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異世界から戻ったおれが、双子の姉の姿になっていた件。  作者: ねこた まこと
一章 異世界から戻ったおれの新しい日常☆
2/35

夕陽、自分の居場所を確保する。


6月の末。約三週間の入院生活を終え、明日から自宅となるマンションへ夕陽は、帰宅する事になっているのだが、その事で今、母瞳子(とうこ)から説明されてる最中だ。



「ごめんなさいね。夕陽。アキと一緒の部屋なんて。雫を説得したのだけど

結局首を縦に振ってくれなかったの」

「まぁ仕方ないよ。元男ってのがあるんじゃし、それに今のおれの姿を受け入れられんのじゃない。一緒の部屋に抵抗あると思うよ」


 苦笑いしつつ答える夕陽も、正直あまり自分の今の性別を受入れてない。

微かにふくらんだ胸や男だった時とは違いちょっとした事で、傷つきやすい肌。その他諸々の事が、夕陽を戸惑わせてるのは、両親に秘密にしてる。


「……そうね。アキの事があるから大丈夫だと思ってたけど、ごめんなさい」

「そんなに謝らんといてや。おれなりに対策は考えてあるけぇ、大丈夫」

「大丈夫って。突飛な事じゃないわよね?」

「えへへ。多分」


 笑ってごまかす夕陽をジト目で、瞳子は見ていたが、呆れて病室から出ていった。



ーーーー

 

翌日。病院からマンションへ帰宅した。瞳子と家入る時、お邪魔しますと言いそうになるのを、ぐっと堪えた。



「 ただいま」


リビングのドアを開けたとたん、白い物体が夕陽のお腹に、飛び込んできた。


「 そら」

「 んにーんにー」


夕陽のお腹に、飛び込んできたのは、白い猫のそら。

異世界では、魔法使いだった夕陽の契約精霊だった。

 そらを抱えると、しきりに頭をこすり付ける。異世界にいた頃もよくやっていた「かまってちょうだい」のポーズだ。


「 ごめん。 そら、寂しかったよな」


夕陽は、そらに頬擦りする。久しぶりに、感じる猫の毛の感触。

真面目な雫が、ブッラシングを丁寧にしてくれたのだろう。そらの毛並みは、滑らかで触り心地が良い。

実家の猫にも、やってた事を思わず、やりそうになるが我慢した。



「夕陽。そらとふれあいはあとにして、部屋に行くわよ」

「 はーい」


そらを床に下ろすと、リビングを出て瞳子について行く。


廊下を出て左を曲がると突き当たりに、ある部屋の瞳子は、ドアをノックする。


「 アキ? 入るわよ」

「 どうぞ」


中から、ソプラノの声が聞こえ、ドアから一人の少女が顔を覗かせる。

黒髪ボブヘアで目鼻立ちがくっきりとした美少女だ。ただ足が悪いのか、松葉杖をついて歩いてる。

彼女がアキ。

 夕陽の記憶と同じなら、アキも今の夕陽同様、脳移植を受けた元男の子である。


春に手術を受けて、今はリハビリをしながら自宅療養中だ。私立中に通う事になってたけど、9月までは休学扱いになっている。

今のとこ、夕陽が同じ学校へ行くという話には、なってないが、十中八九そうなるだろう。




「 夕陽。 アキと同じ部屋よ。アキ、夕陽と仲良くね」

「 ……分かっとる」



アキは、ムスっとした顔で返事した。

瞳子は、何か言おうと口を開きかけたが、夕陽が視線で制した為、無言で瞳子は部屋から出ていった。


「 えーと、よろしく」



夕陽は、握手するつもりで手を差し出すが、アキは手を握ろうとしない。

アキはプイッとそっぽ向くと、ぶっきらぼうな口調で、部屋の中の説明を始めた。


「 あっちが、夕陽の机。そっちが、ウチの机。 クローゼット半分開いとるけん。適当に使って。ベッドは、二段ベッドの上が夕陽の」

「 ありがと。ねぇ、アキ」

「 何?」

「 おれから一つの提案があるんじゃけど。アキが、部屋におるときだけ 二段ベッドの上だけで過ごす。二段ベッドの周りを段ボールで囲えば、おれの顔見んで済むじゃろ? 」

「 はあ? いきなり何を言うんよ」


アキは、夕陽の提案に呆れてるようだ。


「 だって、アキは、おれの事嫌いじゃろ? だったら、お互い気持ち良く過ごしたいじゃん。 じゃけ、その為のルール」


夕陽の提案を聞いたアキの顔は明るくなる。四六時中嫌いな相手の顔を見なくて済むからだろうなと、夕陽は思う。


「 本当に、ウチがおる時顔見せん?」

「 全部が全部は無理よね。トイレに行く時は出てくるし」

「 勉強は?どうするん」

「 ベッドでするか、リビングでやる。それに、雫ちゃんの所行くし」

「 姉ちゃんの部屋? 」

「 うん。 もう許可とってあるもん」


一緒の部屋になるのを拒否した雫だが、アキと夕陽が仲が悪い事は分かってる為、短時間なら一緒にいても良いと言ってくれてるのだ。


ーーあの部屋ならそらをモフモフしたい放題出来るし


夕陽は誰にも邪魔されずに、猫をモフモフしたいという野望の為だけに、雫の部屋の使用許可を得たのだ。

もちろん、勉強もするが。


「 じゃあ、決まり。よろしく。夕陽」

「 よろしく。アキ」


改めて握手すると、夕陽は部屋の隅に置かれていた自分の荷物を段ボールから出して、クローゼットにしまうと、二段ベッドの上段のベッドの柵に沿って段ボールで囲い、段ボールハウスを作った。


「 用事がある時だけ、ここから、出てくるけん」


夕陽は宣言して、自分の城に引っ込んだ。

着替えの時も、夕陽が作った衝立を利用する事で解決した。



後々、ある事をきっかけに、二人のスペースを仕切る事まで、夕陽の段ボールハウス生活は、暫く続いたのは、別の話である。








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