夕陽の事情を知ってる者達
次の章に関係するお話です。
物語の時間軸は少し前に戻る。
8月の中旬。桃宮市から電車で約1時間半の所にある町 中島市中島地区の駅に、大荷物を抱えた少年が降り立った。
年の頃は、15か16歳くらい。短めの黒髪で眼鏡をかけた少年だ。
「 疲れた。 ここから歩いて十分。やっぱり、迎え断らにゃえかったかも」
少年は、迎えに行っちゃろか?という叔父の好意を無駄にしたことを後悔するが、今さら迎えに来てくださいとも言えないので歩きはじめた。
8月の中旬でまだまだ暑い。今日も最高気温33度。少し歩くだけで汗が吹き出る。
立ち止まって、眼鏡を外して汗を拭く。
眼鏡をかけ直そうと顔を上げると、視線の先に見覚えのある少女がいた。
会ったのは、1ヶ月くらい前だが、少し大人びた雰囲気になった気がするが、
猫のようにつり上がった目と髪型だけは変わってない。
学校帰りなのか、赤いリボンタイのセーラー服姿で友人と喋りながら歩いている。
少女も少年に気づいたようで、立ち止まって少年の名前を呼んだ。
「 あっ 音無仁」
「 うん。フルネームでありがとう。ひな、久しぶり。元気じゃった?」
「 久しぶりって、1ヶ月くらい前に会ったじゃん!」
―――ツッコミが入れられるんなら、大丈夫。いつものひなだ。
「 うん。そうなんじゃけど。俺が、こんなに大荷物さげとるのに何にも言わんの?」
「 言おう思うっとったよ。まるで、家出するみたいじゃね」
ひなは、仁が持つスポーツバッグやリュックを見ながら感想を述べた。
「 いや、そのまさしく、家出なんじゃけど」
「「 えー?!」」
仁の一言に、ひなとひなの友人まで、大声を出した。
「 真央まで、そんな声出さんでも」
ひなは、側にいたツインテールの少女に、ツッコミを入れる。
「 ごめん。 でも、二人共、私の存在忘れて、いい感じで話しているからついね」
ツインテールの少女 真央は口をとがらせながら、文句を言う。
「 そりゃ、すみませんね。 仁。あんね、よかったら、家出の理由教えてくれん?」
「 別にいいけど。長くなるで。 俺は、向こうに着く時間伝えとらんけぇ、何時になってもええけど」
「 長くなってもええよ。 うちらも、仁にちょっと訊きたい事あるんよ。夕陽の事でね」
ひなは、真央のほうを見てそう言う。
ひなからの視線を受けて、真央は、捕捉説明する。
「 えーと、音無くんだっけ? あなたと会う前に、ひなと話ししてたんだ。夕陽の事をね。私達以外で、同じ疑問を持つ人間は、いないのかってね。 で、ひなは、あなたの名前を出して訊いてみよっかって話してたの」
「 要するに、君やひなの疑問ってのは、夕陽は事故で死んだはずなのに、実際は生きている。しかも、中学生としてね。俺らの知ってる夕陽は、高校生で男だった。なのに今の夕陽は、同じように死んだはずの双子の姉の体に、脳を移植して生きている」
「 うん。そだね」
自分たちの疑問に感じてる事全てを話した仁に真央は、苦笑しながら首肯した。
「なんだ。俺や雫がおかしくなった訳じゃないんじゃ」
「 仁がそう思うんは、仕方ない。だって、あんたの家の養子になりますって言われりゃ、益々、おかしくなったんかって思うわね。」
「 ねぇ、詳しく話すんなら、あそこに喫茶店あるから、そこで話そ。この辺、田舎だからファミレスとかないんだなよね」
真央は、そう言いながら昔ながらの喫茶店を示す。
「 そうじゃね。暑いし移動しよっか」
「 そうしょっか」
三人は喫茶店へ移動したのだった。




