳴らしてご機嫌アピールをしていた。


「 わー。おっきな猫さん。夕陽になついとるね。この子の名前は?」


と質問するが、夕陽はおにゃんこさんに夢中で返事をしない。代わりに拓人が返答する。


「 おにゃんこさんっていうんだ。君は、猫平気?」

「 平気です。瀬戸内海沿いの漁師町で育ったので、近所に猫さん沢山いましたから、慣れてます。あっ私、服部ひなです」

「 茂先生の妹さんか。僕は、林原拓人」

「 じゃ、兄の教え子の1人なんですね」


ひなの兄 茂は、学生時代をこの町で過ごしている。家庭教師のバイトをしていたと言っていたから、拓人も教え子の1人なんだろうと、ひなは思う。


「 そうなんだ。中学生の頃にね」

「 はあ、それで社会人になってからは、林原さんのお父さんの飲み仲間なんですね」

「らしいね」


拓人とひなの会話が一区切りついたところで、ひなのスマホが鳴る。


「ちょっと、すみません」


ひなは、断りを入れると、スマホを出すディスプレイには、音無仁の表示。出るまいと一瞬考えるが、また鳴っても面倒なので出た。


「 ちょっと、仁。あんた、なんしょうるん? ( 何してるの?) 早く来んさいや。えっ? はあ! おじさんにも、夕陽にも会いとうない? ふざんけんさんなや。この意気地なし!」


ひなは、そう叫ぶと仁が喋ってる途中で通話を一方的に終えた。


「 すみません。」

「 ごめん。 今、仁って言ってたけど、音無仁の事?」

「 そうです。知り合いですか?」

「 まあね。中学生時代の後輩」


拓人は、それだけ言うと仁に関する会話を打ち切り、おにゃんこさんと戯れている夕陽に声をかけた。


「 夕陽、昨日、話していた幼なじみの娘ってこの娘だよな?」

「 うん。渉と話した通りだよ」


ひなは、一瞬何の事かと考える。


「 もしかして、話ししたん? 夕陽、本当のあんたの過去」

「 うん」

「 昨日、橋田くんだっけ? 夕陽の中学生の頃の友達に会って、色々話聞いてさ。 橋田くんに会う前にも、夕陽からきかされてたし」

「 へー。ほー。そんな、秘密をあっさり話せるくらい二人は、仲がいいと」


ニヤニヤといたずらっ子のような顔で、ひなは、拓人と夕陽を見た。



「 私の勘は、間違いなかった。夕陽の目は、完全に恋する乙女。ズバリ、林原さんとお付き合い中なんじゃろ?」


とひなは、指摘する。

夕陽と拓人は顔を見合わせで苦笑いした。



「 昨日も、こんなやり取りなかった?」

「 あった。あーあ。ひなの前で、拓人さんに会うの嫌だったんよ。恥ずいし、面白がるけぇ」

「 そんな事言うなら、この写真見せちゃおかな?林原さんに。」


ひなは、写真を取り出して見せる。


「 何、その写真?」

「 何故か残ってた写真。卒アルとかのは、消えたのに、渉くんや真央達と撮った写真や私のアルバムの写真は、何枚か残ってたんよね。ふっふ。これは、小さい時、女装させれた夕陽が可愛く写ってる物です」

「 ぎゃわーそんな物見せんな。拓人さんも見たらいけんよ」

「 はいはい。わかったよ」



そんなやり取りのあと、しばらく夕陽の昔話で盛り上がった。


「 夕陽なんだけど、なんか違う人間みたいだな」


騒いで疲れたのか、いつの間にか寝てしまった夕陽を見ながら、ひなはそう言う。


「 昨日、橋田くんも同じ事言ってたよ。やっぱり違う人間に見える?」

「 ええ。私の場合、夕陽の双子の姉の事知ってるから、あの娘と比べて女の子らしいって思っちゃうせいもありますかね。多分」


ひなは、律の暴れん坊ぶりを拓人に説明した。


「 ガキ大将を泣かせた。律って娘すごいね」

「 だからね。夕陽が可愛い分余計に思うんですよ」


ひなは、そう言って先ほどの写真の束から一枚出して渡す。


「 雫が撮った写真です。唯一、写真嫌いの夕陽が大人しく写真撮らせてくれる人物なんで、もしあなたに会えたら渡してくれって」

「 最初から、僕と夕陽が付き合ってるの知ってたの?」

「 いいえ。 ここに来る時、一言渡してって駅で預けられたんです」


拓人は、ひなから写真を受けとり見てみる。

満面の笑顔で写る夕陽の姿があった。


いつか、見せてもらった写真は、ブスくれた顔で写っていた。


「 女の子みたいってからかわれたせいですかね。それから、写真嫌いになったんですよね。だから貴重ですよ。その一枚」


ひなにそう言われて拓人は、写真を大事にした。



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